蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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 蛇珀が願い聞きをやめたのは、いろりに出逢ったからである。
 
 大の人間嫌いであった蛇珀は、いろりの純粋さに触れ、今まで必要以上に寿命を取り立てていたことを悔いていた。
 多少度は越していたとはいえ、それは神の責務の一環であるため本来蛇珀が自責の念に囚われる必要などない。しかし、いろりを見ているともっと優しく、寛容な心を持つべきであったと改めたのだ。

 いろりはてっきり、自身が学校に行っているうちに蛇珀が願い聞きをしていると思っていた。
 だがそれは違った。
 蛇珀がいろりを待ちながらしていたのは、まるで今までの罪滅ぼしのように人に優しくすることであった。

 いろりに出逢ったことで、蛇珀のすべては変わり始めていた。

 しかし蛇珀はいろりに出逢ったことを後悔などしていない。
 むしろただただ続いていくだけの無色な日々に、彩を授けてくれたいろりに感謝しかなかった。色を知ったのは、いろりだけではなく、蛇珀も同じであった。

 そんないろりと命を共にしたいと願ってしまった蛇珀は、人を労り、人に近い寿命を求めることで、自身もいつか人間になれないかと考えていたのだ。
 
 ――しかし、その子供じみた希望は、他の神たちの忠告により完膚なきまで撃ち砕かれた。
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