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夏休み ③※R-18 完
しおりを挟む蒼甫がどうして俺を求めたのかわからない。
3年前に振られた俺は、彼への想いを断ち切るためにここに来たのに、気持ちが宙に浮いたままだった。
彼の仕事を眺めていると、夏の暑さとこの世界の激しい色彩が脳に強く焼き付いて、目がチカチカする。
目を閉じても瞼の裏に、いつまでも残像のように彼が浮かんでいた。
俺にとって、夏は蒼甫だった。
春も、秋も、冬も、俺の過ごしてきた季節全てが、蒼甫なんだ。
そう思った。
離れて暮らすようになってからますます季節への渇望は強くなり、俺は喉が渇ききっていることを見て見ぬふりして過ごしてきた。
「蒼甫・・・ッ、蒼甫・・・ッ、く・・・っうぅ!!」
彼の中で果てる瞬間、もう蒼甫なしでは生きていけないという絶望に近い感情が俺を襲う。
彼が妊娠すればいいのに、なんてあり得もしないことを懇願する自分が悲しかった。
暑くてベトベトになりながら、俺と蒼甫は何度も何度もお互いの身体を求める。
風呂でも、寝室でも、外でも、俺たちはなりふり構わず求めあった。
「蒼甫が好きだ。一緒に暮らしたい。」
「・・・ありがとう。」
3年前と違うのは、その後に「ごめん」という言葉が続かないことだった。
「蒼甫・・・ッ気持ちイイ・・・出る・・・出るから・・・っ離せ・・」
彼の口の中に精液を放つ快感。
腰が砕けてしまったみたいに力が抜ける。気だるさが体を包む。
彼の身体と繋がる。深く彼の中に入り込んで、腰を振る。
彼が俺を欲しているという安心感に満たされて、涙が出そうになった。
「裕翔・・・ッ・・・好き・・・・中に出して・・くれ・・・っ」
「あ・・・ぁあ・・ッ・・好きだよ・・・蒼甫・・・ああぁッ!!!」
彼の奥深くに快感を放って、俺のお腹の上に彼の快感が熱く解き放たれた。
♢♢♢
「行ってきます。」
「おう。」
俺たちは3年間だけ離れて、また同じ時を一緒に歩み始めた。
「裕翔、」
「ん?」
「ありがとう。行ってらっしゃい。」
蒼甫の笑顔を瞼に焼き付けて、俺は今日も家を出る。
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