幼馴染を寝取られパーティから追放されいい年こいて実家に帰ると童貞のオレに何故か娘がいた!

雨露霜雪

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2章 我が家

オレと娘の旅立ち

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「大丈夫? 忘れ物はない?」

「大丈夫だよ。母さんだって何度も確認したろ?」

「そうだけれど……」

「それでも何か忘れてたら、途中で買うから平気だって。オレ、金だけは余るほど持ってるし」

 いよいよオレとキャンディッドは村を出ることになったが、母は相変わらず・・・・・オロオロしている。
 以前はこんな姿を見せなかった母だが、オレたちの出発が近付くと、むしろ落ち着いている時間の方が少ないと思えるほど、落ち着きがなくなっていたのだ。

「こっちより、母さんの方こそ大丈夫? 一人でもちゃんと食事できる?」

「わ、私は大丈夫よ!」

「それならいいけど」

「本当に私の心配は要らないから」

 オレに誂われたことで反論し、漸く落ち着きを取り戻したのだろう、母はあっという間にオレの良く知る母に戻っていた。

「キャンディ、無理はしなくていいんだからね。辛かったら、いつでも帰ってきて構わないから、変に我慢せず、お父さんに相談しなさいね」

 母の言葉に、キャンディッドはフルフルっと首を横に振る。

「ボクは、冒険者になって、おっさ……ラジュと、お母さんと、一緒に帰ってくる。……そしたら、お母さんと、お婆ちゃんは、ボクがずっと守る」

 キャンディッドの言葉を聞いた母は、口元に手を当て、クルッと背中を向けてしまった。

「ん? お婆ちゃん」

「大丈夫だキャンディッド、ちょっと待っててな」

「ん、分かった」

「母さん、ちょっと」

 オレはそう言うと、母の肩を抱き、玄関口まで戻った。

「クラージュ、キャンディを……キャンディを、よ、よろしくね」

 母はオレの体の影になって、自分の姿がキャンディッドに見えてないとわかったのだろう、ガバっとオレに抱き着いてくると胸に顔を押し付け、肩を震わせながら嗚咽混じりの声を出してくる。
 オレはそんな母を優しく包み込み、「任せて」とだけ答えた。

 暫くの間そうしていた母だが、エプロンからハンカチを取り出し、俯いて顔を拭う。そして、ゆっくりと顔を上げてオレを見据えた。
 赤くなった目が薄く閉じ、母の表情が笑みに変わる。

「みっともないところを見せてしまったわね」

「そんなことないよ。――オレ、母さんのことは何でも分かってる気でいたけど、帰ってきて気付いたことが沢山あった。そんで、全然母さんのこと知らなかったって分かって、ちょっと落ち込んだりしたんだ。だから、今の母さんを見れたから、また一つ母さんを知ることができたよ。キャンディッドに感謝しなくちゃだね」

 わざとおどけたわけではない。オレは本気でそう思った。

「もう、私を誂わないでよね」

 母はそう思ってくれなかったようだが……。

「それより、キャンディと二人で大丈夫?」

「だから、何度も大丈夫って言ったでしょ」

「違うわよ。コッチのことよ」

 母はそう言いながら、下の方に軽く触れた。

「自分で何とかしなさいとは言ったけれど、できればキャンディに分からにように処理してね」

「なっ、そ、そんなの当然だよ」

「だって、クラージュは声を出すでしょ? 昨夜も出発前だからって頑張ったのかもしれないけれど、しっかり聞こえてたわよ」

「…………」

 マジかー!? オレって声を出してたのか。知らなかった……。

「き、気を付けるよ」

「それから、間違ってもキャンディには手を出さないでね。いくら血が繋がっていなくても、『血を分けた親子』なのだから」

「そんな事するわけないだろ。キャンディッドは娘で、オレたちは親子なんだから、ちゃんと弁えてるよ。――それに、今のところ母さんを思い出さないとそうならないし」

「はぁー……。キャンディのことは親子だから弁えてると言いながら、母さん・・・と親子であることは弁えていないのね」

 ヤバッ! 余計なことを言ってしまった!

