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どうも、どうあがいても死ぬ兄です
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「……もしかしなくっても、お兄ちゃん?」
「へっ?」
だって、そこまで過保護であれこれ言って、マリオンのこともリズのことも心配するような人、他に知らないし」
リズの突然の申し出に、俺はピキーンと凍り付いた。
おい……おい。可愛い可愛いと思っていたリズもまた、転生者であり、しかも。
あのどぎつい妹かよぉ、お前かよぉ、ほらミヒャエラときたらむっちゃアカンもの見る目でこっち見てるじゃんかよぉ……!
「ええっと……まじで?」
俺の口調が漏れ出る。それに大きく妹と名乗るリズが頷いた。
「証拠的なものだったら、そうだねえ……私、乙女ゲームだったらホワイトリリーもブラックサレナも好きだけれど、戦闘システムではブラックサレナに軍配が上がるんだよね。でもいい加減キワモノゲームばかりつくらないで、真面目なシナリオ書いたほうがいいと思う。でもホワイトリリーもむっちゃハッピーなシナリオだけれど、ゲームシステム自体は単調で作業ゲームになるから、シナリオ飛ばし読みになっちゃうのはあんまりよくないと思う。あとゲームをリメイクするときは、なにが受けてなにが不評だったのかはもっと考えるべきで、キワモノを極めたら無茶苦茶売れる乙女ゲームになる訳ではないと思うだよね」
「わかったわ、間違いなく妹だわ。あとお前、本当に長々とオタクトークやめようね? なんかお前ほんっとうに変わってないね?」
こんな乙女ゲーム愛と愚痴とレーベルの違い……俺にはどう違うかさっぱりわからんが、妹的には大分違うらしい……を延々と男兄弟に語り出すのは、うちの妹くらいだわ。他の乙女ゲームユーザーだって萌え語りくらいはするだろうけど、語る相手くらい選ぶだろ。
話の内容は、当然ながらミヒャエラにはなんにもわからないようだった。あいつからしてみればリズがいきなり謎の呪文を唱えたようにしか聞こえてないだろう。
「あのう、ご主人様。リズ様はいったいなにを?」
「あーあーあーあー……お前ちょっと下がっててもらっていい? ちょっとリズと一対一で話したいんだけれど」
「そりゃかまいませんけど。合同演習はどうなさいますか? あちらの方々、リズ様に応援されたがってたようですが」
「うん、それもちょっと聞いてくるから。なあ、頼む」
俺が拝むと、ミヒャエラはやれやれと金色の目を細めた。
「まあ、悪いようにはならないでしょ。わかりました、わたしはちょっと遠ざかってますからね。有事の際にはいつでもお呼びくださいませぇ」
ミヒャエラはそう言い残して、俺たちをふたりっきりにしてくれた。
うん、あの面白メイドは有能メイドだ。これまでも、これからも。
「つうかなに? お前もなんかやってた訳?」
「そりゃやるよ。だってこのまんま放っておいたらお兄ちゃん死んじゃうじゃない。お兄ちゃんが死なないように、真祖は無害だって訴えられるように下地づくりしてたんですぅ。だから攻略対象全員落としましたぁー」
「はあっ!? お前逆ハーレム主義者ではなかったろ!?」
「そりゃ私だって純愛プレイのほうがしたいわ! でも命かかってたらするしかないじゃない!? 私嫌だよ、マリオンは悪いことしまくってたとは言えど、たったひとりの肉親がなんの意味もなくリズの人生に深いこと関与することなく無駄死にするところなんか見たくないし!」
「まあそれはわからんでもないが。だが俺はもう無事なんだから、逆ハーレムとか荷が重いことは止めときなさい。特に、あの赤毛! あれはなんというかこう……全然駄目だろ。お前、ゲーム以外で彼氏できたことないのに、あれはよくない」
「はあ……?」
妹の声が、一オクターブほど低くなった。
「リ、リズ……さん?」
「お兄ちゃんがレオンのなにを知ってるっつうのよ」
「いや……お兄ちゃんも、さすがにお前のやってたゲームを全部把握してる訳ではなくて、ですね……?」
「あの人はね、自分のいた楽団一座を全滅させられて、エクソシストになった人なの。あの人が軽いノリのは、単純にそうやってお客さん集めてただけで、エロい訳じゃないし軽薄じゃない。顔だけ口先ペラペラ男とレオンを一緒にしないで」
「おま……いったいどんな語彙力なのよ、それ」
「それに、私だって逆ハーレムやってる以上、全員娶って幸せにする義務があると思うの」
「妹よ、お前はひとりしかいませんけど??」
「でもあの人たち私が見捨てたらひとりぼっちになるじゃない! あの人たち誰かの一番になれないからって、相手を殺そうとする人たちじゃないわ。だから私が全員娶るの」
