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第三章
第二十九話 兄上たちもウサギに会いたい。〜令嬢方よりウサギと星でしょう。
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リディラたちはリディラのアトリエにいた。誕生日にプレゼントされたあのアトリエだ。今は絵画道具の他、刺繍道具や画用紙や色鉛筆やクレヨン、それに図鑑、椅子が三脚、それから小さな椅子も三脚ありなかなか充実の場所になっている。
アトリエはリディラ、ユリアン、リゼルの作戦会議の会議室でもあり、リオンとルゼルの図鑑製作所でもあった。小さな椅子はリオンとルゼルが図鑑製作に来た時用、それにアロン用だ。アロンの椅子にはカニのカバーが付いている。クッションのお土産以来アロンはカニ好きになっていた。
「素敵なアトリエですね」
令嬢方はホゥとため息をつきながら眺めている。
「…こちらに、ユリアン様とリゼル様がお座りになるのですね?」
部屋の飾りを眺める令嬢の中で唯一エリィがキラキラした目で兄たちを話題にした。
「ふふ、そうですわ」
あえてどちらに誰が座るかは言わないでおく。エリィの本命はマグヌスだとリディラは知っている。兄たちを当て馬にする気はサラサラない。
ユリアンとリゼルのフレーズが出ると何人かの令嬢が赤くなる反応を見せた。やはりお兄様方は知られた存在なのだわとリディラは改めて思う。
池の金魚を眺め、そろそろお開きにしましょうとリディラが声をかけた時、学園から戻ったリゼルの馬車が入ってくるのが見えた。
早くない?とリディラ。確かに今日の様子をユリアンとリゼルに報告することになってはいたが、こんなに早い?
「リディラ!間に合ったようだね」
「やぁ、リディラ、お邪魔するよ」
き…きゃー。
令嬢方の声無き声が聞こえた気がした。
「お兄様、ユリアン兄様、おかえりなさいませ」
予定外の早い帰宅にリディラの目が少し怖かったが気付いたのはユリアンだけ。リゼルは可愛い妹の初めてのお茶会に間に合って満足に笑っている。ユリアンは後でリディラに叱られる覚悟をした。
「皆さん、今日はリディラのお茶会にようこそ。妹のためにありがとうございます」
リゼルは心から令嬢方にお礼を言っている。その後ろでリディラとユリアンが小さく会話している。
「ユリアン兄様、早くないですか?」
「うん。ごめん。実際直接令嬢方にお会いしたくなっちゃって。詳細もお叱りも後で聞くから」
お茶会を計画し始めた頃、『リディラがお茶会を開くらしい。それはリディラかリゼルの婚約者候補選出のためではないか』と社交界で噂になっていたことを知っていた。兄たちはお茶会を休日にして自分たちも参加すると言っていたのだが、二人が参加したら噂に信憑性が高まり面倒なことになりそうだった。余計な騒ぎにしたくないのであえて平日にしたのだ。だが、来てしまったものは仕方がないし、兄たちが気になっているのもわかる。
「仕方ありませんわね」
リディラは苦笑いで済ませた。
もう帰るという時だったので、ユリアンとリゼルは令嬢をそれぞれの馬車まで送ることにした。その時、リゼルが彼の従者ギンに「あれを」と言った。ギンとユリアンの従者は一礼して一旦下がった。
「あら、なぁに?」
とリディラが兄たちに小声で聞く。
「急に参加しちゃったし、リディラの初めてのお茶会だし、どうしても何かしたくなっちゃって、ユリアンと一緒に令嬢方にお花を渡そうと思って用意したんだ」
リゼルは照れたように笑った。
