どうも、どうあがいても死ぬ兄です

石田空

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エクソシストの訪問・1

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 あのマルティンとの一件以降、俺とウィルマのハニートラップ大作戦は大きく動き出した。
 東に村を襲撃しまくる吸血鬼がいたら、俺が当社比三割増しのお色気の格好で出かけていっては血祭りに上げ。
 西に女の子たちを誘拐しまくる吸血鬼がいたら、俺が誘拐される女の子たちに紛れて一緒に誘拐され、女の子たちを村に送り返し。
 強硬派の吸血鬼が一件、二件と減ってきて、少しずつ俺の元にやってくるグール発生の調査報告も減ってくるようになってきた。
 うちで預かっている女の子たちもなんとかメイド作法が身についてきたから、もうちょっと平和な町の商家に奉公に出す手配をしてもいいかもと思っていたけれど、不思議なことにうちで働いている子たちは皆首を横に振って「どうかここで働かせてください!」と言ってくるようになった。
 吸血鬼と関わらず、人間のとこに戻ったほうがいいと思ったんだけれど。俺はそれとなーくエリザに聞いてみたら、エリザは苦笑して教えてくれた。

「最近はどこもかしこも物騒ですから、奥様の側にいたほうが安全だと思ったんだと思いますよ」
「そう? でもエクソシストの組織がある町のほうが安全だと思ったんだけれど」

 そういや本部が襲撃されて立て直し中だって、前にミヒャエラから聞いていたけれど、あれから立て直しは完了したのかね。あそこがもうちょっとしっかりして強硬派を押さえ込んでくれてたら、俺が各地に出回らなくってもいいと思ったんだけどな。
 ……まあ、あそこも穏健派・中立派・強硬派の区別がついてないんだから、ある程度ついてくれないことには、敵対していることには変わりないんだけどなあ。
 エリザは「そうですねえ……」と小首を傾げた。

「私も故郷に仕送りしていますけど、最近エクソシストの組織も一枚岩ではないみたいなんで、まだ安全そうなところにいようって考えは私も理解できます」
「そうなの?」

『禁断のロザリオ』だったら、設定どうだったかなあ。さすがに俺もちょっとしか見てない状況でどうのこうのなんて言えんのだけど。
 俺がそう考えていたら、エリザが「うちの故郷の話ですけど」と告げる。

「吸血鬼を殲滅することを優先するエクソシストもいるみたいで、グールが出ても村が燃やされたら困ると、エクソシストに通報できないところもあるみたいで」
「ええ、それってエリザの故郷は大丈夫なの?」
「幸い、グールの数が少なかったので、故郷の人だけでも対処できましたけど。これ以上増えたら、グールに故郷が滅ぼされるのが先か、エクソシストに故郷が燃やされるのが先かの話になってしまうので、私もあんまり無理しないでと言っているところなんですよ」

 なんじゃそりゃ。エクソシスト、そこまで見境なかったのか。さすがにそんな見境ないエクソシストは、リズのいるところの支部ではないとは信じたいけれど。
 んーんーんーんー……エクソシストに見つからないようこそこそ動くつもりだったけれど、エクソシストのほうが害悪化している場合はなんか対処を考えたほうがいいんだろうか。俺はエリザに「何度もありがとう、あとあの子たちの世話をよろしく」とお礼を言ってから、部屋に引っ込むことにした。
 この辺りはミヒャエラに共有しつつも、ウィルマに相談したほうがよさそうだ。

****

──たしかにエクソシストは本部を襲撃されて以降、あちらも強硬派と穏健派に別れていますね

 魔法の通信で、ウィルマと連絡を取り合いながら、俺はミヒャエラの出してくれた食事を食べる。今日もレアレアな肉汁ほぼ生の肉が美味い。
 俺は肉をひと口囓りながら、ウィルマに尋ねてみる。

──これはどう対処したらよろしいでしょうか? 吸血鬼強硬派は叩けばどうにかなりますが、エクソシストを襲えば、返って彼らに攻撃される大義名分を与えかねませんし
──ええ、絶対にむやみに攻撃をしてはいけません。ですが、あちらも強硬派と穏健派に割れたのは、ある意味チャンスかもわかりません
──チャンス? これがチャンスになるんですか?
──強硬派とは話にならないのは、吸血鬼もエクソシストも同じです。が、むやみに戦争をしたくないのは穏健派どちらものはずです。穏健派エクソシストと話し合う機会があれば、こちらの独立自治を獲得することもできるやもしれません
──ですけど、私たちには情報が足りなくて、エクソシストがどちらの派閥なのかを見極められなくないですか?
──ええ。ですから、エクソシスト側の情報が欲しいですね

 そりゃこっちだってエクソシスト側の情報は、喉から手が出るほど欲しい。
 俺が乙女ゲームわかんないばかりに、俺がウィルマと共謀した結果がリズにどう作用しているのかがちっともわからないんだから。
 リズが無事なのかとか、そちら側のエクソシストは問題ないのかとか、会えなくっても情報が欲しいんだよな。
 でも。こちらから近付いて、いいことは全然ないような気がする。そもそもいい吸血鬼と悪い吸血鬼の区別が付かないことには、話し合いの場なんて設けられないだろうに。
 俺もウィルマも決着がつかないまま「とりあえず穏健そうなエクソシストに会えたら教えて」とダメダメな結論で一旦話し合いは終了した。
 がぶがぶと肉を食べてワインで流していると、ミヒャエラがこちらを見てきた。

「それでご主人様、次の打ち合わせはどうなりましたか?」
「なあんの成果もないかな。ただ、そろそろエクソシストのほうをどうにかしようかって話題は出た」
「えっ、ついにエクソシストを殲滅するおつもりで?」
「こっちが殲滅されるおそれがあることわざわざできるか!?」
「そんなのわかってますよう、吸血鬼ジョークですぅ」
「だからその物騒なジョークやめようね!?」
「まあ、冗談はさておいてですねえ」

 相変わらずブラックジョーク間に挟まないと会話が成立しないなあ。
 俺がジト目でミヒャエラを睨んだら、ミヒャエラは言う。

「エクソシストが近々この土地に訪問来ますけど、どう対処いたしましょうか?」
「はいぃ?」

 まさかの暴投に、俺は口をあんぐりと開けた。
 話し合いをしたいとは思っていたけど、向こうから来るなんて、聞いてないんですけどっ!?
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