「……ええっと、この世界って重婚ってオッケーだったっけ。なし?」
「お兄ちゃんは領主でしょうが。お兄ちゃんがその手の領地内法律つくってよ」
「あなた無茶言いますね????」
もうやだ、この妹。
前世でもさんざんぶっ飛んでたと思ったら、現世でも俺のためとはいえど、逆ハーレム決行した挙げ句、全員娶るとか言い出すし。だからお前ひとりでしょ。相手三人で大丈夫? それより多かったらお兄ちゃんお前のいろいろもろもろが心配で泣いてしまいます。
妹は「それよりお兄ちゃん」とか言い出す。
「なによ?」
「あのさっきのメイドさんはなに? 誰?」
「お前覚えてないの? うちの領地が滅びる前から側仕えで働いてくれているミヒャエラ。俺が旦那の領地乗っ取ったあとも面倒見てくれてるの」
「ふうん……よかった。私、なんか私の知っている情報よりも誘拐されたりしないから、お兄ちゃんどっかで色仕掛けとかして、ハーレムつくってたりしてたんじゃとか思ってたから……お兄ちゃん?」
俺は明後日の方向を向いた。
胸をバインバインに膨らませたり、ロリータファッションしたり、そりゃあもう涙ぐましい色仕掛けで強硬派吸血鬼のところに突撃・侵略・制覇を繰り返したり繰り返したり繰り返したりしていたし。
そのたんびに誘拐されていた女の子たちを拾ってきていたし。
ほら言うよね。全員から感情向けられない限りはハーレムじゃないって。今やうちの使用人はエリザに面倒見てもらいながらも女の子がふんだんに増えていた。
リズの可愛い顔に、だんだん皺が寄ってきた。
「ちょっと、お兄ちゃんまさか、異世界転生お約束のハーレム展開にまで……!?」
「あーあーあーあー、人助けしまくってたらそうなってたんですぅー、したくてしてた訳じゃないですぅー!」
「ばっかじゃないの!? ばっかじゃないの!? それほんっとうにばっかじゃないの!?」
「それお前にだけは絶対に言われたくないんですけど!? お前が人助けのためだったら、俺だって人助けのためのハーレム化だわ! だが俺は恋愛的攻略なんざ一度たりともしたことねえわ! そもそもデバフで人妻女装吸血鬼だわ、ざまぁ見ろ!」
「そりゃそんなニッチ過ぎるキャラ属性、落とされる方だって困るわ……と、とにかく! 私が皆に真祖は無害です、人間とは敵対しませんって言うまでに、お兄ちゃんはそのハーレム要員どうにかしてよ!? こっちだって何度死にかけたがわかんないんだから!」
「俺だってそんなもん、何度も何度も強硬派との戦いで死にかけたかわからんわ! お前も調子に乗って羽目外すんじゃないぞ! 乙女ゲームの主人公だからって、全然補正とかないから!」
「ありがとう! ブラックサレナに乙女ゲーム主人公補正とか全然求めてないから大丈夫!」
俺たちはさんざん言い合って罵り合ってから、合同演習の見学へと向かった。
ミヒャエラはまじまじと寄ってきた。
「ご主人様、なにやら妹様とずっと怒鳴り合ってましたけど大丈夫でした?」
「うん、別に喧嘩してた訳じゃないから大丈夫。まあ……俺も少しは安心したかな。リズは元気そうだったから」
「そうですね。エクソシストの方々とも上手くやってらっしゃるようでなによりでした」
「はぁ~……まあ、うちの両親ほど上手くやれるかはわからんけど、俺も人間と吸血鬼が共存できる土地を目指して頑張るかな」
「あら、今まで日和ってらっしゃいましたのに、どういった風向きで?」
「……うちの妹の本命が誰なのかマジで知らんけど、誰かと家族になったりするんだったら、人間と吸血鬼の境を取っ払わないとまずいだろ。それに人間の血が混ざったら真祖の子供でもどう作用するのかわからないから、それに詳しい医者だって必要になるし。もっと頑張らないとなあ」
「あらあらあら、まあまあまあ」
ミヒャエラはにこやかに笑っている中、俺は気合いを入れた。
なあ、マリオンよ。お前の妹は元気でやってるみたいだ。俺の妹でもあるけど。
あの血溜まりで死んだ命だけれど、今はそれを妹や領地、一緒に住んでいる皆のために使えている。
前世は社畜で大した力があった訳ではないけれど、今はこうやって皆に支えられながら上手くやっている。
人間と吸血鬼が仲良くなるにしても、血が薄まると凶暴化する問題がどうやったらクリアできるのかわからんし、うちの両親はそれを上手くやれていたんだから方法はあるはずだ。
上手くやっていこうと、どうにか思っているよ。
<了>
「へっ?」
だって、そこまで過保護であれこれ言って、マリオンのこともリズのことも心配するような人、他に知らないし」
リズの突然の申し出に、俺はピキーンと凍り付いた。
おい……おい。可愛い可愛いと思っていたリズもまた、転生者であり、しかも。
あのどぎつい妹かよぉ、お前かよぉ、ほらミヒャエラときたらむっちゃアカンもの見る目でこっち見てるじゃんかよぉ……!
