転生者とバグでない異世界人の物語

neko

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11.旅立ち

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 春になった。雪もすっかり溶けて、新芽が芽吹き、辺りが日一日と緑が増してくるようになった。ハルトは家族に、「6歳になると冒険者登録ができるので、スキル授けの儀式が終わったら、家を出て、テー公爵領都に行って冒険者になる。」と言った。父親は何も言わなかったが、母親は「まだ早い。もう少し大きくなってからでもいいのではないか。」と言った。しかし、「俺の決意は変わらない。ポーションも作れるし、たぶん、このまま冒険者になっても、やっていけると思う。それにゴンも冒険者になる、と言っている。」と言ったら、しぶしぶ了解してくれた。妹たちには泣かれた。「麦用の栄養剤は領都で作って後で届ける。」と言った。昨年はこの栄養剤で我が家の麦の収穫量がいつもの年の1.5倍で、村の人からはすごく不思議がられた。たまたまということで、ごまかしている。こんなことがばれたら、俺の時間が無くなってしまう。麦用の栄養剤は我が家だけの秘密である。
 次の日の朝、俺は村の外れまで来た。今日は村長が村を出ていく子たちをまとめて荷馬車で領都まで送ってくれる。領都に行くのは、今回村を出ていく俺より2つ上の子が2人、1つ上が2人、同じ年の子が俺、ゴン、マリーの3人計7人、それに、荷馬車の御者と護衛の村の大人が2人の計10人である。
 ゴンは剣士だし「先輩に誘われている。」と言っていたので、当然と思ったが、マリーは意外だった。それで聞いてみた。そしたら「うち水魔法だったでしょ、生活魔法なら村でも嫁に行けたかもしれないけど。それで私も領都に行ってみようかなと思って、領都にはお兄ちゃんがいるし、領都に来たら面倒見るって言われたから。」やはり、人それぞれに事情があるようだ。狭い村、これ以上の人は養えない。あぶれた人間は領都に行くしかない。5年後、10年後にいったい何人が生き残っているのかな。何となく切なくなってきた。
 それにしても荷馬車とは、なんと乗心地の悪いことか。なまじっか前世の記憶があるだけに余計つらく感じる。何とか気を紛らそうと遠くを眺める。村から出るのは初めてなので新鮮ではあるのだがこうガタガタ揺れると、おしりも痛くなってくるし、やはり気持ちが悪くなってくる。
 「そろそろ限界かな」と思った時に休憩となった。道端に座って、ほっとして周りを見た。途中小さな川を越えたから多分隣村に入っていると思うが、辺りは一面の麦畑でその中に道がまっすぐ続いている。正直言ってうちの村と変わらない。でも、遠くを見ると、みなみの山が少し遠くに見えるから、やはりうちの村じゃないのだなと思う。
 それでも夕方には領都についた。テー公爵領、領都。城門のところで順番待ちをしているとき、高い城壁を見て、「ここに一体どれくらいの人が住んでいるのか。」と思った。前世の記憶があるから都市と言っても小さいとは思うが、それでも、俺の住んでいたコー村と比べると大都会だと思う。前世の記憶では、確か、中世ヨーロッパの都市の人口はパリでさえ、5~15万人で、それ以外だとフィレンツェやベネチアで5~10万人、普通は大きくても1~2万人ぐらいだったはず。この世界がそれに当てはまるかどうかわからないが、たぶん1~2万人ぐらいかな。そんなことを考えていたら、冒険者ギルドについた。どうも俺が考え事をしている間に着いたようである。確かに、冒険者登録すれば冒険者カードが身分証明書代わりになるから、そこまで村が面倒を見てくれるようだ。ありがたいことだ。
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