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♡『手フェチの男』(SIDE 鹿糠 ノア)
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♡鹿糠 ノア(かぬか のあ)
桜浜総合病院で働く脳外科医。
ドイツと日本のハーフ。日本国籍。学生時代から日本で暮らしている。
妻は東北出身の老舗旅館の女将。死別している。
ダークブロンドの長髪。すらりと伸びた手足。長身。
♡田辺 宏人(たなべ ひろと)
桜浜総合病院院長の秘書。
目立たない地味な印象の顔。黒縁メガネ。能力もルックスも普通。
印象に残るのは190センチの長身のみ。
M気質で、手フェチ。
必要なこと以外はあまり喋らず物静か。
~~~~~~~~~~~
『手フェチの男』(SIDE 鹿糠 ノア)
僕の指を熱っぽい視線でじっと見つめる彼に、最初は驚いた。
田辺 宏人。
僕が勤めている桜浜総合病院の院長秘書だ。
彼は手フェチらしい。
「僕の手がそんなに気に入った?」
そう聞くと、彼は「すみません。」と謝った。
彼は僕の手を綺麗だと言う。
脳外科医として自分の手はもちろん大事にしているし、純粋に「綺麗」という日本語が好きだったから嫌な気持ちは全然なくて、恐縮している彼にどう気持ちを伝えたらいいのか戸惑う。
日本語はニュアンスが難しい。
学生時代から長いこと日本で暮らしているけれど、いまだに日本人の細やかな意識や気遣いには脱帽する。
田辺という男は、僕が好きなタイプの日本人だ。
地味でなんの変哲もない、と自分で思い込んでしまっている真面目なタイプ。
「地味」であることを卑屈に捉える日本人が多いことに僕は毎回驚いた。
勤勉であまり目立つことのない普通の日本人。僕の目にはとても魅力的にうつる。
学会出張の前日、現地で会う医師に渡して欲しいと院長から書類を預かることになった。
すでに帰宅していた僕が病院に戻ると告げると、田辺君が届けに来てくれることになった。
「わざわざごめんね。僕が取りに戻ればよかったのに。」
一時間ほどすると、僕が暮らしているマンションに彼はやってきた。
「とんでもないです。こちらがお願いするんですから。」
妙にソワソワして落ち着きがない彼に、僕は苦笑した。彼は可愛い。
考えていることがいつだって僕に筒抜けだった。
「よかったら上がって行かない?」
「と、と、とんでもないです!帰ります!お邪魔になりますし・・・」
こんなにわかりやすい日本人っているんだなと、僕はびっくりしていた。
彼の好意は素直に嬉しかった。
僕も彼を、いいなと思っていたから。
「たまには誰かと一緒にご飯が食べたいんだよ。もし予定があるなら、」
「ありません!是非、ご一緒させてください!」
僕らはお寿司をとって、一緒に食べることにした。
僕が食べている間も、食後のコーヒーを淹れている時も、彼はずっと熱い眼差しで僕の手を見つめていた。
「本当に僕の手が好きなんだね。」
ソファーで隣に座りながら、コーヒーを飲む。
誰かがこの部屋に来るのは初めてだった。
「はい。すみません・・・」
「僕の手で、どうして欲しいの?」
単刀直入に聞くと、彼は面白いくらいに真っ赤になった。
耳まで真っ赤だ。
「あはは、ごめんごめん。揶揄いすぎたね。」
「私は・・・!鹿糠先生の手で・・触れられたら、どんなに気持ちいいだろうって・・・いつも考えてしまいます。」
田辺君は、絶対に踏み込んでこないと思っていたのに。
「変態・・ですよね。申し訳ありません。」
彼は僕の想像を裏切って、飛び込んできた。
「触れられたら、どうなるの・・・?」
至近距離でじっと見つめると、彼はたじろぐ。
僕の目に見られるのが恥ずかしい、というように。
「試してみようか。」
「か・・・鹿糠・・先生・・・っ」
自分から飛び込んできたくせに、彼は戸惑っていた。
僕は自分が彼を見て興奮していると自覚しながら、ゆっくりと唇を重ねる。
彼はぎゅっと固く目を閉じていた。
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