先輩を追いかけて東京に行こうとしたら京都大学を目指していた件

鷹橋渚

文字の大きさ
14 / 25

さらば、東京

しおりを挟む
止まっていた白のメルセデス・ベンツに千鶴と麻琴は乗り込んだ。

「お帰りなさいませ、麻琴様。今回は大変な想いをされましたね。お悔やみ申し上げます。お嬢様。旦那様と奥様が沖縄でお待ちかねでございます。午後の航空機をいくつか抑えております。羽田までお送りいたします。」

彼女は麻琴を横目に初老の運転手を指した。

飛鳥あすかって言うの。本名よ。クスリで逮捕された芸能人みたいでしょう?」

「いや、それを言うなら、奈良地方にある古墳でしょ?」

二人は互いの指を絡み合わせ笑い合った。

「このジジィを弄らないで下され。これでも千鶴様のオムツを代えた経験もございます。私はお嬢様を娘のように慕っております。それより千鶴様。お御髪が乱れておりますぞ。男性の前ではしたない。」

「はっ!」

彼女は焦ったように思わず頭に両手を持って行き、髪を整えようとした。

「嘘でございます。冗談でございます。先程、お嬢様は麻琴様の手解きでレディになられたのですね。長い道程でございましたね。」

飛鳥は白く蓄えた髭を触るのを止めてニヤニヤすると白いメルセデス・ベンツを発進させた。

「飛鳥・・・飛鳥の考えているような事はなかったわ。ね、麻琴。」

麻琴も大きく頷いた。再び二人は指を絡ませていた。

「信じますとも、この飛鳥、口だけは非常に堅いと言われております。お嬢様に何があったとしても旦那様には何も申し上げません。東京に出てきたのも大学の下見と参考書選びとしっかり申し上げて置きました。」

麻琴と千鶴は眼を合わせて大声で笑った。

「それが、見え透いた嘘なのよ。飛鳥。大学の下見と参考書選びに二週間もかかると思う?お父様は全部、お見通しよ。オトコよオトコ。薄々気付いているはずよ。お父様もお母様も。仕方ないな。ホントの事を言うわ。飛鳥。私、麻琴と最後まで、シなかったのよ。」

「笑っちまう。する、あと一息の所で、夜勤の看護師と日勤の看護師が交代で挨拶に来るんだもんな。」

「あたしたち、全裸っぽかったもんね。すごく、恥ずかしかった。看護師二人ドン引きしてて怒ってたし。」

「当たり前だ!病室をホテル代わりに使おうとしたんだからな。」

「でも、あの時、私達、どうすればよかったのっ!どっちもガマンできなかったでしょっ?特に麻琴が!」

「なんだよ。自分だって下からダラダラだったぜ。」

「もう、恥ずかしいから言わないで。心は決まってたんだから。」

「お嬢様は身体は差し上げなくとも、精神こころは全て骨抜きにされたようですな。ワッハハハハハハハ。麻琴様は幸せなお方だ。この飛鳥、二人のお気持ちしかと確かめましたよ。」

「もちろんよ。ね、麻琴。」

「な、ちづ。」

麻琴は去り行く東京の景色を眺めていた。二週間。梨沙を忘れるには充分な時間だった。身体の痛みが梨沙への嫌悪と怒りを思い出させる。もう、梨沙とは会うこともない。終わったんだ。これからは、千鶴と過ごして行く。彼女の無償の愛にこちらも絶対に答えなければならないと彼は心に誓った。

さらば、東京・・・

『そして、麻琴様は真栄城家の血脈ブラッドに翻弄されることになる・・・か?』

カッカッカッカッカッカッ!飛鳥は前を向いて運転しながら高笑いを始めた。

「何よ!ジジィ!気持ち悪いなぁ~」

後部座席から千鶴が飛鳥の頭を思い切り叩いた。

「あうっ!ありがたき幸せ!」

「何よ!ドM!急ぎなさい!私達、後ろでキスしたいから。ね?麻琴?」

「え?そうなの?ガッつくなぁ・・・」

「ダメなの?連れないなぁ・・・絶対、離さない。絶対よ。」

再び、さらば、東京・・・

麻琴は今日の東京にサヨナラのキスをした。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...