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熱病
しおりを挟むメルヘンの森が、夜の深い闇に包まれていく。
「どうしよう・・!レオが・・・!レオが、すごく苦しそうで・・・」
アーサーから「世界の終わり」について教わっていたところに、オコジョのテディが血相を変えて飛び込んできた。
平和そのものに見えた彼らの世界では、謎の熱病が流行り、「世界の終わり」が始まっているらしい。
熱病に罹ったものは、人格を失い、自らの能力が暴走してしまう。
今まさにそんな話を、アーサーの口から聞いたところだった。
預言の書によれば、救世主は、「暴走した力を無力化できる」というチート能力を持っているらしい。
その方法や手順は、その時がくればわかるという・・・恐ろしくざっくりとした預言内容。
慌ててレオの部屋へ行くと、彼は一目で高熱があるのだとわかる真っ赤な顔をして横たわっていた。
「レオ・・・大丈夫・・・!?しっかりして・・・・!!」
声をかけると、彼の両手が私を探すように宙を舞う。
「僕と・・・一つに・・なってください。身体が熱くて・・たまらないんです。」
(ひ・・・ひとつに・・・なる・・・?!)
突然のエロワードに、聞き間違いか勘違いだと思い、彼を二度見する。
熱に苦しんでいる彼の視線はとろりと今にも溶け出しそうに潤んでいて、焦点が定まらない。
その瞳を見た途端、私はなぜかわからないけれど一気に身体が熱くなった。
苦しんでいる彼を目の前に、不謹慎だと思いつつも、シュンとした犬耳と切ない上目遣いを見て、心底ときめいてしまったのだ。
何をすればいいのか、「本能」としか言いようのない感覚で理解する。
邪な気持ちではない、これは人助けなのだ。
何度も心の中で呪文のように呟きながら、私は決心した。
彼のため。彼の熱病を治して、この世界を救うため。
彼と熱い一夜を過ごす。
私の心に、もはや迷いはなかった。
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