金に紫、茶に翡翠。〜癒しが世界を変えていく〜

かなえ

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第三章

閑話 弟は可愛いくて可愛いし、可愛い上に可愛い。〜お兄様、頑張って!

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 初めてのお茶会は無事に終わりました。
 お兄様たちのサプライズ参加でハラハラしたけれど、出席された皆様はお兄様方のキラキラパワーに冷静だったわ。王妃様のお茶会のようにガツガツ行く方がいらっしゃらなくてかえってビックリ。これなら休日にお兄様方参加のお茶会にしても良かったかも。
 とにかく皆様とても良い令嬢方でした。

 さて、ルゼルたちの寝顔も堪能したし、報告をまとめなければ。

 まず、弟様はいらっしゃらないけど立場上お誘いしたマーリン様。お茶会早々マーリン様の抜きん出た令嬢力がハッキリしたわ。今まであまりお話ししなかったけれど素敵な方ね。知的で上品、しかも可愛らしい。マーリン様こそ王太子妃にふさわしいのに、従姉妹様というだけで候補にならないなんて…もったいないわ。万が一、他国の王妃様にでもなられたらマードの損失よ。なんとかならないかしら。王妃様に相談、と。

 リタ様は、アデル様とご一緒じゃないとなんて爽やかなんでしょう。物事はハッキリおっしゃるけれどまるで含みがなくて嫌味がなかったわ。新年会の印象とまるで別人。ルゼルたちがアデル様を好きになったようだから、近い存在のリタ様が荒々しい方なのかと心配したけど杞憂だったようね。

 男爵令嬢のララ様のおうちは事業がうなぎのぼりで経済力の面で弟様が幼稚園入園候補だと聞いたのよ。だから新年会にも出席されていたけど、あの日どこかの公爵令嬢たちに成り上がりの男爵家風情がとか嫌味を言われて泣いているのを見かけたわ。あれ何よね。同じ公爵家でもユリアン兄様やマーリン様と全然ちがっていたわ。あの時、見かねて助け舟を出したユリアン兄様に赤いお顔をされていたけど、王妃様のお茶会でユリアン兄様にむらがる令嬢たちの「きゃー」な目は全然しないでひたすらお礼を言っていたわね。今日の様子でも確かに気弱そうな方だけど、賢い方だと思うの。
 新年会でお見かけしたララ様の弟様は、ルゼルたちとは全然違うタイプでお元気な方だったけど、ララ様を慕っていて可愛らしかったわ。ララ様は少しルゼルに似たところがあるから弟様はルゼルたちと気が合うと思うのよね。
 ララ様、足のお怪我は大丈夫かしら。

 タミラ様は私の一押しの小物入れを手にしたくらいだし、絵画も私の好きな作品を一番長くご覧になっていたから、弟様どうこうより私と気が合いそう。小物入れでは申し訳ない事をしたわ。あれは私の選出ミスよ。しかもルゼルたちに見惚れて落としたそうじゃない!わかるわ!益々気が合いそう!

 エリィ様にはアロンちゃんと同い年の弟様がいらっしゃるのでお呼びしたわ。ヴァジュラ殿下のお茶会にはアロンちゃんもお呼ばれする可能性が高いもの。あの方、小物入れが割れて場が暗くなった時、タミラ様とは離れていたのに庇っていたわね。王妃様のお茶会ではマグヌス様にグイグイ行ってガンガンお姉様方に追い払われていて、それでも毎回攻め込んで、なかなか骨があると思っていたけど、やはりまっすぐな方ね。

 それにしてもルゼルとアロンちゃんの可愛かったことったらなかったわ!
 「ウサギです。道に迷いました」
 って、ちょっと待ってー!って声が出たかと思ったわ。あれ、準備段階でウサギルゼルを見ていなかったら絶対声に出ていた案件よ。
 ウサギが星と手をつないで扉にいるのよ。ウサギの妖精と星の妖精だったわ。ルゼルとアロンちゃんだってわかっている私があれだもの、タミラ様の手から力が抜けて当たり前よ。むしろマーリン様、よく普通に返せていたわ。
 それにしてもララ様のお怪我に気付いたウサギルゼル名探偵は凄かったわ…あの子、一瞬でどこまで見えていたのかしら…。

