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師弟関係
しおりを挟む「なぁなぁ!なんかこういうのって、お泊まり会みたいで楽しくねぇ?」
満面の笑みで可愛く同意を求めてきたのは、私をこのとんでもないパラダイスに引き込んだ張本人。
楓馬は、人懐っこくて、いつでも元気いっぱいのムードメーカー的存在だ。
今夜の私の見張りは、彼。
表情が面白いくらいにコロコロ変わる。
嬉しさも悲しさも力一杯表現するエネルギッシュな少年なので、一緒にいて楽しい。
「手ぇ繋いで寝ない・・?」
「怖いの?」
さっきまで部屋にあるスクリーンで「実録、世界の怖い話100選」という番組を見ていた。
テレビくらい無いと退屈だろうと、映画も見れる巨大スクリーンを大我君が部屋に設置してくれたのだ。
(私って本当に監禁されてるんだよね・・・・?)
その他にも伊吹が持ち込んだプラネタリウム投影機や、千畝が持ち込んだベッドサイドテーブルなど、どんどん豪華になっていく部屋に疑問を覚える。
「あんな大画面で、怖い話見るからだよ~」
「だって~、面白いじゃん!ああいう番組って!」
弟キャラ的存在の楓馬はオーバーリアクションだから、とても揶揄い甲斐があって楽しい。
部屋を暗くしてベッドに潜ると、彼がぎゅっと手を繋いできた。
(可愛い・・・♡癒されるなぁ・・・楓馬君♡)
♢♢♢
ガタン、ガタガタ・・・!!!
ウトウトし始めたところで、突然物音が響いた。
「え?!な、何・・・・!?何の音・・・・!?」
驚いた楓馬が、飛び起きる。
「え・・・?何・・・・?」
リビングから現れた、黒い影。
「う、うわ~~~~~!!!ドロボー!!!」
楓馬の悲鳴が、大きく響きわたる。
「いや、ドロボーじゃなくて、そこは幽霊!!でしょ・・・?!」
呆れて思わずツッコミを入れてしまったけれど、冷静さを取り戻し部屋の明かりをつける。
「か・・・完爾さん・・・・!?」
「おい、楓馬・・・お前なんつー声出すんだよ。」
「だ、だって・・・なんでここに完爾さんが?!」
「お前が見張り当番だって聞いたから、心配で見に来たんだよ。」
「え・・・優しい・・・・」
この二人はとても仲が良く、師弟関係らしい。
完爾は、見た目はいかにも悪の組織に居そうな強面の男性だけれど、中身は誠実ささえ感じる筋の通った男だ。
お互いを大切に思い合い尊重し合っているのが、言葉の端々や雰囲気から伝わってくる。
「ユミ、悪いな。こいつ騒いで迷惑かけなかったか?」
(いや、私囚われの身なんですけど・・・そんな丁寧な・・・)
「いえ、大丈夫です・・・。楓馬君がいると、気分も明るくなるっていうか。」
「そうなんだ。そこがこいつの良いところなんだよな。」
「完爾さん・・・そんな・・・俺、嬉しい!!!」
「楓馬、お前のそういう素直なところ、俺は好きだぜ。」
「俺も完爾さんの優しいところ、大好き・・・!!!」
(え・・・何・・・この時間・・・・?)
結局、完爾もこの部屋で一緒に眠ることになった。
イケメン二人の間で眠れる幸福は素晴らしいけれど、二人は私を挟んでお互いの良いところを、延々と言い合っている。
(仲良しすぎない・・・?この二人・・・本当に悪の組織の人間・・・・?!)
私は一晩中、そんな話を聞きながら一睡もできないまま朝を迎えるハメになった。
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