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薔薇の耽血

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「そうか……君は花に愛されるんだね」

 小ぶりな頭に積もった花弁、棘病、そして自分自身を思い、美汪はそう言った。

 穏花は美汪がなぜそんなことを口にしたのか理由まで知ることはなかったが、それでよかった。

 一枚、一枚、丁寧に花弁を取り除いてくれる美汪を、穏花はただ見上げ、見つめ、世界中の幸せを独り占めしたかのように微笑んでいた。

 そんな穏花を前に堪らなくなった美汪は、肩に降りた花弁を取るふりをして身を屈めると、白い耳に甘く歯を立てた。

 途端、ふるりと小さく震える身体、桜より遥かに美しく情欲的に染まる頬――。

 美汪は今後も、自分が自分でなくなることに怯えながら、滑稽なほど愛に溺れてゆくだろう。



「好きだよ穏花……君の血、全部飲み干したいくらい」



 美徳を捨てた先に、美汪は何ものにも代え難い宝を見つけた。



 ――無様でもかまわない、君といつまでも。










 ——Ende——
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