 コンコンコン。

 あら、ノック。誰かしら。
 「アネーレ、ルゼルでしゅ」
 きゃーん。ルゼルぅ。何かしら?何かしら?
 「どうぞ」冷静に…と。
 カチャ。ルゼル。ウサギじゃなくても可愛いわ。
 「アネーレ、しつれしましゅ」ぺこり。
 うん。礼儀正しい。つむじまで可愛い。
 「どうぞ、お入りなさい。なにかしら?」
 ちょっと迷っているみたいだけど、そのモジモジも可愛らしい。
 「あのあの、アネーレ。きょう、こわいのおともだちはいませんでしたか?」
 「ええ、今日のお客様方は皆様とても優しくて素敵な方々だったわ」
 「ふぅん…」
 あら、何か考えてる。小首傾げて。可愛いんだけど。可愛いんだけど⁉︎
 ユリアン兄様が「リオンはつむじまで可愛いんだ」と仰っていたけど、わかるわ。ルゼルのつむじも可愛いわ。
 「なぁに?心配なことがあったの?こちらに座ってお話しましょう?」
 素直にソファに座るルゼル。ソファに置いてある犬のぬいぐるみより小さいってなんなの?なんて可愛いの。あ、何か話し始めるわ。傾聴、傾聴。
 「アネーレ。まえみたとき、リタしゃまこわいこわいでした。でもきょうは、やさしいでした。リタしゃま、ずっとこわいじゃなかったですか?」
 新年会のリタ様のインパクトは大きかったものね。
 「リタ様は今日ずっと怖くなかったわ」
 ルゼルは「そですか。よかったでしゅ」と言ったけど、まだ心配事があるみたい。
 「アネーレ。あんよ、けがしたお姉しゃまは、うそちゅきなの?」
 「ララ様は嘘つきではないわ」
 「でも、あのお姉しゃま、ごじぶんで、うそちゅいた、いってました」
 「そうね。あのね、お母様やお父様に聞いたのだけど、嘘っていけない嘘だけではないのですって。本当ではないことを言って人を傷つける嘘と、本当のことを言うと傷つく人がいるからそれを言わないための嘘があるって」
 「うそは、ひとつじゃないの?」
 「そういうことになるわね。人を傷つける嘘はいけない嘘だけど、人を守る嘘もあるのよ。ララ様の嘘は人を守る嘘だったわね」
 もう、ルゼルったら、そんな話したらウサギが自分だったって言ってるようなものなのに。ララ様の足の怪我を見破った名探偵とは思えないスッカスカの思考じゃない。可愛いんだから。もう。
 「アネーレ。もしもで、ルゼルがアネーレしんぱいーってなって、ウサギになってアネーレをまもるのは、うそ?」
 ぎゅんっ‼︎
 自白?自白なの?それがウサギだった理由なの?私が心配で守るつもりだったの?やだ、泣きそう。そして兄上たちに自慢したい。落ち着いて私。ルゼルはなんだか心配そうにうつむいてるわよ。一人称ルゼルになりっぱなしよ。
 「ルゼルは嘘だと思うの?」
 「…ルゼルはうそじゃないの。でアネーレまもるなの」
 変装だったのねー。充分可愛い余興だったわ。
 「だけど、も、うそなのかな?」
 あぁ、そこが心配事だったのね。
 「あのねルゼル。もしも、ルゼルがアネーレを守るつもりで変装していて、その場でアネーレが嫌だなって思っていなければ、嘘だとしても優しい方の守る嘘なんじゃないかしら?」
 「…アネーレは、まいごのウサギがきたとき、やだだった?」
 またもや自白ですか?本当にあの時の名探偵と同じ人なの?ルゼル。
 「迷子のウサギ様が来たときは、皆可愛いって思ったし、ララ様のお怪我も見つけて下さったし、お庭の素敵な場所も教えていただいたから少しも嫌なところはなかったわ。むしろありがとうって言いたいくらいよ」
 あ、ルゼルのお顔が明るくなったわ。
 「ほんとですか?ウサギさんきいたらよろこびましゅ!ウサギさんにはなしてきましゅ!」
 可愛い!可愛い!可愛い!
 「アネーレ、ありがとござましゅ!アネーレだいすき!」
 ルゼルが私をぎゅってしてソファからピョンと飛び降りるとそのまま部屋の外に向かって走る。その背中に
 「お星様にもありがとうって伝えてね」
 というと、
 「わかりましたー」
 と弾んだ声で返事をして出て行ったわ。
 なにー、なにー、なにー。あの可愛さ、どうしたら良いの?
 私、さっきから何回可愛いって思った?
 足りないわ。「可愛い」じゃ、ルゼルの可愛さを説明するには足りないのよ。
 お兄様が学園に入ったらお勉強頑張って言葉の博士に新しい「可愛い」より「可愛い」の言葉を作ってもらうと仰っていたわ。
 お兄様!応援します。頑張って!早く新しい言葉を私にください!

 お茶会の報告と一緒に「頑張って」もお伝えしなくちゃ!

 
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