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【裏】
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【63】の裏です。
「おま、片山って……え? マジかよ、」
はったりが崩れて思わず素が出れば、池田は満足気に頬を緩めた。
池田が数年来狙っていた相手が、あの片山の弟?
信じられない。
……けど、それならどこで知り合ったかなんて聞かずとも分かる。
片山の店だ。
池田は車検から整備から、自分でするには面倒なことは大抵あの店に任せている。
高校から単車を乗り回していた池田が、店に通うついでに弟を見かけ、目をつけたのだといわれれば納得が出来る。
けど、よりにもよって何であの片山の弟なんだ。
混乱して頭の方が追いつかない。
「あの……兄ちゃ、兄貴と知り合いなんですか?」
宙に浮かせた指をうろうろと彷徨わせていれば、弟……涼二がどこかおどおどと話しかけてきた。
目が泳いでいる割に口調がはっきりしていることから、漸く本当に片山の弟なんだと納得しかけた。
伸ばされた背筋、はっきりと喋る口、目鼻立ちはさっぱり似ていなくとも、何気ない雰囲気が似ているといえば似ている。
「や、知り合いっていうか……まあ、そんな感じ」
「親友だよな?」
どの面下げて、あいつと「親友」だよな、なんていえるんだか。
からかう口調の池田を一度睨み、詰めていた息を吐き出すと、肩からどっと力が抜けた。
とんでもないことに巻き込まれそうな予感に、逃げ出せと頭の中で警鐘が鳴り響く。
「池田……お前よりにもよって片山の身内に手出したのか」
「そう。だからお前味方に付けとこっかなって思ってさ」
涼二の体調を見てくれと。
そういった池田の言葉に嘘はなかっただろう……が、多分奴の本当の目的はこっちだ。
今後何かしらの事態が起こったときに、巻き込むつもりで引き合わせたんだろう。
確かに、あの片山の相手に一人じゃ分が悪い。
俺に白羽の矢が立った理由も……何となく、分かる。
分かりはするが、はっきり言って迷惑だ。
出来ることなら俺は極力片山には関わり合いになりたくない。
あいつの目は強すぎて、視線一つでコンプレックスを突付きまわされる。
あの目ともう一度向かい合うには相当の気力が要る。
それなのに、平然と巻き込もうとしてくる池田が恨めしい。
一体どういうつもりだ、という目を向けても、池田は微笑むばかりで意図ある反応を見せようとしない。
懐かない猫のようだと誰かが昔言ったその面影は跡形なく消え、まるきり飼い猫の様相で隣の小さな身体に擦り寄っている。
こんな池田を見るのは初めてだ。
失敗したくさいとへこんでいたくせに、隣に小さい身体が大人しく座っていることが嬉しくて堪らないとでもいわんばかり。
「ちょっとタンマ!」
と、目の前から湧いた悲鳴で思考が途切れた。
ぎょっとしたように目を剥いた涼二の視線が、真っ直ぐこちらに向けられてくる。
それに驚き目を瞠れば、涼二の隣で池田も目を丸くさせていた。
一番に状況を把握したのは、池田だった。
瞬き一つで表情を切り替え、
「あの、俺ちょっと用事を思」
「待て待て待て」
唐突に腰を浮かせかけた涼二の腕をすかさず掴む。
顔面に張り付かせた笑みがこの上なく胡散臭くて気味が悪い。
同じように感じているのか、引き止められる涼二の方も抵抗をやめない。
笑顔のままの池田に片腕で繋ぎとめられている所為か、本気で抵抗しているようには見えにくいが……池田の腕力握力の強さは俺も知っているから、多分涼二は本気で抵抗しているんだろう。
猫に尻尾を押さえられたねずみみたいに見えるけど。
「離せよ玖朗。俺は行かないといけない」
「こんな時間にどこ行く気だよ、ドラえもん」
「……」
「泣いてねだったって表札なんか買ってやんないぞ」
意味の分からない言葉の応酬の後、涼二の動きがぴたりと止んだ。
どこか恨みがましい目を向けられてくるのに、池田は全く動じていない。
「離せって。おかまになったなんてばれたら兄貴に殺される。もうクローゼットに住むしかない。表札なんてなくてもいいよどうせ誰とも会わないし」
「まあまあ、落ち着けって。ヒナ」
すっかり蚊帳の外の気分で傍観していたところに名前を呼ばれ、一息遅れたタイミングで顔を上げる。
捕らえる場所を手首から二の腕に変えた池田が手を引けば、巻き戻されるヨーヨーみたいに涼二の身体が尻からソファに戻る。
「いってえ!」
悲痛な悲鳴に、池田はただ笑うばかりだ。
先刻までの心配は微塵も見えない。
多分、これが池田が涼二の前で徹底している態度なんだろう。
小さな身体を腕の中に捕まえて、池田がこちらに目を向けてきた。
「ご覧の通り、政一の弟にしては可愛げがあるっていうか……単純なところは一緒っていうか、思い込みが激しいっていうか、そんな奴だから、お前よろしくしてやってよ」
そういうのの相手、得意だろ、と。
それは、圭のことを言っているんだろうか。
ふと頭に浮かんだ能天気な面影に、勝手に目が据わる。
池田は風呂場で、長年狙っていた標的に手を出し失敗したと言っていた。
手を出された標的は挙動不審で、おかまになったと騒ぎ立てている。
真っ当な子供が男に手を出されりゃ、そんな風に考えてしまう気持ちは……まあ、分からないでもない。
おかまとゲイの違いも分かっていないんだろうからな。
池田の「よろしくしてやってくれ」は、多分そういう意味だ。
「……何となく、言わんとしてることは分かったよ」
どっと疲れた気分でソファに身を沈める。
言わんとしていることは分かったが……どうして俺に白羽の矢が立ったのかも想像出来るが……なんとも憂鬱な「お願い」だ。
体調を見てくれの申し出は嘘じゃないんだろうが、本当の目的はこっちだ。
池田がこの子供を、片山の弟を手に入れるための手助けをしろと。
今はまだ良い、けれどもいつかあいつにばれた時に、手を貸せと。
そういう意味だ。
無言の頼みを、出来ることなら退けたい。
けど、池田にはとんでもない借りがある。
それを返すのだと思えば……容易、くはないけど、まあ良いだろう。
こんな日が来るとは思ってもいなかった。
池田が自分から誰かに頼みごとをする日が来るなんて、想像もしていなかった。
だから、あの時の借りはもう一生返せないんだと思っていた。
何度か抱かせてやった程度では到底返した気にもなれないような、大きな借りだ。
けど。
池田の方からその機会を提示してくるなら、乗らなければ嘘だろう。
観念したのがばれたのか、池田が満足気に笑う。
それを疲れた気分で見返した。
「ヒナ、お前からも言ってやってよ。こいつ、俺に抱かれたから自分はおかまになっちまったってすげえ落ち込んじゃって、すっかり情緒不安定なんだよ。別にそんな風には見えねえっつってんのに、なあ?」
「……」
自分の所為だというのに、酷い態度だ。
こんなのに目を付けられたこの子が気の毒でならない。
小さな身体は良いように操られて、今や完全に池田の膝に乗り上げている。
おかま、なんて単語に、目が不安そうに揺れている。
何の知識もない子供を一人放り出すのは……そうだな、流石に心が痛む。
「別に、そんな風には見えないけどな」
「うそだ」
励ます言葉に、意外な反論があった。
思わず目を瞠れば、反射的に向けられただろう視線が、また惑うように地に落ちる。
「じゃ、じゃあ……何で分かったんですか……玖朗がその、俺に手、手出したとか……普通に考えたら、ぱっとみて分かるはずがない」
掠れた声の問いかけに、咄嗟にどう答えたものか分からなかった。
まさか風呂場で既に聞きました。