兄の気持ちは嬉しい。令嬢に紳士な兄たちは誇りだ。だがしかし!リディラのお茶会があまり話題になっては困る。リディラはあくまで可愛い弟たちの近い未来の安全のために開いたお茶会で、本来リディラは社交が苦手だ。このお茶会が話題になってしまったら今後やり辛い。開催する度に何か期待されそうだし、開催しなければしないで何か言われそうだ。考えただけで気が重いが、兄たちの気持ちもわからなくはない。だけど勝手をしてくれた制裁はしなくては。リディラは意地悪な気持ちで二人に言った。
「ありがとうございます。ご令嬢の皆様もお兄様方にお見送りしていただくのは嬉しそうで私も嬉しいわ。今日はね、可愛い迷子のウサギ様とお星様も参加されたのよ。まだあのかっこうしているかしら?それはそれは可愛かったわ。ふふ」
「え?それなに?」
とリゼル。
「ウサギ様ってもしかして、ルゼルがウサギ帽子かぶってるの?アロンが星になってるの?」
見たい!すぐ行く!リディラの思惑通りリゼルたちがソワソワし始めた。ウサギのルゼルは兄たちのツボなのだ。リディラのツボでもあるのだが…。
兄たち二人の足が邸に向いた時、二人の従者が花を抱えて戻ってきた。
「お兄様方、お花が来ましたわ。よろしく」
「あっ」
「うっ」
ルゼルのウサギ、見たい!お星様アロン見たい!だけどご令嬢方に花を手渡して初お茶会の思い出も妹のために作ってやりたい!ここは紳士たれ、ユリアン、リゼル。
二人は「あぁ、ルゼル、アロン、まだそのままでいてー」と思いながら、令嬢たちに「今日はリディラのためにありがとうございました」と美形スマイル満開で一人一人に花を手渡しては馬車までエスコートしていた。
エスコートする短い間に令嬢方が
「ありがとうございます。素敵なお茶会でした。リディラ様のセンスも、可愛い迷子のウサギ様たちも」
と言う。その度に「ウサギルゼル!星アロン!走って邸に行きたい!」と悶々とする兄たちだった。
最後の一人を見送ると、まるで今までの紳士ぶりが嘘のように
「走れ!ユリアン!」
「おう!」
と言って二人は邸に駆け込んだ。
リディラはそれを見て声を出して笑った。
ルゼルとアロンはリディラを守った大役に疲れて遅めのお昼寝をしていた。ルゼルはウサギのまま、アロンは星は取り外していたが、カニを抱きかかえて寝ていた。その姿を見た二人は
「お星様はカニになってたけど、ウサギルゼルは見られたな」とリゼル。
「ウサギルゼル久しぶりだけど、やっぱり可愛いよなー。あー、リオンもいたらなー」とユリアン。
この後、なんとなくリディラに叱られそうな気がする二人は、先に癒しを蓄えようと長い時間ウサギたちの寝顔を見ていた。それを更に「私も」と言ってリディラも入り、結局二人が起きるまで寝顔を眺める三人だった。
アトリエはリディラ、ユリアン、リゼルの作戦会議の会議室でもあり、リオンとルゼルの図鑑製作所でもあった。小さな椅子はリオンとルゼルが図鑑製作に来た時用、それにアロン用だ。アロンの椅子にはカニのカバーが付いている。クッションのお土産以来アロンはカニ好きになっていた。
「素敵なアトリエですね」
令嬢方はホゥとため息をつきながら眺めている。
「…こちらに、ユリアン様とリゼル様がお座りになるのですね?」
部屋の飾りを眺める令嬢の中で唯一エリィがキラキラした目で兄たちを話題にした。
「ふふ、そうですわ」
あえてどちらに誰が座るかは言わないでおく。エリィの本命はマグヌスだとリディラは知っている。兄たちを当て馬にする気はサラサラない。
ユリアンとリゼルのフレーズが出ると何人かの令嬢が赤くなる反応を見せた。やはりお兄様方は知られた存在なのだわとリディラは改めて思う。
池の金魚を眺め、そろそろお開きにしましょうとリディラが声をかけた時、学園から戻ったリゼルの馬車が入ってくるのが見えた。
早くない?とリディラ。確かに今日の様子をユリアンとリゼルに報告することになってはいたが、こんなに早い?
