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53話 様子見 その1
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「しかし、最近は本当に行ったり来たりでエステルには申し訳ないな」
「いえ、とんでもないことでございます、レヴィン様」
例の襲撃から3日……私とレヴィン様は馬車に乗り、リンバール王国の首都トロメアを目指していた。確かにレヴィン様の言う通り、最近はせわしなく移動しているような気がする。でも、それも必要あってのことなのだから仕方ない。私もシャラハザード王国の一員という自覚があるのだから。
さて、今向かっているのは私とレヴィン様、ルールーの3名。他にも護衛を務める魔導士が合計で10名ほどいるけれど。
「執政官のウィル・ターナー様はご無事なんですか?」
「ああ、そちらは問題ないようだ。血相を変えて彼らが戻って来たようだから驚いてしまったと言っていたか」
執政官のウィル・ターナー様は護衛と一緒にリンバール王国の中心地であるサンマル宮殿内に居るらしい。時々、魔法で交信をしているルールーの姿を見る時があった。ウィル様からすれば、とても驚いたことだろうと思う。リキッド様なんて憔悴しきったように戻って来ただろうから。フレデリク国王陛下の表情も大体、想像がつく。
「場所は確か、首都トロメアの東の郊外に位置するんだったな? エステル」
「はい、レヴィン様。アウルコーン学院とは言っても、孤児院というか修道院というか……学校施設とは思えないような建物です。孤児の運動用に敷地面積はそれなりに広いですが」
「今回は様子見として行くけど、エステルより総合順位が高かった人が居たんでしょ?」
「え、ええまあ……」
「気になるわね……もう、住んでいるとは思えないけどさ」
確かに……あれから2年経過しているしね。常に50人以上の孤児は居たはずだけど、総合順位の人の名前は確か……。
「シジルだったと思います。そう、1位の人の名前はシジル・ボールドウィン」
「シジル・ボールドウィンか……聞かない名前だな。男性ということでいいのか?」
「はい、ちなみに3位の人の名前はアメリア・ウィンドゥです。こっちの人は……」
「あら、あんまり良い思い出がない?」
私は素早く頷いた。あまり良い思い出がないどころか、うるさくて仕方のない人だったし。なにかと私のすることに挑戦している印象も受けた。あれはひょっとして、総合順位で上に行く為だったのかもしれないわね。
逆にシジルとの面識や会話はほとんど記憶になかった。本当に話した記憶がなかったりする。う~ん、同じ孤児院で過ごしていて、そんなことあるかな? まあ、アイン・ロードのこともほとんど知らなかったけど、シジルは1位の人なんだし。なんだか不思議な感じだった。
「見えて来たか、あれがそうだな?」
「はい、そうです」
本当に久しぶりな感じがする……私が孤児として何年も暮らしていた孤児院、アウルコーン学院。そんな元我が家は、もう目の前に迫っていた。
「いえ、とんでもないことでございます、レヴィン様」
例の襲撃から3日……私とレヴィン様は馬車に乗り、リンバール王国の首都トロメアを目指していた。確かにレヴィン様の言う通り、最近はせわしなく移動しているような気がする。でも、それも必要あってのことなのだから仕方ない。私もシャラハザード王国の一員という自覚があるのだから。
さて、今向かっているのは私とレヴィン様、ルールーの3名。他にも護衛を務める魔導士が合計で10名ほどいるけれど。
「執政官のウィル・ターナー様はご無事なんですか?」
「ああ、そちらは問題ないようだ。血相を変えて彼らが戻って来たようだから驚いてしまったと言っていたか」
執政官のウィル・ターナー様は護衛と一緒にリンバール王国の中心地であるサンマル宮殿内に居るらしい。時々、魔法で交信をしているルールーの姿を見る時があった。ウィル様からすれば、とても驚いたことだろうと思う。リキッド様なんて憔悴しきったように戻って来ただろうから。フレデリク国王陛下の表情も大体、想像がつく。
「場所は確か、首都トロメアの東の郊外に位置するんだったな? エステル」
「はい、レヴィン様。アウルコーン学院とは言っても、孤児院というか修道院というか……学校施設とは思えないような建物です。孤児の運動用に敷地面積はそれなりに広いですが」
「今回は様子見として行くけど、エステルより総合順位が高かった人が居たんでしょ?」
「え、ええまあ……」
「気になるわね……もう、住んでいるとは思えないけどさ」
確かに……あれから2年経過しているしね。常に50人以上の孤児は居たはずだけど、総合順位の人の名前は確か……。
「シジルだったと思います。そう、1位の人の名前はシジル・ボールドウィン」
「シジル・ボールドウィンか……聞かない名前だな。男性ということでいいのか?」
「はい、ちなみに3位の人の名前はアメリア・ウィンドゥです。こっちの人は……」
「あら、あんまり良い思い出がない?」
私は素早く頷いた。あまり良い思い出がないどころか、うるさくて仕方のない人だったし。なにかと私のすることに挑戦している印象も受けた。あれはひょっとして、総合順位で上に行く為だったのかもしれないわね。
逆にシジルとの面識や会話はほとんど記憶になかった。本当に話した記憶がなかったりする。う~ん、同じ孤児院で過ごしていて、そんなことあるかな? まあ、アイン・ロードのこともほとんど知らなかったけど、シジルは1位の人なんだし。なんだか不思議な感じだった。
「見えて来たか、あれがそうだな?」
「はい、そうです」
本当に久しぶりな感じがする……私が孤児として何年も暮らしていた孤児院、アウルコーン学院。そんな元我が家は、もう目の前に迫っていた。
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