お前、ずっと前から狙われてたんだよと、犯人を目の前に密告するわけにもいかない。
膝の上で項垂れる涼二を、まるで飼い猫にするように池田がのんびり撫でている。
諸悪の根源のくせに随分な態度だ。
仕方なしに嘆息、ソファに身体を埋める。
「……痕だよ」
正直、こういうのを指摘する野暮はしたくない。
けど、何かしら理由がなければ納得できないというのなら、仕方がない。
「あと?」
「身体中に山ほどキスマーク付いてりゃ、嫌でも気付くだろ。おかまとかそういうのは関係ない」
飲みかけのビールの缶をテーブルに置くついでのように、痕の残る箇所をさり気なく指で追えば、
「キスマー……、ッ!」
鸚鵡返しに呟きかけた声が、息を呑む音で止まった。
全く気付いていなかったらしいその反応にも驚きだが、手当たり次第あちらこちらに痕を残した池田の気も知れない。
途端に羞恥に襲われたのか、両手が首元を隠しているけどもう遅い。
行為の証の指摘にしては、これ以上のものはないだろう。
野暮だけど。
「じゃ、俺、おかまみたいには見えないですか……」
「見えないよ」
「……よかった」
ほっと項垂れて呟く声に、しょうがないなと自然に思えた。
こいつは、よりにもよってあの片山の弟で。
まだ子供で。
俺が世話を焼く義理なんてどこにもないけど。
これだけ単純そうなのを野放しにしておいたら、一体どこへ向かって行ってしまうか分からない。
池田を受け入れるにしても受け入れないにしても、ちょっと手綱を握っておくくらいならどうということはない。
よりにもよってあの片山の弟だからこそ。
まだ子供だからこそ。
一歩前から手を引く誰かが必要なんだろう。
池田がそれを俺にというのなら、もう仕方がない。
「大丈夫、どこからどう見ても普通の中学生にしか見えない」
これが世話焼きの第一歩だとばかりにだめ押しの一言を吐くなり、涼二ががっくり項垂れた。
と同時に、池田が吹き出すのを堪え掌で口許を覆う。
「……高校生です」
そういうことは、先に言え。
「おま、片山って……え? マジかよ、」
はったりが崩れて思わず素が出れば、池田は満足気に頬を緩めた。
池田が数年来狙っていた相手が、あの片山の弟?
信じられない。
……けど、それならどこで知り合ったかなんて聞かずとも分かる。
片山の店だ。
池田は車検から整備から、自分でするには面倒なことは大抵あの店に任せている。
高校から単車を乗り回していた池田が、店に通うついでに弟を見かけ、目をつけたのだといわれれば納得が出来る。
けど、よりにもよって何であの片山の弟なんだ。
混乱して頭の方が追いつかない。
「あの……兄ちゃ、兄貴と知り合いなんですか?」
宙に浮かせた指をうろうろと彷徨わせていれば、弟……涼二がどこかおどおどと話しかけてきた。
目が泳いでいる割に口調がはっきりしていることから、漸く本当に片山の弟なんだと納得しかけた。
伸ばされた背筋、はっきりと喋る口、目鼻立ちはさっぱり似ていなくとも、何気ない雰囲気が似ているといえば似ている。
「や、知り合いっていうか……まあ、そんな感じ」
「親友だよな?」
どの面下げて、あいつと「親友」だよな、なんていえるんだか。
からかう口調の池田を一度睨み、詰めていた息を吐き出すと、肩からどっと力が抜けた。
とんでもないことに巻き込まれそうな予感に、逃げ出せと頭の中で警鐘が鳴り響く。
「池田……お前よりにもよって片山の身内に手出したのか」
「そう。だからお前味方に付けとこっかなって思ってさ」
涼二の体調を見てくれと。
そういった池田の言葉に嘘はなかっただろう……が、多分奴の本当の目的はこっちだ。
今後何かしらの事態が起こったときに、巻き込むつもりで引き合わせたんだろう。
確かに、あの片山の相手に一人じゃ分が悪い。
俺に白羽の矢が立った理由も……何となく、分かる。
分かりはするが、はっきり言って迷惑だ。
