4 / 8
『因縁』
しおりを挟む取調室の扉を開けると、馨君が立っていた。
「え?なんでここにいるの・・・!?」
驚く私をよそに、神矢さんは想定内と言わんばかりの余裕の態度で、彼と向き合っている。
「やぁ馨君、君か。こんなところで会うとはな。随分久しぶりじゃないか?」
「その呼び方やめてください。あなたに名前呼びされるほど、親しくないので。」
「取調室に忍び込んで俺を待っていた割には、つれない態度だな。」
「誰がお前を待ってたって?僕が待っていたのは、可愛い恋人の繭さんだけです。」
私の恋人馨君と、元カレ神矢さんは、いつもこんな調子だった。
過去に因縁があるらしい。
「葉月君、君は俺のファンか何かか?毎回俺の前に現れて困らせることばかりする上に、今度はどうして俺の女をつけ回しているんだ?」
「はぁ?俺の女って・・・誰のこと言ってるんです?まさか繭さんのことじゃないですよね?もしそうであれば、即刻殺します。」
「はは、相変わらず君は物騒な物言いをするな。」
2人揃うと、彼らは途端に饒舌になる。
本当は仲良しじゃん?と思うほど、彼らの会話はテンポよく進み、ヒートアップしていった。
お互いを「特別な存在」として意識しているようにしか見えない。
馨君は相手が神矢さんとなると、いつもの余裕の態度が崩れ感情がむき出しになる。
彼に対してだけはひどく攻撃的だし、普段は見せないイラついた態度や怒りの表情を露わにするのだった。
神矢さんも馨君が相手だと、妙に意地悪な言い回しをしたり、彼の感情を煽ろうとする節がある。
「実は今回、俺から君たちへ提案があるんだ。」
「図々しい。無能な警察の提案を、素直に聞くと思うのか?」
「これは繭の安全のためでもあるから、聞いてほしい。」
「僕の恋人を勝手に呼び捨てにするのはやめろ。本気で虫唾が走る。」
言うと同時に飛び出た馨君のパンチを、神矢さんは涼しい顔で受け止めた。
「3人で、一緒に暮らさないか?」
「「・・・はぁ?」」
馨君と私の声が、ピッタリ重なる。
硬派で真面目な元カレの提案は、想定外の内容だった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに
家紋武範
恋愛
となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。
ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。
小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!
竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」
俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。
彼女の名前は下野ルカ。
幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。
俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。
だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている!
堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる