蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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 狐雲と鷹海が見えない場所まで来ると、蛇珀は足を止めた。

 そこには平地に密やかに佇む円形の泉があった。
 深緑の苔地に、蒼く輝く泉はやや立体的に浮かび上がるように見えるほど澄み渡り美しかった。

 これが狐雲の言っていた水鏡である。
 簡単に言えば神眼を泉が担うようなもので、目にしたいと思ったことを考え覗けば、この水面に映し出されるようになっている。

 しかし今はただの鏡のように、水際に立ち尽くす蛇珀を反映させるだけであった。
 蛇珀は水鏡に映る自身の姿を見て思わず眉間に皺を寄せた。

 ――なんつう、情けねえ顔をしてやがるんだよ。

「……蛇珀、様」

 いろりはようやく絞り出した声で愛しい名を紡いだ。
 しかし、それ以上は言の葉が続かなかった。
 
 ――蛇珀様の寿命は大丈夫なのですか? どうしてそんな大事なことを黙っていたのですか? なぜ、願い聞きをやめられたのです? これからも……私はあなたのお側にいてもいいのでしょうか……?

 そんな考えが頭の中をぐるぐる回る。
 しかし、どれも口にしてしまえば蛇珀を責めるように聞こえてしまいそうで、どうしようもなくなったいろりは蛇珀に強く繋がれたままの手に力を込めた。
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