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第二章
第八話 リディラ・クイン〜なんだか規格外な令嬢〜それと天使は寝姿も可愛い
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「これはどういう状況か?」
ヴァジュラの部屋に入ったマグヌスの第一声がそれだった。
昼食時に、リオンとルゼルがヴァジュラのところに来ていると小耳に挟んだマグヌスは三人に癒されようとヴァジュラの部屋に来たのだが…。
そこには可動式ベビーベッドでキャッキャと笑いどっしり座っているヴァジュラ。そして天蓋付きのヴァジュラのベッドで向かい合って寝ているリオンとルゼル。と、忙しなく早口で何か言いながら動いている…リディラ?
侍女らに聞くと、リオンとルゼルがヴァジュラを寝かしつけると言って張り切って寝かし始めたのだが先に二人が寝てしまったということだった(そこ、見たかったな)が、ただその二人の寝姿をルゼルの姉リディラが様々な角度からパシャパシャと手のひらサイズの写真機らしきもので撮っているのだ。しかも眠っている二人の美幼児にヴァジュラの部屋にある小物を付けて…例えばヴァジュラをあおぐための白い扇を侍女たちから借り上げ、二人の背中側に置き、
「天使の羽よ…。はぁ、本物の天使だわ…」
と言って撮ったり、キラキラした小物を周りに置いて
「光の中を飛んでいる天使よ…」
と言って撮ったり…。
ヴァジュラの掛け布団は水色の羽毛なので空のようだし、二人の服は今日もフリルふりふりで羽がなくても天使のようなのだが、小物を置くだけで二人の天使度が非常に高まるのだ。
リディラが配置を決める度に侍女たちの「ほぅ」という『癒されました』のため息が聞こえる。なんだろうリディラのこのセンスの良さは。…じゃなくて。
「待て、リディラ。これは?」
マグヌスは状況を把握しきれずに聞いた。リディラはマグヌスを見ることなく言う。
「シーッ。二人が起きてしまいます。小さなお声で」
「あ、ごめん」
リディラはセッティングの手を止めることなく続ける。
「マグヌス殿下、私はいつも頭の中で弟たちの天使ぶりを思い描いているのです。それを今、写真にして残そうとしているのです」
早口だ。
リディラの兄であるリゼルは常日頃リディラがいかにルゼルたちを溺愛しているかを話しているが、間近で見るとリディラの熱の入れ方は溺愛というより、溺愛とはまた違うマグヌスのまだ知らない言葉の何かのような気がした。
「あ、侍女様侍女様、そこのレースを取ってくださいませ。はい、それです」
と相変わらずマグヌスを見ることなく言う。今日のリディラの視線はほぼルゼルたちから離れない。
マグヌスの知る上位貴族の令嬢たちは、マグヌスの姿を見ると何かと声をかけ、自分を売り込むアピールをする。このリディラも上位貴族の令嬢でおそらくマグヌスの婚約者候補の一人のはずだがマグヌスに全く興味を示さないのでマグヌスにとってリディラはとても気楽に付き合える貴重な友達の一人だった。
リディラはレースの端をリオンの手に、もう一方の端をルゼルの手に置くと
「はあぁ、二人の天使が綺麗なレースで繋がっている…」
と満足気につぶやき、パシャと写真機のボタンを押した。
「おい、リディラ、それは写真機なのか?」
とリディラの手の物について聞く。
写真機なのだろうが、自分の知るそれよりもずっと小さくて軽そうなのだ。その答えについてリディラはやはり早口で
「はい、そうです。これは子どもでも持てるくらい軽く作ってもらった新しい写真機なのです」
マグヌスを邪魔と言わんばかりの早口だ。
侍女の補足によると、最近瞬間を写せる新しい写真機ができた。早速それで写されたリオンとルゼルの写真を見たリディラが自分も撮りたいと、自分の方が可愛い二人を撮れるのだからと、父侯爵に写真機をねだったのだそうだ。