「ほら、今のところ接点のある女性がいないだけで、旅に出ればきっと母さん以外でもそうなるから。だ、だから安心して」

「全然安心できないのだけれど、そうなってくれるように祈っておくわ」

「信用ないなー」

「だって、信用できる要素がないんだもの」

 まぁそうだよな。

「とにかく、色々と頑張るから。もしかしたら、今度帰ってくるときは嫁を連れてくるかもしれないし」

「はいはい、当てにしないで待っているわ」

 ちょっと締まらないけど、最後に母さんが笑顔になってくれたし、これで良しとしよう。

「母さん、キャンディッドともその笑顔で別れてあげてね」

「ええ、しっかり笑顔で見送るわ」

 そうして、再びキャンディッドの待つ門に母と向かい、改めて最後の挨拶を交わした。

「……お婆ちゃん、目、赤い」

「ちょっと、ゴミが入って擦ってしまったの。今はゴミも取れたし、大丈夫よ」

「ん、そう」

「じゃあキャンディ、無理せずに頑張ってね。お婆ちゃんは、キャンディに守ってもらえる日を楽しみに待っているわよ」

「ん、約束」

 母はまた瞳が潤んでしまっていた。そして、自分でも不味いと気付いたのだろう、咄嗟にキャンディッドに抱き着き、孫に分からないように目元を拭う。
 そして母が落ち着くのを見計らってオレが声をかける。

「キャンディッド、あんまりのんびりしてると、隣村に着く前に夜になっちゃうぞ」

「ああ、お婆ちゃんが抱き着いていたら、いつまでも出発できないものね。ごめんなさいね」

 母はそう言いながら、照れたような笑顔を浮かべていた。なかなかの演技っぷりだ。

「二人とも、気を付けていってらっしゃいね」

「ああ、行ってくるよ」

「元気でね」

「母さんこそ、無理しないで元気でいてくれよ」

「大丈夫よ」

「……お婆ちゃん、元気でね。……いって、きます」

「はい、……いって、らっしゃい」

 不味い、母さんがまた崩壊しそうだ。

「行くぞキャンディッド」

 オレは強引にキャンディッドを反転させ、出発することにした。そして娘と手を繋ぎ、後ろ髪を引かれる思いで歩き始める。
 女々しいオレは、少し進んでから振り返ってしまうと、母はしゃがみ込んで肩を揺らしていた。

 母さん、キャンディッドを立派に育て上げて、一日も早く戻るからね。それまで一人にしてしまって申し訳ないけど、少しだけ、少しだけ我慢して欲しい。
 今度こそ、オレは目標を見失わずに達成して戻ってくるから。

 次第に小さくなっていく母を見ながら、オレは心の中で母に再度別れの言葉を念じた。



「……おっさん」

 暫く無言で歩いていたオレたちだが、不意にキャンディッドが声をかけてくる。

「おっさんじゃなくて、お父さんな」

「……ラジュ」

「まぁいいか。で、何だ?」

「速い」

「えっ?」

 オレはキャンディッドの歩幅など全く考えていなかった。その所為で、小柄なキャンディッドは小走りになっていたのだろう、額に汗が浮かび顔が赤らんでいたのだ。

「ごめん、少し休憩しよう。あそこの木陰がいいな」

「ん」

 生まれ故郷のルグレ村から隣町まで、街道どころか道とも呼べないような、ただ踏み固められた土の筋を歩いているオレたちだが、この付近は草原なため灌木すらない。
 しかし、少し進めば日差しが防げるだけの葉を茂らせた木が、ぽつんと一本だけ立っている。
 ここまでキャンディッドに気を遣わなかったのだ、これからは少しでも気を遣わねば、と反省混じりに思った次第だ。


「ほれ、水だ」

「ん、ありがと」

 木に背中を預け、足を放り出して座るキャンディッドに水を渡すと、結構な勢いで飲んでいる。相当無理をさせてしまったようだ。

 キャンディッドは感情を押し殺している所為か、どうにも我慢してしまうきらいがある。
 それでもオレに『速い』と告げたのは、抑えきれていない感情が漏れたのか、はたまたオレに多少なりとも心を開いてくれたのか、それは分からない。だが理由はどうあれ、倒れるまでの無理をしなさそうなのは、少しだけ安心材料だと思えた。
 だからといって、ギリギリまでは無理しそうなのも確かであるため、しっかり見ていなくてはいけない。
 出発早々この様では、我ながら先が思いやられる。

