金に紫、茶に翡翠。〜癒しが世界を変えていく〜

かなえ

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第四章

閑話 リゼルは思う。弟妹がすごい。すごいったらない。〜リゼルは蟹を描くのが上手い

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 家族揃っての食事中に我が家で発売したポムポムホースの売り方について父上が行き詰まり感を話された。
 こういうところで変に見栄をお張りににならない父上が私は大好き。家族に対して真摯だなって思うし後継である自分が当主になったときのあるべき姿を見せてくださるから。
 そしてポムポムホースの楽しさを語るルゼルとアロンの愛らしさ。なんだよ、そのハシャギ方。「ぽむぽむ、すきー」「ねー」って。小首傾げたり、グーの手挙げたり…食事中のマナー違反だけど可愛さで誰も指摘できない。する必要ないし。むしろ可愛さを召し上がれって感じだよ。アニューレは遠慮なくいただきます。
 さらに出ました。リディラ。父上にダメ出しするのかな?「足りませんわ」出た。ダメ出し。リディラが父上と難しい話をすることは、見ている家族にとってなんだか楽しい時間なんだよな。会話のテンポが良い。それも父上が聞き上手だからだと思う。父上って本当に尊敬できる。
 そしてリディラ。とっても賢い。勉強がとかじゃなくて(多分学園に入学したら勉強もできるはずと思ってる)発想が賢い。なるほどって思うことを沢山言う。しかもそれを自慢げにしない。ハッキリ言うけど小馬鹿にはしない。そこが良い。センスも良い。声も良い。可愛い。
 広告を貼る場所なんて自分は考えたこともなかった。
 そういえば、リディラが「好きなもの図鑑」で「お気に入りの小物図鑑」を作ったのを見たけど凄かったな。「このリボンの手触りが好き。同じ形のブローチもあればセットでお洋服につけたりバッグにつけたりして楽しみ方が増えそう」とか「この小物入れの色と形が好き。サイズ違いを並べるとインテリアにもなりそうだし、壁紙や家具の色と合わせられるならもっと素敵」とか…これが好き、だけじゃなくて、こうならもっと楽しめるって発想力が溢れていた。もちろん父上は開発できそうなものはすぐに商品化していたよ。
 で、今は広告の貼り場所か。広告はなんとなくしか見てなかったけど、確かにどこに貼るかって大事なことだよね。しかも買う気のない人にも買いたい気にさせる場所や内容か。
 …で、なんで母上の釣り書き?なんで父上が母上の縁談を断ったことをリディラが知ってるの?ていうか、父上、母上をお断りしていたの⁉︎うわぁ…もしかしたら私たち兄弟は生まれない世界があったかもしれないんだ…何かを決めるって大事なことなんだな。今日はいろんな大事の発見があるな。
 ここで私の出番。ルゼルに釣り書きとは何かを教える。と、すぐさまルゼルがリディラの言わんとしたことを察知した様子。は?どういうこと?私には全然わからない。そしてルゼル「アネーレ」って言いかけて「アネー…上」って言った。一瞬「はわっ」の顔になったぞ。あの顔がまた可愛いんだよなぁ。
 なるほど、本物か写真の利用か。いや、待て待て待て待て、釣り書きの話だけでリディラの考えを理解したの?それも凄いし、発案者のリディラも凄い。私の弟妹凄すぎない?嫉妬とかより感心が先に来ちゃう。二人を追い抜こうとかより二人に恥じない兄になろうとしか思わない。
 これから先、きっと私は弟妹たちより出来が良くない後継と言われたりするんだろうな。でも全然平気。それは事実だし、弟妹は可愛いし、何より母上が「リゼルがとっても可愛かったからもっと子どもが欲しいねって父上とお話してリディラたちが生まれたのよ。リゼル、私の一番始めの可愛い子ども」って言ってくださってる。私には私の役目があるってこと。

 充実の食事が終わって部屋に戻る途中、アロンが小走りにやってきた。転ばないでねアロン。まだハラハラしちゃうよアニューレは。
 「あにゅーれ、かにさん、かきかき、おねましゅ」
 少しかがんで目線を合わせようとしたけどまだ私の方が大きい。キラキラの青い目で見上げるアロン。これまた可愛い弟だ。
 アロンは蟹が大好きなんだけど、まだお絵描きができない。それで色んな人に蟹を描いてもらってるんだけど、私の描く蟹が一番好きなんだって。そんなの可愛すぎない?
 「今日はどんな蟹さんが良い?」
 「ぽむぽむ、かにさん」
 ポムポムホースで遊ぶ蟹か。なかなかに難問。だけど期待に応えよう!

 ね、私の後継としての役目はこれなんだよ。弟妹より賢くなくても良い。健康でそこそこ家を維持させられて、弟妹たちがやりたいことを実現させられるようにすること。これが私の役目。
 取り急ぎは蟹さんを上手に描くこと。

 「アロン、色鉛筆と紙を取りに行こうか」
 「あいっ」
 アロンが笑った。つられて自分が笑うのもわかった。
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