蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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 永遠とわに続くのではと思われるほどの細く、長い、歴史を匂わせる階段。
 それを上りながら、左右に見える数多のほこらに、いなり寿司を供えていく。

「狐雲様……鷹海様……」

 何かに取り憑かれたかのように、ぶつぶつと神の名を呟き続ける。

「百恋様……学法様……、誰でも、いいです……誰か…………誰か、出てきてください……お願いします、お願いします、神様……!!」

 僅かな光しかない暗がりの中、いろりは数えきれないほど階段に躓いた。その腕や足は擦りむき、傷つき、衣服に紅い紋を滲ませていた。

 いなり寿司が尽き、鳥居の中央に崩れ落ちるようにして倒れ込んだ時だった。

 いろりの上空から、黄金色こがねいろの明かりが照りつける。

 狭くなった視野にそれを認めると、いろりは即座に頭を上げた。

 十段ほど先の階段から、座り込んだいろりを見下ろすように凛とした姿勢で立っている……四足歩行の生き物。
 琥珀色に輝く狐が、そこにはいた。

 その豊かな尻尾の数と、神々しさを尽くした光に、いろりはすぐ誰であるか検討がついた。
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