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副社長
しおりを挟む「この商品は、少子化対策として国から補助金が出てるんだよ。彼氏や夫がいるいわゆるリア充にモニターを頼むわけにいかないから、お前なの。社内で男がいなくて恋愛も結婚も一番出来なさそうな奴って言ったらお前じゃん?
そういう女性がA Iとの生活で男に慣れて、生身の男と結婚したいと思ってもらうための商品な訳。」
ひどい言われようだが、言い返せない自分が悔しい。
幼馴染の蒼は、遠慮のかけらもなく畳み掛ける。
「俺が作ったAIだから、機能は完璧。セックスももちろん出来るから、期待してろよ。」
「ブハッ・・・せ、セックス・・・?!」
珍しく蒼が淹れてくれたコーヒーを、盛大に吹き出す。
「こうでもしないとお前一生処女だろ。別に良いよな?減るもんでもないし。」
「いや、そうだけど・・・」
蒼の口車に簡単に乗せられ、確かにそうかなぁと思えてくる。
この歳になるともういい加減、処女の捨て所がわからなくてカオスだ。
「モニターの件は順調?二人とも、お疲れ様。」
「げ、翠さん・・・お疲れ様です。」
副社長が突然現れて驚いて固まってしまった私は、蒼が自分以上に驚いているのを見て我に返った。
副社長は、蒼の高校時代の先輩で、彼らは昔からとても仲が良い。
「蒼、俺がここに来ちゃマズイことでもあった?」
不適な笑みを浮かべる副社長に、蒼は滅相もございません、と呟く。
女子社員向けの嘘くさい王子スマイルでも、私に見せる極悪顔でもない蒼の表情が新鮮で、つい見入ってしまった。
「ふ、副社長・・!お疲れ様です。」
憧れの副社長が目の前に・・・・信じられない気持ちで大袈裟に頭を下げる。
「お疲れ様。泉野さん、君がモニターをやってくれるんだってね。」
「え・・え~っと・・・」
「そうなんですよ。こいつ、喜んで引き受けてくれるって、今ちょうど話していたところです。」
蒼の強引さは、子供の頃から何も変わっていない。
「俺が好みのタイプって、本当?」
「えぇ!?!」
爽やかすぎる副社長の笑顔に、全身フリーズする。
見惚れてる場合じゃなかった、と蒼を睨みつけた。
(蒼の奴、そんなことまで副社長に話したの?!こんな干物女が副社長のようなイケメンが好みのタイプなんて、あまりに烏滸がましいでしょうが・・っ)
自虐もとうとうここまで来たか・・・と、自分が少し可哀想になる。
「こいつは高校時代からずっと先輩一筋なんで・・・」
「ちょっと蒼!!!」
これ以上余計なことを言われては困ると、私は彼の言葉を遮り副社長の前に身を乗り出した。
「モニター真剣にやらせていただきます・・・・!!」
「ありがとう。期待してるよ。」
この笑顔を、今夜から私は独り占めできるのだ。
そう思うと、胸が高鳴るのを抑えられなかった。
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