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第3話
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ある日の夜、一匹の猫が人気の無い夜道を、満月の明かりを背に浴びながら悠々と歩いていた。その猫はタナカという家で大事に飼われている猫だった。猫は黒い毛並みをした自分の身体を夜風を浴びることで退屈な夜の時間をやり過ごそうとしていた。
街灯が等間隔に並んでいる。三つ目の街灯の真下で何かが丸まっていた。猫はそれにゆっくり近づく。
それは近所のオオツカさんの家で飼われている茶色の毛並みをした知り合いの猫で、オオツカさんからチビという名前を付けられていた。猫が近づいてもチビは動かずに丸まっている。
チビの身体は血で染まっていた。一直線に割かれた腹を街灯が怪しく照らす。チビは死んでいた。猫にはどうすることも出来ない。
チビが目の目で死んでいたことに気を取られ、ギリギリまで、人間が近づいていたことに気がつかなかった。
猫が気配に気づき、振り返った瞬間に腹部に衝撃が走り、宙に浮いた。猫は街灯にぶつかり、チビを下敷きにして倒れた。その衝撃でくちゃりとチビの内臓が腹から溢れ出る。
血の匂いに混ざって、男の匂いがした。猫は力を振り絞り、男の左腕を爪で引っ掻いた。男は多少怯んだ様に見えたが、すぐに猫に近づき、注射の針を猫に刺した。猫は身体の力が抜けるのを感じる。
男はぐったりした猫を見て不敵な笑みを浮かべている。男は猫を持ち上げ、仰向けにする。力が入らずダランとした腕も整える。
猫は身体には力は入らないが、目は普通に動く。男は黒いパーカーでフードを被っていて、さらにマスクをつけていたのでどんな顔をしているのかは分からない。猫の真上には満月が浮かんでいる。
男はポケットからナイフを取り出した。猫は今すぐにでも逃げ出したかったが、やはり身体は動かない。きっとチビのこともこの男がやったのだろう。猫はようやく自分に降りかかる危機を察知する。だが声が出ない。
男がナイフを猫の腹に突き刺す。猫は声にならない悲鳴をあげる。身体は燃えるように熱く、何も考えることができない。下にはもう既に息をしていないチビが、上には猫達をを照らし出す街灯が、さらにその奥に浮かんでいる満月が、遠のいていく。
そして死んだ。
街灯が等間隔に並んでいる。三つ目の街灯の真下で何かが丸まっていた。猫はそれにゆっくり近づく。
それは近所のオオツカさんの家で飼われている茶色の毛並みをした知り合いの猫で、オオツカさんからチビという名前を付けられていた。猫が近づいてもチビは動かずに丸まっている。
チビの身体は血で染まっていた。一直線に割かれた腹を街灯が怪しく照らす。チビは死んでいた。猫にはどうすることも出来ない。
チビが目の目で死んでいたことに気を取られ、ギリギリまで、人間が近づいていたことに気がつかなかった。
猫が気配に気づき、振り返った瞬間に腹部に衝撃が走り、宙に浮いた。猫は街灯にぶつかり、チビを下敷きにして倒れた。その衝撃でくちゃりとチビの内臓が腹から溢れ出る。
血の匂いに混ざって、男の匂いがした。猫は力を振り絞り、男の左腕を爪で引っ掻いた。男は多少怯んだ様に見えたが、すぐに猫に近づき、注射の針を猫に刺した。猫は身体の力が抜けるのを感じる。
男はぐったりした猫を見て不敵な笑みを浮かべている。男は猫を持ち上げ、仰向けにする。力が入らずダランとした腕も整える。
猫は身体には力は入らないが、目は普通に動く。男は黒いパーカーでフードを被っていて、さらにマスクをつけていたのでどんな顔をしているのかは分からない。猫の真上には満月が浮かんでいる。
男はポケットからナイフを取り出した。猫は今すぐにでも逃げ出したかったが、やはり身体は動かない。きっとチビのこともこの男がやったのだろう。猫はようやく自分に降りかかる危機を察知する。だが声が出ない。
男がナイフを猫の腹に突き刺す。猫は声にならない悲鳴をあげる。身体は燃えるように熱く、何も考えることができない。下にはもう既に息をしていないチビが、上には猫達をを照らし出す街灯が、さらにその奥に浮かんでいる満月が、遠のいていく。
そして死んだ。
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