蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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蛇珀といろり

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「ごめんなさい、蛇珀様。私が……おかしな態度を取ったから、怒らせてしまったんですよね。申し訳ありませんでした」

 蛇珀が怒ったのは自身のせいだと思い込み、涙ぐむいろり。
 それを見た蛇珀は焦り否定する。

「違う! お前のせいじゃ……いや、お前が原因ではあるが、お前が悪いんじゃねえ!!」

 混乱する蛇珀に、いろりは目を丸くして首を傾げた。
 蛇珀は何から話せばよいのか、気持ちを整理し、いろりに向き直った。

「……俺が怒ったのは、いろりにじゃねえ、いろりに勝手に触りやがった男に対してだ。どうも苛立って仕方がねえ。なんなんだ、これは……」

 いろりはしばらく呆けた後、ようやく蛇珀の言葉の意味を理解した。

「……ヤキモチ……ですか?」
「……なんだ、それは?」
「え、ええと、好きな相手が自分以外の誰かと仲良くしていたり、取られそうになったら、苛立ったり嫌な気持ちになること……かと思います」
「それだ」

 いろりの説明は、まさに蛇珀の感情にぴたりと当てはまっていた。
 まさか人間と同じ欲を、自身が味わう日が来ようとは夢にも思わなかった。
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