蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「いろり、大丈夫か……?」

 心配気な問いかけに、いろりはハッとすると俯くのをやめた。

「……蛇珀様、私の記憶は、消さないでくださいね……?」

 今にも泣き出しそうな顔に、蛇珀は目を見張った。
 蛇珀はこの顔に弱い。自分の意思をしかと持ち、芯が強いはずのいろりの縋るようなか弱い表情を見ると、なんでもしてやりたくなってしまうのである。

「……消すわけねえだろ」

 蛇珀は少し屈み、いろりの顔を覗き込んだ。

「写真には写ってやれねえけど、他のことならなんでも叶えてやるぜ。遠慮なく言え」

 蛇珀の気遣いにいろりは安堵の表情を漏らした。
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