出来ることなら俺は極力片山には関わり合いになりたくない。
あいつの目は強すぎて、視線一つでコンプレックスを突付きまわされる。
あの目ともう一度向かい合うには相当の気力が要る。
それなのに、平然と巻き込もうとしてくる池田が恨めしい。
一体どういうつもりだ、という目を向けても、池田は微笑むばかりで意図ある反応を見せようとしない。
懐かない猫のようだと誰かが昔言ったその面影は跡形なく消え、まるきり飼い猫の様相で隣の小さな身体に擦り寄っている。
こんな池田を見るのは初めてだ。
失敗したくさいとへこんでいたくせに、隣に小さい身体が大人しく座っていることが嬉しくて堪らないとでもいわんばかり。
「ちょっとタンマ!」
と、目の前から湧いた悲鳴で思考が途切れた。
ぎょっとしたように目を剥いた涼二の視線が、真っ直ぐこちらに向けられてくる。
それに驚き目を瞠れば、涼二の隣で池田も目を丸くさせていた。
一番に状況を把握したのは、池田だった。
瞬き一つで表情を切り替え、
「あの、俺ちょっと用事を思」
「待て待て待て」
唐突に腰を浮かせかけた涼二の腕をすかさず掴む。
顔面に張り付かせた笑みがこの上なく胡散臭くて気味が悪い。
同じように感じているのか、引き止められる涼二の方も抵抗をやめない。
笑顔のままの池田に片腕で繋ぎとめられている所為か、本気で抵抗しているようには見えにくいが……池田の腕力握力の強さは俺も知っているから、多分涼二は本気で抵抗しているんだろう。
猫に尻尾を押さえられたねずみみたいに見えるけど。
「離せよ玖朗。俺は行かないといけない」
「こんな時間にどこ行く気だよ、ドラえもん」
「……」
「泣いてねだったって表札なんか買ってやんないぞ」
意味の分からない言葉の応酬の後、涼二の動きがぴたりと止んだ。
どこか恨みがましい目を向けられてくるのに、池田は全く動じていない。
「離せって。おかまになったなんてばれたら兄貴に殺される。もうクローゼットに住むしかない。表札なんてなくてもいいよどうせ誰とも会わないし」
「まあまあ、落ち着けって。ヒナ」
すっかり蚊帳の外の気分で傍観していたところに名前を呼ばれ、一息遅れたタイミングで顔を上げる。
捕らえる場所を手首から二の腕に変えた池田が手を引けば、巻き戻されるヨーヨーみたいに涼二の身体が尻からソファに戻る。
「いってえ!」
悲痛な悲鳴に、池田はただ笑うばかりだ。
先刻までの心配は微塵も見えない。
多分、これが池田が涼二の前で徹底している態度なんだろう。
小さな身体を腕の中に捕まえて、池田がこちらに目を向けてきた。
「ご覧の通り、政一の弟にしては可愛げがあるっていうか……単純なところは一緒っていうか、思い込みが激しいっていうか、そんな奴だから、お前よろしくしてやってよ」
そういうのの相手、得意だろ、と。
それは、圭のことを言っているんだろうか。
ふと頭に浮かんだ能天気な面影に、勝手に目が据わる。
池田は風呂場で、長年狙っていた標的に手を出し失敗したと言っていた。
手を出された標的は挙動不審で、おかまになったと騒ぎ立てている。
真っ当な子供が男に手を出されりゃ、そんな風に考えてしまう気持ちは……まあ、分からないでもない。
おかまとゲイの違いも分かっていないんだろうからな。
池田の「よろしくしてやってくれ」は、多分そういう意味だ。
「……何となく、言わんとしてることは分かったよ」
どっと疲れた気分でソファに身を沈める。
言わんとしていることは分かったが……どうして俺に白羽の矢が立ったのかも想像出来るが……なんとも憂鬱な「お願い」だ。
体調を見てくれの申し出は嘘じゃないんだろうが、本当の目的はこっちだ。
池田がこの子供を、片山の弟を手に入れるための手助けをしろと。
今はまだ良い、けれどもいつかあいつにばれた時に、手を貸せと。