「ええっと……まじで?」
俺の口調が漏れ出る。それに大きく妹と名乗るリズが頷いた。
「証拠的なものだったら、そうだねえ……私、乙女ゲームだったらホワイトリリーもブラックサレナも好きだけれど、戦闘システムではブラックサレナに軍配が上がるんだよね。でもいい加減キワモノゲームばかりつくらないで、真面目なシナリオ書いたほうがいいと思う。でもホワイトリリーもむっちゃハッピーなシナリオだけれど、ゲームシステム自体は単調で作業ゲームになるから、シナリオ飛ばし読みになっちゃうのはあんまりよくないと思う。あとゲームをリメイクするときは、なにが受けてなにが不評だったのかはもっと考えるべきで、キワモノを極めたら無茶苦茶売れる乙女ゲームになる訳ではないと思うだよね」
「わかったわ、間違いなく妹だわ。あとお前、本当に長々とオタクトークやめようね? なんかお前ほんっとうに変わってないね?」
こんな乙女ゲーム愛と愚痴とレーベルの違い……俺にはどう違うかさっぱりわからんが、妹的には大分違うらしい……を延々と男兄弟に語り出すのは、うちの妹くらいだわ。他の乙女ゲームユーザーだって萌え語りくらいはするだろうけど、語る相手くらい選ぶだろ。
話の内容は、当然ながらミヒャエラにはなんにもわからないようだった。あいつからしてみればリズがいきなり謎の呪文を唱えたようにしか聞こえてないだろう。
「あのう、ご主人様。リズ様はいったいなにを?」
「あーあーあーあー……お前ちょっと下がっててもらっていい? ちょっとリズと一対一で話したいんだけれど」
「そりゃかまいませんけど。合同演習はどうなさいますか? あちらの方々、リズ様に応援されたがってたようですが」
「うん、それもちょっと聞いてくるから。なあ、頼む」
俺が拝むと、ミヒャエラはやれやれと金色の目を細めた。
「まあ、悪いようにはならないでしょ。わかりました、わたしはちょっと遠ざかってますからね。有事の際にはいつでもお呼びくださいませぇ」
ミヒャエラはそう言い残して、俺たちをふたりっきりにしてくれた。
うん、あの面白メイドは有能メイドだ。これまでも、これからも。
「つうかなに? お前もなんかやってた訳?」
「そりゃやるよ。だってこのまんま放っておいたらお兄ちゃん死んじゃうじゃない。お兄ちゃんが死なないように、真祖は無害だって訴えられるように下地づくりしてたんですぅ。だから攻略対象全員落としましたぁー」
「はあっ!? お前逆ハーレム主義者ではなかったろ!?」
「そりゃ私だって純愛プレイのほうがしたいわ! でも命かかってたらするしかないじゃない!? 私嫌だよ、マリオンは悪いことしまくってたとは言えど、たったひとりの肉親がなんの意味もなくリズの人生に深いこと関与することなく無駄死にするところなんか見たくないし!」
「まあそれはわからんでもないが。だが俺はもう無事なんだから、逆ハーレムとか荷が重いことは止めときなさい。特に、あの赤毛! あれはなんというかこう……全然駄目だろ。お前、ゲーム以外で彼氏できたことないのに、あれはよくない」
「はあ……?」
妹の声が、一オクターブほど低くなった。
「リ、リズ……さん?」
「お兄ちゃんがレオンのなにを知ってるっつうのよ」
「いや……お兄ちゃんも、さすがにお前のやってたゲームを全部把握してる訳ではなくて、ですね……?」
「あの人はね、自分のいた楽団一座を全滅させられて、エクソシストになった人なの。あの人が軽いノリのは、単純にそうやってお客さん集めてただけで、エロい訳じゃないし軽薄じゃない。顔だけ口先ペラペラ男とレオンを一緒にしないで」
「おま……いったいどんな語彙力なのよ、それ」
「それに、私だって逆ハーレムやってる以上、全員娶って幸せにする義務があると思うの」
「妹よ、お前はひとりしかいませんけど??」
「でもあの人たち私が見捨てたらひとりぼっちになるじゃない! あの人たち誰かの一番になれないからって、相手を殺そうとする人たちじゃないわ。だから私が全員娶るの」
「……ええっと、この世界って重婚ってオッケーだったっけ。なし?」
「お兄ちゃんは領主でしょうが。お兄ちゃんがその手の領地内法律つくってよ」
「あなた無茶言いますね????」
もうやだ、この妹。
