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あふれる想い
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――美汪――?
穏花が名を呼ぼうとした時、不意に、唇に何かがぶつかる感覚が生まれた。
その唇は寒さか、それとも緊張のせいか、乾いてやや硬く、温かさの中にも彼らしい冷たさが含まれていた。
零の距離に見える、知性と美しさに満ちた顔に、ようやく美汪に口づけられたと気づいた穏花は、手指を震わせ耳まで熱くした。
「……は、は、へ……!? な、なん、で……!?」
「……したかったからしただけ。何、文句あるの?」
思わず間抜けな声を漏らした穏花に、美汪は照れ隠しに少し拗ねたように言った。
文句なんてとんでもない。そう思いながらも口がうまく動かない穏花は、とにかく嫌ではないことを伝えようと必死に首を横に振った。
いつから好きだった、なんてどうでもいい。
この少女が、間違いなく今、自分の意思で触れるのを受け入れ、許してくれていると思うだけで、美汪は全身の血が逆流するかのような興奮を覚えた。
美汪は何度も穏花に口づけた。
薄い自分のそれとは違い、柔らかな厚みのある薄紅色の唇を味わうように。次第に吐息を奪うように激しく深く重ね、そのまま舌を首筋に這わせていった。
二人にとって吸血は、食糧の需要と供給ではなく愛を深める行為と成り果てた。
美汪にとっては初めから。穏花にとっても……初めからだったのかもしれない。
美汪本来の姿に、狂い咲いた薔薇の情熱を感じた、あの時から、二人の最低で最高の恋の堕落は始まっていたのだ。
穏花が名を呼ぼうとした時、不意に、唇に何かがぶつかる感覚が生まれた。
その唇は寒さか、それとも緊張のせいか、乾いてやや硬く、温かさの中にも彼らしい冷たさが含まれていた。
零の距離に見える、知性と美しさに満ちた顔に、ようやく美汪に口づけられたと気づいた穏花は、手指を震わせ耳まで熱くした。
「……は、は、へ……!? な、なん、で……!?」
「……したかったからしただけ。何、文句あるの?」
思わず間抜けな声を漏らした穏花に、美汪は照れ隠しに少し拗ねたように言った。
文句なんてとんでもない。そう思いながらも口がうまく動かない穏花は、とにかく嫌ではないことを伝えようと必死に首を横に振った。
いつから好きだった、なんてどうでもいい。
この少女が、間違いなく今、自分の意思で触れるのを受け入れ、許してくれていると思うだけで、美汪は全身の血が逆流するかのような興奮を覚えた。
美汪は何度も穏花に口づけた。
薄い自分のそれとは違い、柔らかな厚みのある薄紅色の唇を味わうように。次第に吐息を奪うように激しく深く重ね、そのまま舌を首筋に這わせていった。
二人にとって吸血は、食糧の需要と供給ではなく愛を深める行為と成り果てた。
美汪にとっては初めから。穏花にとっても……初めからだったのかもしれない。
美汪本来の姿に、狂い咲いた薔薇の情熱を感じた、あの時から、二人の最低で最高の恋の堕落は始まっていたのだ。
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