そういう意味だ。
無言の頼みを、出来ることなら退けたい。
けど、池田にはとんでもない借りがある。
それを返すのだと思えば……容易、くはないけど、まあ良いだろう。
こんな日が来るとは思ってもいなかった。
池田が自分から誰かに頼みごとをする日が来るなんて、想像もしていなかった。
だから、あの時の借りはもう一生返せないんだと思っていた。
何度か抱かせてやった程度では到底返した気にもなれないような、大きな借りだ。
けど。
池田の方からその機会を提示してくるなら、乗らなければ嘘だろう。
観念したのがばれたのか、池田が満足気に笑う。
それを疲れた気分で見返した。
「ヒナ、お前からも言ってやってよ。こいつ、俺に抱かれたから自分はおかまになっちまったってすげえ落ち込んじゃって、すっかり情緒不安定なんだよ。別にそんな風には見えねえっつってんのに、なあ?」
「……」
自分の所為だというのに、酷い態度だ。
こんなのに目を付けられたこの子が気の毒でならない。
小さな身体は良いように操られて、今や完全に池田の膝に乗り上げている。
おかま、なんて単語に、目が不安そうに揺れている。
何の知識もない子供を一人放り出すのは……そうだな、流石に心が痛む。
「別に、そんな風には見えないけどな」
「うそだ」
励ます言葉に、意外な反論があった。
思わず目を瞠れば、反射的に向けられただろう視線が、また惑うように地に落ちる。
「じゃ、じゃあ……何で分かったんですか……玖朗がその、俺に手、手出したとか……普通に考えたら、ぱっとみて分かるはずがない」
掠れた声の問いかけに、咄嗟にどう答えたものか分からなかった。
まさか風呂場で既に聞きました。
お前、ずっと前から狙われてたんだよと、犯人を目の前に密告するわけにもいかない。
膝の上で項垂れる涼二を、まるで飼い猫にするように池田がのんびり撫でている。
諸悪の根源のくせに随分な態度だ。
仕方なしに嘆息、ソファに身体を埋める。
「……痕だよ」
正直、こういうのを指摘する野暮はしたくない。
けど、何かしら理由がなければ納得できないというのなら、仕方がない。
「あと?」
「身体中に山ほどキスマーク付いてりゃ、嫌でも気付くだろ。おかまとかそういうのは関係ない」
飲みかけのビールの缶をテーブルに置くついでのように、痕の残る箇所をさり気なく指で追えば、
「キスマー……、ッ!」
鸚鵡返しに呟きかけた声が、息を呑む音で止まった。
全く気付いていなかったらしいその反応にも驚きだが、手当たり次第あちらこちらに痕を残した池田の気も知れない。
途端に羞恥に襲われたのか、両手が首元を隠しているけどもう遅い。
行為の証の指摘にしては、これ以上のものはないだろう。
野暮だけど。
「じゃ、俺、おかまみたいには見えないですか……」
「見えないよ」
「……よかった」
ほっと項垂れて呟く声に、しょうがないなと自然に思えた。
こいつは、よりにもよってあの片山の弟で。
まだ子供で。
俺が世話を焼く義理なんてどこにもないけど。
これだけ単純そうなのを野放しにしておいたら、一体どこへ向かって行ってしまうか分からない。
池田を受け入れるにしても受け入れないにしても、ちょっと手綱を握っておくくらいならどうということはない。
よりにもよってあの片山の弟だからこそ。
まだ子供だからこそ。
一歩前から手を引く誰かが必要なんだろう。
池田がそれを俺にというのなら、もう仕方がない。
「大丈夫、どこからどう見ても普通の中学生にしか見えない」
これが世話焼きの第一歩だとばかりにだめ押しの一言を吐くなり、涼二ががっくり項垂れた。
と同時に、池田が吹き出すのを堪え掌で口許を覆う。
「……高校生です」
そういうことは、先に言え。
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