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ミステリアスな男
しおりを挟む御影は昔から、つかみどころのないミステリアスな男だった。
彼には重大な秘密があって、実は謎の組織の諜報員なんじゃないかなんて、何度か本気で考えたことがある。
「真美、取引先の人から美味しいコーヒーをお土産にもらったんだけど、飲む?」
彼はコーヒーが好きだ。
豆を挽いてコーヒーを抽出する作業は、とても心が落ち着くらしい。
「御影、今何時だと思ってるの?」
「23時20分?」
コーヒー好きの彼は、真夜中にカフェインを摂取しても平気らしい。
「私、眠れなくなるんだよねぇ。」
御影に淹れてもらったコーヒーを飲みながら、呟く。
確かに香りが良くて、美味しいコーヒーだ。
ほとんど物が無い私の部屋で、彼と二人、深夜のコーヒータイム。
ベッドの他に、ローテーブルがあるだけの、殺風景な私の部屋。
「眠れなかったら、俺が夜通し相手してやるよ。」
「すぐそういうこと言う。私じゃない女なら、絶対勘違いするよ。」
「お前にしか言わないから平気。」
小さな頃から一緒にいる私じゃなかったら、秒で勘違いしてしまうと思う。
彼は自分がイケメンだという自覚がないのだろうか。
(いや、わかっていて楽しんでやってるな、この男・・・)
彼は、人を揶揄うのが好きなのだ。
私はいつも彼の恰好の対象だった。この笑顔に何度ときめかされてきたことか。
知的で理性的な印象の御影が、「お前」と私を呼ぶのを聞くたびに、ギャップ萌えするこっちの身にもなって欲しい。
彼は紳士的だけれど、ふと男らしい荒々しさを言葉の端々に感じさせる。
女はいくつになっても、ギャップに弱い。
「浅葱も寝たし、ここからは大人の時間を過ごそうか?」
手にしていたマグカップを、コトンとテーブルの上に置いて、彼が言った。
私を見つめる目は、真剣そのものだ。
彼の声は、エロイ。
話し方も、声音も、彼の言葉はいつだって意味深なトーンで、耳に届く。
「はいはい、そうやってすぐ揶揄う、・・・ん・・・ッ・・・・」
(え・・・・キ、キス・・・・!?)
御影が私の後頭部を引き寄せて、唇を重ねた。
彼の香り。体温。唇の、感触。
驚いてフリーズした私の顔を見て、彼はいつも通りの意味深な笑顔を浮かべる。
「今夜は一緒に、夜更かししようか。」
彼は私の顎を指で持ち上げると、もう一度味わうように唇を重ねた。
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