蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「やめろ、いろり! 俺を本気で想うなら俺から離れようとするな。俺はもう……お前なしじゃ、生きられねえ……!!」

 翡翠色の瞳は濡れたように煌めき、縋るようにいろりを見つめる。

 いつも強気で決して弱音を吐かない蛇珀にこのように懇願されては、少女になす術はなかった。

「……蛇珀様、帰りましょう。一緒に」

 その返事を聞き、蛇珀は安心したようにいろりを腕の中に閉じ込めた。

 ――蛇珀様、本当にこれでいいんでしょうか? 私たちは何か、大事なことから目を逸らしている気がします。でも……あなたの願いに逆らえるはずがありません。私は、何があっても、蛇珀様の味方です……。
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