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棘病

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 しかし、次に美汪から出た台詞は、その恐怖心をほんの一瞬吹き飛ばした。

「君……棘病でしょ」

 穏花は目を見開き、何か言いたげに口を動かした。

「……ど、どうして、それを!? ……な、何か、知ってるの……!?」
「わかるよ。それだけ匂っていれば、僕の嗅覚ならね。他の奴らには到底嗅ぎ分けられないだろうけど」

 眉一つ動かさず、淡々と述べる美汪に、穏花の頭は混迷する。

「にお、い? 棘病、の……?」
「それ特有の花の匂いだ」

 美汪が教室内で穏花を視線で射ていたのは、棘病を患っていると気がついたからだった。

「他の人にはわからない、って……どうして、黒川君にはわかるの? 黒川君は、もしかして、本当に」

 吸血鬼、なの?
 そう言おうとした穏花の声は美汪によって遮られる。

「棘病を治す方法を調べて、吸血族に血を吸われれば進行が止められるという記事を見た。そこに書いてあった吸血族の容姿や性質が僕に似ていたから後をつけた……というところかな」

 まるで穏花とみちるのやり取りを見聞きしていたかのように、美汪は二人の行動を正確に当ててみせた。

 なぜ、例の記事について知っているのか? 
 匂いだけで嗅ぎ分けられるほど、棘病に詳しいのか?

 落ち着けば聞きたいことは山ほどあったが、今はそれどころではなかった。
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