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オーウェン
しおりを挟む「お前たち、何を騒いでいる。」
ああでもないこうでもないと騒いでいる私たちの元へ、これまた華やかなイケメンが舞い降りた。
オレンジ色の派手な髪色、意思が強そうな鋭い視線。
ビリビリとした緊張が、一瞬にしてその場の空気を凍り付かせる。
ラスボス感漂う彼と目が合った瞬間、足がすくんで動けなくなった。
挑発的な視線で一通り私たちを見回すと、ゆっくりと足を進めアーサーの前でぴたりと止まる。
「なんだ、お前か・・・アーサー。」
「オーウェン、久しぶりだな。」
「まだ生きていたとはな。」
バチバチと火花の散る音が、聞こえる気がする。
彼らは仲が悪いのだろう。険悪な雰囲気、睨み合う二人の色男。
「二人は、仲悪いの?」
「見ての通りっす。顔合わせるといつもああなんすよ、あの二人・・・」
小声でエイダに尋ねると、うんざりという表情で耳打ちされた。
「アダム王子の父上が早くに亡くなって、その弟の息子であるオーウェンが長らく実権を握ってて・・」
ヴィランの世界も色々と複雑らしい。
横文字に弱い私は、彼らの名前を覚えるだけでやっとだった。
一度見たら忘れられないほどのイケメン揃い。
悪役の男も悪くない。魅力的すぎて目移りしてしまう。
「そこにいる女は、何者だ。」
オーウェンが、私を指差す。
強い視線が向けられて、ドキッと身体がこわばった。
「この世界の救世主っすよ!!」
「例の預言の救世主か・・・この女が?」
「オーちゃんは口が悪いだけで、急にとって食ったりはしないから平気っすよ!」
エイダのフォローがいちいちジワジワくる。
彼は天然キャラで、当たり障りのない言葉を選ぶ能力に欠けていた。
もちろん底抜けに明るく性格が良い彼に、悪気はない。
ヴィランのトップともいえるオーウェン相手に「オーちゃん」と呼んでしまうのも、彼らしくて笑ってしまった。
「ふん、こんな小娘に何ができる?馬鹿馬鹿しい。」
まるで俳優みたいだ、と見惚れてしまう。
オーウェンの声は部屋の端までよく通り、大袈裟な物言いや立ち振る舞いはまさに映画の悪役そのものだ。
「彼女は俺の運命の相手だ。気安く近寄るな。」
アダムが私の前に立ちはだかる。
親の仇でも見るような憎しみを込めた目で睨みつける彼を、オーウェンは見ようともせずゆっくりと手をかざした。
「アダム・・!!」
事切れたようにふっと倒れ込んだアダムの身体を、アーサーが支える。
何が起きたのか一瞬わからなかった。
「心配するな、眠らせただけだ。こいつは病み上がりだろう?部屋に寝かせておけ。」
オーウェンの横暴な物言いに、場が騒然となる。
(手をかざすだけで、アダムを眠らせたの・・?!さすがヴィランのトップ・・!すごい・・・)
こちらへ近づいてくる彼を見て、アーサーが一歩前へ出た。
「穂花に近寄るのはやめてもらえないか?お前は昔から女嫌いだったよな。」
私を守ろうとする彼の態度にドキドキしながら、半歩後ろに下がる。
「女は嫌いだ。弱くてギャアギャアうるさい。」
華やかな見た目とは裏腹に、彼の心は冷酷そのものだった。
彼の目を見ると、どこまでも静かで波立たない心を感じる。
人と馴れ合わず、己の信じる道を行く。孤高の強さ。
「オーちゃん、アダム王子眠らせちゃってどうするんすかぁ?ゲート開いてもらって帰りたかったのに・・・」
「問題ない。コハクを呼べ。」
オーウェンに呼ばれて現れたのは、これまた世にも美しい色男だった。
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