けれど、新型写真機は鉄製で重く、被写体までの距離や光の調節などが必要でとても子どもの使えるものではない。しかし、侯爵もリディラの熱い願いを叶えたいし、なにより自分がいない時の子どもたちの姿を見たいと思って(どこかで似た話を聞いたな…あ、父上だ…。あぁ)、さほど性能は良くなくても子どもでも使えるタイプを開発したのだそうだ。
とことん軽量化を目指したため鉄製写真機のようなピントをしっかり合わせる機能がなく、撮れる距離の範囲が限られていることと、明るい所でしか使えないということだが子どもが使うには十分だ。
クイン家は代々子沢山だから分家も沢山あり親戚も沢山いる。横のつながりを強みとしているクイン家は科学的な仕事を手広くやっている。機械工学もその一つなのだろう。
「リディラ、撮ってどうするの?」とマグヌス。
「私のコレクションにいたします。そして私がお嫁に行く時に持って行き、ずっとずっと忘れないようにするのです。私は絵も学んでいるので撮りきれないものは描いて残します」
すごいなこの4歳。本当に舌足らずのルゼルの姉か?むしろコーク家の血筋みたいだ。あ、コーク家の従姉妹だからそちらの血が濃いのかも。
など考えているとヴァジュラについていた侍女が言った。「ヴァジュラ様がお眠りになられました」
ピカーン。リディラの緑の瞳が光った。ように見えた。
「侍女様侍女様、ヴァジュラ殿下をベッドにどうぞ…その方が身体が休まります…二人の間に…二人の間に…」
今日一番の早口だ。
侍女がそっとヴァジュラをベッドに寝かせると「ううん」とリオンが少し唸り、全員が一瞬動きを止めた。起こしたくない。リディラのセッティングを見たい。みんながそう思っているのがわかる瞬間だった。
三人並んですやすや眠る姿は本当に可愛い。一人ゴリマッチョだけど、三人とも可愛い。
「王妃様にも出来上がった写真をお渡しする約束をしているのです」
とリディラはやはりマグヌスを見ずに言った。
ああ、母上とリディラは確かに話が合いそうだとマグヌスは思った。
その後どうなったかと言うと、三人を並べてああだこうだと飾り立てるリディラにマグヌスもああだこうだと参戦し、最終的にマグヌスとリディラも疲れて眠ってしまい、とても愛らしい5人の寝姿の写真が撮れ、王妃様が大喜びしたということだった。
ヴァジュラの部屋に入ったマグヌスの第一声がそれだった。
昼食時に、リオンとルゼルがヴァジュラのところに来ていると小耳に挟んだマグヌスは三人に癒されようとヴァジュラの部屋に来たのだが…。
そこには可動式ベビーベッドでキャッキャと笑いどっしり座っているヴァジュラ。そして天蓋付きのヴァジュラのベッドで向かい合って寝ているリオンとルゼル。と、忙しなく早口で何か言いながら動いている…リディラ?
侍女らに聞くと、リオンとルゼルがヴァジュラを寝かしつけると言って張り切って寝かし始めたのだが先に二人が寝てしまったということだった(そこ、見たかったな)が、ただその二人の寝姿をルゼルの姉リディラが様々な角度からパシャパシャと手のひらサイズの写真機らしきもので撮っているのだ。しかも眠っている二人の美幼児にヴァジュラの部屋にある小物を付けて…例えばヴァジュラをあおぐための白い扇を侍女たちから借り上げ、二人の背中側に置き、
「天使の羽よ…。はぁ、本物の天使だわ…」
と言って撮ったり、キラキラした小物を周りに置いて
「光の中を飛んでいる天使よ…」
と言って撮ったり…。
ヴァジュラの掛け布団は水色の羽毛なので空のようだし、二人の服は今日もフリルふりふりで羽がなくても天使のようなのだが、小物を置くだけで二人の天使度が非常に高まるのだ。
リディラが配置を決める度に侍女たちの「ほぅ」という『癒されました』のため息が聞こえる。なんだろうリディラのこのセンスの良さは。…じゃなくて。
「待て、リディラ。これは?」
マグヌスは状況を把握しきれずに聞いた。リディラはマグヌスを見ることなく言う。
「シーッ。二人が起きてしまいます。小さなお声で」
「あ、ごめん」
リディラはセッティングの手を止めることなく続ける。
「マグヌス殿下、私はいつも頭の中で弟たちの天使ぶりを思い描いているのです。それを今、写真にして残そうとしているのです」