「リディラ!間に合ったようだね」
「やぁ、リディラ、お邪魔するよ」
き…きゃー。
令嬢方の声無き声が聞こえた気がした。
「お兄様、ユリアン兄様、おかえりなさいませ」
予定外の早い帰宅にリディラの目が少し怖かったが気付いたのはユリアンだけ。リゼルは可愛い妹の初めてのお茶会に間に合って満足に笑っている。ユリアンは後でリディラに叱られる覚悟をした。
「皆さん、今日はリディラのお茶会にようこそ。妹のためにありがとうございます」
リゼルは心から令嬢方にお礼を言っている。その後ろでリディラとユリアンが小さく会話している。
「ユリアン兄様、早くないですか?」
「うん。ごめん。実際直接令嬢方にお会いしたくなっちゃって。詳細もお叱りも後で聞くから」
お茶会を計画し始めた頃、『リディラがお茶会を開くらしい。それはリディラかリゼルの婚約者候補選出のためではないか』と社交界で噂になっていたことを知っていた。兄たちはお茶会を休日にして自分たちも参加すると言っていたのだが、二人が参加したら噂に信憑性が高まり面倒なことになりそうだった。余計な騒ぎにしたくないのであえて平日にしたのだ。だが、来てしまったものは仕方がないし、兄たちが気になっているのもわかる。
「仕方ありませんわね」
リディラは苦笑いで済ませた。
もう帰るという時だったので、ユリアンとリゼルは令嬢をそれぞれの馬車まで送ることにした。その時、リゼルが彼の従者ギンに「あれを」と言った。ギンとユリアンの従者は一礼して一旦下がった。
「あら、なぁに?」
とリディラが兄たちに小声で聞く。
「急に参加しちゃったし、リディラの初めてのお茶会だし、どうしても何かしたくなっちゃって、ユリアンと一緒に令嬢方にお花を渡そうと思って用意したんだ」
リゼルは照れたように笑った。
兄の気持ちは嬉しい。令嬢に紳士な兄たちは誇りだ。だがしかし!リディラのお茶会があまり話題になっては困る。リディラはあくまで可愛い弟たちの近い未来の安全のために開いたお茶会で、本来リディラは社交が苦手だ。このお茶会が話題になってしまったら今後やり辛い。開催する度に何か期待されそうだし、開催しなければしないで何か言われそうだ。考えただけで気が重いが、兄たちの気持ちもわからなくはない。だけど勝手をしてくれた制裁はしなくては。リディラは意地悪な気持ちで二人に言った。
「ありがとうございます。ご令嬢の皆様もお兄様方にお見送りしていただくのは嬉しそうで私も嬉しいわ。今日はね、可愛い迷子のウサギ様とお星様も参加されたのよ。まだあのかっこうしているかしら?それはそれは可愛かったわ。ふふ」
「え?それなに?」
とリゼル。
「ウサギ様ってもしかして、ルゼルがウサギ帽子かぶってるの?アロンが星になってるの?」
見たい!すぐ行く!リディラの思惑通りリゼルたちがソワソワし始めた。ウサギのルゼルは兄たちのツボなのだ。リディラのツボでもあるのだが…。
兄たち二人の足が邸に向いた時、二人の従者が花を抱えて戻ってきた。
「お兄様方、お花が来ましたわ。よろしく」
「あっ」
「うっ」
ルゼルのウサギ、見たい!お星様アロン見たい!だけどご令嬢方に花を手渡して初お茶会の思い出も妹のために作ってやりたい!ここは紳士たれ、ユリアン、リゼル。
二人は「あぁ、ルゼル、アロン、まだそのままでいてー」と思いながら、令嬢たちに「今日はリディラのためにありがとうございました」と美形スマイル満開で一人一人に花を手渡しては馬車までエスコートしていた。
エスコートする短い間に令嬢方が
「ありがとうございます。素敵なお茶会でした。リディラ様のセンスも、可愛い迷子のウサギ様たちも」
と言う。その度に「ウサギルゼル!星アロン!走って邸に行きたい!」と悶々とする兄たちだった。
最後の一人を見送ると、まるで今までの紳士ぶりが嘘のように
「走れ!ユリアン!」
「おう!」
と言って二人は邸に駆け込んだ。
リディラはそれを見て声を出して笑った。
ルゼルとアロンはリディラを守った大役に疲れて遅めのお昼寝をしていた。ルゼルはウサギのまま、アロンは星は取り外していたが、カニを抱きかかえて寝ていた。その姿を見た二人は
「お星様はカニになってたけど、ウサギルゼルは見られたな」とリゼル。
「ウサギルゼル久しぶりだけど、やっぱり可愛いよなー。あー、リオンもいたらなー」とユリアン。
この後、なんとなくリディラに叱られそうな気がする二人は、先に癒しを蓄えようと長い時間ウサギたちの寝顔を見ていた。それを更に「私も」と言ってリディラも入り、結局二人が起きるまで寝顔を眺める三人だった。
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