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異空間デート
しおりを挟む私はこの総モテ状態をゆっくりと楽しみたいと思っていた。
いつ元の世界に戻れるのかわからないけれど、彼らとの恋をゆっくり楽しみたかった。
浜名 悠人は子どものような無邪気な笑顔を浮かべて、レトロな街並みをぐんぐん進んでゆく。
私たち組織の面々は、建物の周りの捜索を大規模に開始していた。
何もない空間に飛ばされたとばかり思っていたけれど周辺の探索を進めていくと、「異空間」へと繋がっているトンネルが発見される。
砂漠のような砂地に突如現れたトンネル群は、それぞれが別の異空間へと繋がっているようだった。
食糧の調達や、この空間から元の世界へ戻るための方法を探るべく、組織の人間たちは手分けして捜索を開始。
今日の私は「浜名班」に同行してトンネルに入り、中世ヨーロッパのようなレトロな風景が広がる石畳の街を歩いていた。まるでテーマパークにいるみたいだ。
「悠人、この道であってるの?」
「綺麗な街だな~!」なんて感動しながら、無鉄砲にぐんぐん進んでいく浜名に声をかける。
彼は直感で動き、何事も深く考えないタイプだ。
よくこの組織で生き残ってきたなぁと思うが、彼は友人が多く毎回必ずサポート役を買って出る人間がいる。組織の中でも人気のある人物で、学生時代によくいたクラスの中心的存在。
「ちょっと待って、向こう側に商店街がある。まずは食料を調達して一度戻ろうか。」
彼の親友、仲が早速「手堅い道」を提案した。
「なぁなぁ、この先に綺麗な丘みたいなとこがあるから、なんか買ってきてそこでランチしねぇ?」
この状況下でもランチを楽しもうという浜名の図太さは、もはや才能だった。
「悠人、いい加減にしろよ。いつ帰り道がなくなるかもわかんねぇのに。」
浜名班のもう一人、梶原 榛名が、咎めるように言う。
彼はここへ来てからずっとイライラしている。
気難しく神経質な根暗男として組織の中では浮いた存在だが、爆弾や薬物など危険物専門でその分野では右に出るものがいない優秀なエージェント。浜名とは幼馴染で、正反対の性格ながら仲が良いらしい。肩まで伸びた黒髪、前髪が重く目にかかっており、いかにも神経質という印象だ。
「榛名は心配しすぎなんだよ。ランチくらい楽しんでもバチは当たんないんじゃね?天気もいいし。」
浜名は快晴の空を仰ぎ見て、気持ちよさそうに伸びをした。
「じゃあまずランチを買いに行かなきゃね。あの商店街で食料買い出ししてランチも買ってここで食べる。それでどう?」
仲が提案し、浜名と梶原は顔を見合わせて「詠司がそう言うなら」と納得する。私も彼に目配せして意思を伝えた。
「なぁなぁ、あの店に売ってるやつ美味そうじゃね?」
「ちょっと待って、悠人。」
なんだかんだ言ってさすが幼馴染。二人は仲が良いらしい。
「ごめんね。あの二人、いつもこんな感じなんだ。」
仲は二人のお守り役という印象だった。
二人が商店街の脇にある店に入り、私と詠司は二人きり。
店を探索しながら歩いていると、ふと彼が手を握ってきた。
そういうことをするタイプに見えないので、驚く。
「久々だね、外の世界に出るのって。」
「う・・うん・・・・。」
いつもクールな彼が見せる微笑みに私は赤面した。
普段人を寄せ付けない彼がこっそりとテリトリーに入るのを許してくれている。
私は急にドキドキして顔が熱くなってきた。
がっしりと掴む訳ではなく、そっと触れるような握り方。
二人に見られないように、隠れて触れ合うハラハラした気持ち。
彼らが戻ってくるとそっと彼の手は離され、また彼らに見えないところでそっと繋がる。
同じ店にいる彼らに気づかれないように接触してくる彼のやり方に、私はすぐに落とされてしまいそうだった。
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