ライトレシリーズ

イレイザー

文字の大きさ
1 / 2

鳥 屋上 親愛なる

しおりを挟む
   翼を広げる。風を切る音が鳴る。自分の鼓動のみを感じ、他は無に等しくなる。木々や電車、人々が流れるように過ぎる。私の目はそれを捉え、まるで映画のコマドリのようにそれを眺める。あっ、獲物。

   私は鳥だ。別に最近よく見る転生もので、人間から鳥になったわけではない。私は生粋の鳥だ。
   暗い、暗い殻を破り、この世に初めて生を受け、産声を上げた時、私の目の前には親愛なる母鳥がいた。後ろには父鳥がいた。
   「おかーさん!おとーさん!」
   私はピーチクパーチク鳴いた。
   「生まれて来てくれてありがとう。」
   母鳥と父鳥の暖かな笑顔に迎えられた私はスクスクと順調に育っていった。
   父鳥からは、餌の取り方や飛び方など、私がこの自然界で生き残るための手段を、そして母鳥からは愛情を教えてもらった。
   いくつかの季節を繰り返し、私は親離れすることになった。
   「忘れ物はない?そうよ。特に車には気をつけなさいよ。」
   母鳥が柔らかい表情を見せつつ私を心配してくれる。生まれた時から一切変わることのないその笑顔に安心と寂しさを私は感じる。
   「強く生きるんだぞ。」
   父鳥は涙目だ。
   「わかってる。今までありがとう。おとうさん、おかあさん。」
   私は強く羽ばたいた。風を切る音が鳴る。おとうさんとおかあさんの姿がみるみる小さくなる。
   私は空を飛ぶ。自由になる。いや、きっとそう、私は生まれた時から自由だった。

   私が親離れしてからまたしばらくいくつかの季節が過ぎた後、出会った彼女と結ばれ、幸せな毎日を過ごしている。
   巣はある学校の屋上の片隅に作った。昼休みは人が多いし、一日を通して人が多い珍しい屋上だったのでここに決めた。しかも人間がよく私たちに餌をくれるからね。
   今は彼女と私たちの間にできた二羽の子供が生まれてくるのを待っています。
   そうです。私は燕です。

   桜が咲き始め、暖かな空気が流れてくるようになりそろそろ飛ぶには辛い季節も終わりそうです。
   この前、二羽の息子が親離れしたばかりで、私たちは今は暇です。今度でも息子の子育て奮闘記の話でもしましょうか。いえ、ちょっとばかり急用が入ったので今は話せません。
   では、またいつかどこかで。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...