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働かされる。
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「ど、どうしたんですか? お腹痛いんですか?」
「……痛くない。なににしようか悩んでるだけだ」
甘路の言葉に、くるみは少し拍子抜けする。「ヘイ、マスター、いつもの」とまでは行かなくても、さらっとスマートに注文しそうなものだが。
「佐藤さんはお店も近いし、よくこちらに来られているのでは」
「いや、滅多に昼飯を摂らないからな」
「ああ、そういう――えぇ!?」
くるみは、先ほど甘路に手を引かれて、厨房を通りすぎた一幕を思い出した。今日は休憩取るんですねとか、ランチに行くなんて珍しいとか、誰かが言っていた。
そもそも食べないなら、店に行くこともないので、慣れていないのも当然だ。こんなすごい人に、意見できる立場じゃないと思いながらも、口をもごもごさせるくるみ。
「あ、あの、きゅ、きゅ」
「くるみはどれにするんだ?」
休憩はちゃんと取った方がいいのでは、と言いたいくるみに台詞を被せる甘路。
困ったら甘路のオススメメニューでも頼もうと考えていたくるみは、まさかのフリにギャーと叫んだ。もちろん心の中で。
「ええとですね、ワタクシ、こんなオシャレなお店初めてでして」
「しゃべり方がおかしいぞ」
そりゃおかしくもなると思いながら、数枚あるメニュー表に目を通す。ツルツルした素材でできたそれには、英語やカタカナが並び、料理の写真も載っている。
――なになに、明太子とエビのカッペリーニ……カッペリーニってなんだろ。薬膳ベジカレーに、揚げなすとキノコのみぞれ丼、秋野菜の漬け込みチキン南蛮……。
とりあえず目に入ったメニューを頭の中で読み上げていたくるみは、料理の横についた数字に気づき動きを止めた。
――たっっっか!
焦って一番安いものを探すくるみだが、どれも二千円を超えている。くるみのいつもの昼食は、弁当屋の賄いか前日の残りで、無料か数百円だ。
――こんなの、財布の中身ほとんどなくなっちゃうよ~……!
とはいえ、入ったからには食べずに出るわけにはいかない。水だけで済ませたりしたら、一緒に来た甘路が恥ずかしい思いをするかもしれないし。そう考えたくるみは、泣きそうになりながら腹を括った。
「じ、じゃあ、この、よくわからないやつにします……」
くるみがそっと指差したのは、ベーコンとアスパラのアマトリチャーナだった。
価格は二千円ちょうどなので、他のものに比べればまだマシ。その上でせっかく食べるのなら、普段口にできないようなやつにしようと思ったのだ。
「よくわからないのでいいのか?」
「はい、ちょっとヤケで……あ、いえ、トマト系好きですし、名前も気になったので」
「アマトリチャーナってなんだ?」
真剣な顔でくるみと同じ疑問を持つ甘路は、やっぱり少し拍子抜けする。この様子だと、カッペリーニも知らないと見られる。
「……痛くない。なににしようか悩んでるだけだ」
甘路の言葉に、くるみは少し拍子抜けする。「ヘイ、マスター、いつもの」とまでは行かなくても、さらっとスマートに注文しそうなものだが。
「佐藤さんはお店も近いし、よくこちらに来られているのでは」
「いや、滅多に昼飯を摂らないからな」
「ああ、そういう――えぇ!?」
くるみは、先ほど甘路に手を引かれて、厨房を通りすぎた一幕を思い出した。今日は休憩取るんですねとか、ランチに行くなんて珍しいとか、誰かが言っていた。
そもそも食べないなら、店に行くこともないので、慣れていないのも当然だ。こんなすごい人に、意見できる立場じゃないと思いながらも、口をもごもごさせるくるみ。
「あ、あの、きゅ、きゅ」
「くるみはどれにするんだ?」
休憩はちゃんと取った方がいいのでは、と言いたいくるみに台詞を被せる甘路。
困ったら甘路のオススメメニューでも頼もうと考えていたくるみは、まさかのフリにギャーと叫んだ。もちろん心の中で。
「ええとですね、ワタクシ、こんなオシャレなお店初めてでして」
「しゃべり方がおかしいぞ」
そりゃおかしくもなると思いながら、数枚あるメニュー表に目を通す。ツルツルした素材でできたそれには、英語やカタカナが並び、料理の写真も載っている。
――なになに、明太子とエビのカッペリーニ……カッペリーニってなんだろ。薬膳ベジカレーに、揚げなすとキノコのみぞれ丼、秋野菜の漬け込みチキン南蛮……。
とりあえず目に入ったメニューを頭の中で読み上げていたくるみは、料理の横についた数字に気づき動きを止めた。
――たっっっか!
焦って一番安いものを探すくるみだが、どれも二千円を超えている。くるみのいつもの昼食は、弁当屋の賄いか前日の残りで、無料か数百円だ。
――こんなの、財布の中身ほとんどなくなっちゃうよ~……!
とはいえ、入ったからには食べずに出るわけにはいかない。水だけで済ませたりしたら、一緒に来た甘路が恥ずかしい思いをするかもしれないし。そう考えたくるみは、泣きそうになりながら腹を括った。
「じ、じゃあ、この、よくわからないやつにします……」
くるみがそっと指差したのは、ベーコンとアスパラのアマトリチャーナだった。
価格は二千円ちょうどなので、他のものに比べればまだマシ。その上でせっかく食べるのなら、普段口にできないようなやつにしようと思ったのだ。
「よくわからないのでいいのか?」
「はい、ちょっとヤケで……あ、いえ、トマト系好きですし、名前も気になったので」
「アマトリチャーナってなんだ?」
真剣な顔でくるみと同じ疑問を持つ甘路は、やっぱり少し拍子抜けする。この様子だと、カッペリーニも知らないと見られる。
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