「キャンディッド」

「……キャンディ」

「んっ?」

「ボク、キャンディ……」

「ああ、キャンディって呼べってことか?」

「ん」

 おっ、これはあれか、二人だけになったってことで、親密度が上がり、自分を愛称で呼んで欲しいってことか?
 であれば、オレのこともお父さんと呼んでくれる可能性が!?

「オレのことはおと――」

「お母さんも、お婆ちゃんも、ボクを、キャンディって、呼ぶ」

「お、おう……」

 オレのことは『お父さん』と呼ばないと頑なに拒否するように、先手を打ってオレの声を遮ってきたキャンディッド。だが、自分から自身のことを話してくれたので、それはそれで嬉しく思う単純なオレ。

「なぁキャンディ、どうして自分のことをボクって言うんだ?」

「ん?」

 何となく気になっていたのだが、わざわざ聞くのもどうかと思い、今までは敢えて尋ねなかったのだが、せっかくの機会なので聞いてみることにした。

「お母さんが、おと……ラジュは自分を、ボクって言ってたって……」

 今一瞬、お父さんって言いそうになってたよな?! おしぃ~!
 まぁそれはそれとして、キャンディの自称がボクなのも、オレの言動を意識して生活していた、ってことの証なんだろうな。オレの昔の自称は確かに『僕』だったし。

「女の子っぽく、わたしとかあたしって言わないのか? 確かねえちゃん……キャンディの母ちゃんは、自分のことをわたくしって言ってたぞ」

「……ボクは、ボク」

「…………」

「…………」

「そうか……」

 ふむ、自称がボクなのは、キャンディなりの矜持というか意地なのかもしれないな。
 これも『お父さんは意地っ張りだったのよ』とか言われて、オレの真似をしてるってことなのだろうか?
 まぁ何にせよ、これはこれでキャンディの意思表示の一つだ、こうやって少しずつこの子を理解していこう。

 母と離れた寂しさはまだあるが、これからはキャンディを見守っていかなければならない。母には申し訳ないが、いつまでも感傷に浸るのではなく、前を向いて歩まねばならないのだ。

 オレは隣にちょこんと座る娘を見て、この子のために頑張ることを強く心に誓う。

 とはいえ、二十五歳にして漸く夜の冒険ソロプレイを覚えたオレは、まだまだ脳内の母にお世話になるしかないため、なかなか親離れできそうもない。
 しかし、いつかは心を許し合える女性ひとを見付け、協力プレイができるよになれば、オレも母から旅立てる。
 娘のキャンディッド……キャンディもこうして村を出て、祖母の許から旅立ったのだ。父であるオレがいつまでも母から旅立てないのは、些かカッコ悪いだろう。

 何はともあれオレたち二人は、新たな一歩を踏み出した。

 この先のオレたちに、幸あらんことを――


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


~あとがき~

 お読みいただき、ありがとうございました。これにて、今作は完結となります。

 先行投稿していた小説家になろうにて、少々心の折れる出来事があったため、物語の起承転結の起が終わった部分で終了させることにしました。
 しかし、今回の失敗は多くの問題に気付けたので、私的には良い経験になりました。この失敗は、今後の糧にしたいと思います。

 一応、この作品で本来書きたかった部分を中心にリメイクするつもりですが、予定は未定です。
 また、私の頭をリセットする意味で、一度違う作品を執筆します。
 今作のリメイクは現状で五万字少々書いてありますが、必ずしも執筆するとは限りません。

 中途半端な作品を投稿してしまい、申し訳ございませんでした。
 これからも精進し、少しでも良い作品を作りたいと思います。少し間が開くかと思いますが、これからもよろしくお願いいたします。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

堕天使エレナ

完結お疲れ様でした…!

2018.09.05 雨露霜雪

堕天使エレナ様

中途半端な作品になってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。

解除

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