前世でもさんざんぶっ飛んでたと思ったら、現世でも俺のためとはいえど、逆ハーレム決行した挙げ句、全員娶るとか言い出すし。だからお前ひとりでしょ。相手三人で大丈夫? それより多かったらお兄ちゃんお前のいろいろもろもろが心配で泣いてしまいます。
妹は「それよりお兄ちゃん」とか言い出す。
「なによ?」
「あのさっきのメイドさんはなに? 誰?」
「お前覚えてないの? うちの領地が滅びる前から側仕えで働いてくれているミヒャエラ。俺が旦那の領地乗っ取ったあとも面倒見てくれてるの」
「ふうん……よかった。私、なんか私の知っている情報よりも誘拐されたりしないから、お兄ちゃんどっかで色仕掛けとかして、ハーレムつくってたりしてたんじゃとか思ってたから……お兄ちゃん?」
俺は明後日の方向を向いた。
胸をバインバインに膨らませたり、ロリータファッションしたり、そりゃあもう涙ぐましい色仕掛けで強硬派吸血鬼のところに突撃・侵略・制覇を繰り返したり繰り返したり繰り返したりしていたし。
そのたんびに誘拐されていた女の子たちを拾ってきていたし。
ほら言うよね。全員から感情向けられない限りはハーレムじゃないって。今やうちの使用人はエリザに面倒見てもらいながらも女の子がふんだんに増えていた。
リズの可愛い顔に、だんだん皺が寄ってきた。
「ちょっと、お兄ちゃんまさか、異世界転生お約束のハーレム展開にまで……!?」
「あーあーあーあー、人助けしまくってたらそうなってたんですぅー、したくてしてた訳じゃないですぅー!」
「ばっかじゃないの!? ばっかじゃないの!? それほんっとうにばっかじゃないの!?」
「それお前にだけは絶対に言われたくないんですけど!? お前が人助けのためだったら、俺だって人助けのためのハーレム化だわ! だが俺は恋愛的攻略なんざ一度たりともしたことねえわ! そもそもデバフで人妻女装吸血鬼だわ、ざまぁ見ろ!」
「そりゃそんなニッチ過ぎるキャラ属性、落とされる方だって困るわ……と、とにかく! 私が皆に真祖は無害です、人間とは敵対しませんって言うまでに、お兄ちゃんはそのハーレム要員どうにかしてよ!? こっちだって何度死にかけたがわかんないんだから!」
「俺だってそんなもん、何度も何度も強硬派との戦いで死にかけたかわからんわ! お前も調子に乗って羽目外すんじゃないぞ! 乙女ゲームの主人公だからって、全然補正とかないから!」
「ありがとう! ブラックサレナに乙女ゲーム主人公補正とか全然求めてないから大丈夫!」
俺たちはさんざん言い合って罵り合ってから、合同演習の見学へと向かった。
ミヒャエラはまじまじと寄ってきた。
「ご主人様、なにやら妹様とずっと怒鳴り合ってましたけど大丈夫でした?」
「うん、別に喧嘩してた訳じゃないから大丈夫。まあ……俺も少しは安心したかな。リズは元気そうだったから」
「そうですね。エクソシストの方々とも上手くやってらっしゃるようでなによりでした」
「はぁ~……まあ、うちの両親ほど上手くやれるかはわからんけど、俺も人間と吸血鬼が共存できる土地を目指して頑張るかな」
「あら、今まで日和ってらっしゃいましたのに、どういった風向きで?」
「……うちの妹の本命が誰なのかマジで知らんけど、誰かと家族になったりするんだったら、人間と吸血鬼の境を取っ払わないとまずいだろ。それに人間の血が混ざったら真祖の子供でもどう作用するのかわからないから、それに詳しい医者だって必要になるし。もっと頑張らないとなあ」
「あらあらあら、まあまあまあ」
ミヒャエラはにこやかに笑っている中、俺は気合いを入れた。
なあ、マリオンよ。お前の妹は元気でやってるみたいだ。俺の妹でもあるけど。
あの血溜まりで死んだ命だけれど、今はそれを妹や領地、一緒に住んでいる皆のために使えている。
前世は社畜で大した力があった訳ではないけれど、今はこうやって皆に支えられながら上手くやっている。
人間と吸血鬼が仲良くなるにしても、血が薄まると凶暴化する問題がどうやったらクリアできるのかわからんし、うちの両親はそれを上手くやれていたんだから方法はあるはずだ。
上手くやっていこうと、どうにか思っているよ。
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