蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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試練

30

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 いろりを胸に抱いたまま、軽々と仙界の地を跳び、駆け抜ける蛇珀。

 しばらくすると前方に現れた一本の大樹。
 その前に華麗に着地すると、蛇珀はいろりをそっと降ろした。

 懸命に顔を上げれば、どうにかてっぺんまで認めることができる、堂々たる姿の大樹。茶色い幹の太さは恐らくいろりを十人並べても足りない。
 茂った葉は透明度の高い虹色をしており、常に色調が変化し、品のある優しい煌めきを生み出していた。
 人間界の樹木とはまったく別物であるその光景は、実に幻想的にいろりの目を惹きつけた。

「仙界に唯一生えている神樹……神の木だ。三百年前、俺はこの葉の雫から生まれた」
「この綺麗な葉っぱから、蛇珀様が……」

 この美しい大樹の葉から滴り落ちて生を受けたなど、なんて神秘的で、そしてなんて蛇珀に相応しいのだろうと、いろりは思った。

「俺たち神が身につけているものは全部この葉から作られてる」
「そうなんですか! じゃあ、この数珠も?」
「それはこの葉と、俺の爪でできてる」
「そうだったんですか! だから……」

 どことなく蛇珀の気配を感じることができたのかと、いろりは思った。
 思い出の写真すらなかったいろりを支えてくれたのは、この翡翠色の玉だったのだから。
 蛇珀は自身の欠片を肌身離さずつけていたいろりを見て、たまらない気持ちになった。
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