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獲物を見る目
しおりを挟む「ちょっと大我君、どうして勝手に俺の獲物を解放しちゃってるのかな?」
「獲物って、宗さん・・・これは俺らの山じゃないっすよ。」
私の手足を勝手に解放した大我に、宗がニコニコしながら文句を言っている。
二人はパートナーらしい。
宗は終始穏やかな笑みを浮かべているが、怒るとさらにニコニコする体質のようだ。
相手に問いかける時、首を傾げる癖があるらしい。サラリと黒髪が綺麗に揺れ動いて、私はその度に心を奪われそうになる。
彼が私を見つめる目は、確かに「獲物を見る目」だった。
恐怖心もあるけれど、イケメンに見つめられるのは全然悪い気がしない。
「俺らが親秋の兄貴に申し立てして、なんとかするんで。本当すんません。」
完爾が宗に、深々と頭を下げた。
彼は強面だけれど、筋が通った男。そんな印象を受ける。
親秋という名はヒーローたちの間でもよく知られていた。
この組織のまとめ役であり、親玉的存在。
(それにしてもほんとイケメンばっかり・・・すぐに全員の名前を覚えられそう・・・)
イケメンアイドルグループを見るような感覚で、彼らを見てしまう。
「大丈夫だよ、完爾君。誰にでも失敗はあるんだし。うちの大我君だって俺の獲物の結束バンド勝手に取っちゃったりするんだから。」
「宗さん、ごめんって。アンタほんと根にもつよなぁ。」
悪の組織はパートナー制で、いつも二人一組で悪事を働く。
悪者の情報をパソコンへデータ入力していた私は、ぼんやりと彼らの組織の全容を把握していた。
「ねぇ、ヒーローじゃないにしても、君は色々情報を持ってるんでしょ?」
宗がソファの前にしゃがみ込んで、私の顎を指で持ち上げる。
(大我君といい、このサラサラヘアのイケメンといい・・・なんでこんな至近距離に迫るの・・・・!?心臓がもたない・・・・!!)
「いえ・・・残念ながら私が持っているのは・・・悪者の情報の方で・・・」
「え!マジで?!ユミちゃん、俺の情報とか持ってんの?」
大我が私の頭をぽんぽんと撫でながら、嬉しそうな顔をした。
(ユミちゃん・・・!?大我君の、ちゃん付け呼びヤバイ・・・しかも顔近いってば・・・!!)
「ちょっと大我君、ユミちゃんって・・・そんな呼び方したら愛着湧いちゃうから辞めなさい。」
(うちでは犬飼えないのよ、の言い方で言うの辞めて・・・)
「親秋さん帰ってきたみたいだよ。」
彼らの視線が一斉に部屋の扉に集まる。
死刑宣告を待つ私は、ハラハラしながら悪の親玉の登場を待った。
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