早口だ。
リディラの兄であるリゼルは常日頃リディラがいかにルゼルたちを溺愛しているかを話しているが、間近で見るとリディラの熱の入れ方は溺愛というより、溺愛とはまた違うマグヌスのまだ知らない言葉の何かのような気がした。
「あ、侍女様侍女様、そこのレースを取ってくださいませ。はい、それです」
と相変わらずマグヌスを見ることなく言う。今日のリディラの視線はほぼルゼルたちから離れない。
マグヌスの知る上位貴族の令嬢たちは、マグヌスの姿を見ると何かと声をかけ、自分を売り込むアピールをする。このリディラも上位貴族の令嬢でおそらくマグヌスの婚約者候補の一人のはずだがマグヌスに全く興味を示さないのでマグヌスにとってリディラはとても気楽に付き合える貴重な友達の一人だった。
リディラはレースの端をリオンの手に、もう一方の端をルゼルの手に置くと
「はあぁ、二人の天使が綺麗なレースで繋がっている…」
と満足気につぶやき、パシャと写真機のボタンを押した。
「おい、リディラ、それは写真機なのか?」
とリディラの手の物について聞く。
写真機なのだろうが、自分の知るそれよりもずっと小さくて軽そうなのだ。その答えについてリディラはやはり早口で
「はい、そうです。これは子どもでも持てるくらい軽く作ってもらった新しい写真機なのです」
マグヌスを邪魔と言わんばかりの早口だ。
侍女の補足によると、最近瞬間を写せる新しい写真機ができた。早速それで写されたリオンとルゼルの写真を見たリディラが自分も撮りたいと、自分の方が可愛い二人を撮れるのだからと、父侯爵に写真機をねだったのだそうだ。
けれど、新型写真機は鉄製で重く、被写体までの距離や光の調節などが必要でとても子どもの使えるものではない。しかし、侯爵もリディラの熱い願いを叶えたいし、なにより自分がいない時の子どもたちの姿を見たいと思って(どこかで似た話を聞いたな…あ、父上だ…。あぁ)、さほど性能は良くなくても子どもでも使えるタイプを開発したのだそうだ。
とことん軽量化を目指したため鉄製写真機のようなピントをしっかり合わせる機能がなく、撮れる距離の範囲が限られていることと、明るい所でしか使えないということだが子どもが使うには十分だ。
クイン家は代々子沢山だから分家も沢山あり親戚も沢山いる。横のつながりを強みとしているクイン家は科学的な仕事を手広くやっている。機械工学もその一つなのだろう。
「リディラ、撮ってどうするの?」とマグヌス。
「私のコレクションにいたします。そして私がお嫁に行く時に持って行き、ずっとずっと忘れないようにするのです。私は絵も学んでいるので撮りきれないものは描いて残します」
すごいなこの4歳。本当に舌足らずのルゼルの姉か?むしろコーク家の血筋みたいだ。あ、コーク家の従姉妹だからそちらの血が濃いのかも。
など考えているとヴァジュラについていた侍女が言った。「ヴァジュラ様がお眠りになられました」
ピカーン。リディラの緑の瞳が光った。ように見えた。
「侍女様侍女様、ヴァジュラ殿下をベッドにどうぞ…その方が身体が休まります…二人の間に…二人の間に…」
今日一番の早口だ。
侍女がそっとヴァジュラをベッドに寝かせると「ううん」とリオンが少し唸り、全員が一瞬動きを止めた。起こしたくない。リディラのセッティングを見たい。みんながそう思っているのがわかる瞬間だった。
三人並んですやすや眠る姿は本当に可愛い。一人ゴリマッチョだけど、三人とも可愛い。
「王妃様にも出来上がった写真をお渡しする約束をしているのです」
とリディラはやはりマグヌスを見ずに言った。
ああ、母上とリディラは確かに話が合いそうだとマグヌスは思った。
その後どうなったかと言うと、三人を並べてああだこうだと飾り立てるリディラにマグヌスもああだこうだと参戦し、最終的にマグヌスとリディラも疲れて眠ってしまい、とても愛らしい5人の寝姿の写真が撮れ、王妃様が大喜びしたということだった。
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