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ぎこちない夜
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アンジェリカが匂いから必死に逃れようと布団の中で丸まっている中、とうとうムスクの匂いがこの寝室を満ちた。
「なんだ、虫の真似事か? ミノムシの真似をするにはまだ季節が早いと思うが」
「……誰がミノムシですか」
ユリウスの言葉に、アンジェリカの嫌な汗が止まらない。この匂いがいいと、全身が叫んでいるのだ。だがそれをアンジェリカ本人が必死で拒絶している。
自分からなにもかもを奪い取った男。自分をアルファからオメガに貶めた男。庭を少し整備したくらいなんだ。釣った魚に餌をやらない男じゃなかっただけだ。少し親切にしてみせたところで、自分が昨晩蹂躙された憎悪が消えると思うな。
彼女が必死に言い募るが、意外なことにユリウスは布団の中で固まって顔を出さないアンジェリカの横に座るだけで、無理矢理布団を剥ぎ取るような真似をしなかった。
「意外だな、貴様は」
「……なにがですか」
「てっきり貴様は、白狼王国からの命令で、俺の元に輿入れしたのだと思っていたが。その割に矛盾した行動が多い」
「……どこがですか。あなたと結婚したいと思ったことはありません」
「別に結婚したいと思っていないのは把握していた。だからこそ、最初に俺をアルファからオメガに貶めた上で、この国を少しずつ乗っ取るつもりだったのだろう?」
「……やはり気付いていて、この後宮を空にしていたのですか」
「違うが?」
あまりにもあっさりと言うのに、さすがにアンジェリカはおかしいと気付く。
「……何故あなたは、この結婚が政略結婚だと理解した上で、結婚したのですか。忌々しい白狼王国がやっと白旗を上げたから嬉しかったのですか? それとも姫を捕虜にするより愛妾にするほうが蹂躙しがいがあると思ったのですか?」
「いったいどこから得た知識だそれは。いくらなんでも、物事を悪く考え過ぎだ」
ユリウスは心底呆れたように、布団の上からアンジェリカに手を伸ばした。軽く撫でる感覚に、アンジェリカは反応に困る。
(懐柔しようとしているの……?)
「後宮に他の妃やメイドを入れなかったのは俺の意思だ。白狼王国は一夫一妻と聞く。いくら政略結婚とはいえど、慣れない我が国に連れてくるのだ。そもそも俺は後宮はあまりに広い上に邪魔だからな。俺が玉座を譲り受けたら、そのまま解体するつもりだ」
「嘘……」
「本当だとも。戦争が続いたのだ。戦争が長引けば、子をたくさん成したほうが、有事の際に困らないだろうが、俺はそもそもアルファだ。アルファは妻をひとりしか娶らない。そもそもその話を貴様の国では聞かなかったのか?」
「……聞いてない。だって、オメガはアルファの子を産むための道具だと……」
「貴様の国の倫理観は本当にどうなっているんだ。そもそも、このアルファやオメガの番制度を最初に制定した国は白狼王国だろうに」
アンジェリカは、ユリウスの言葉にどう返せばいいのかがわからず、だんだんと声が震えてくる。
「わからないわ。本当になんにも」
「そうなのか?」
「私、アルファのフェロモンが顕現されてから、ずっと魔術師団に預けられていたから、一般の知識に偏りがあるのかもしれない」
「なるほど。魔術師は覚えるものがたくさんあると聞く。それこそ一流の魔術師の頭の中には図書館数館ほどの知識が蓄えられていると。つまりは、それが原因で一般知識を得る暇もなかったのだな」
「そのときに……婚約者とも無理矢理別れさせられた……」
そうひと言、言葉を振り絞った途端、今まで我慢していたものが崩れ落ちた。アンジェリカは布団の中で肩を震わせはじめる。
****
アンジェリカは元々は白狼王国の三女だった。弟はふたりいるし、姉もふたりいる、ちょうど真ん中。
長姉は弟が国を継げるようになるまで、婿を取って国を守る気満々だったし、次姉は公爵に嫁ぐために花嫁修業に明け暮れていた。
みそっかすだったアンジェリカは、そのうち降嫁するのだろうと、護衛騎士の家系であるエドガーとの婚約が決まっていた。彼女は当時は引っ込み思案な少女だったため、姉ふたりと比べても外交に向いているとも思えず、政略結婚の駒にはいささか心元ないため、陰謀とは縁遠い婚約をまとめたのは、普通に親の愛から来るものだった。
だが、彼女が初潮が来てからしばらく、いきなり高熱で倒れて、魔術師に診てもらって判明したのである。
「姫様はアルファでございます」
その途端に周りの彼女を見る目が一変したのを、アンジェリカはよく覚えていた。
彼女には当時、なんの取り柄もなかった。元々王家の姫たちは見目こそ優れているものの、長姉のような威厳もなければ、次姉のようなファムファタールのような色香もない。それがアルファということで、彼女が魔術師団に預けられた途端に、王家の人々からは遠巻きにされてしまったのである。
それでも、アンジェリカは引き離されてしまったエドガーを忘れることができず、彼女はずっと手紙を送り続けていた。彼女は獅子皇国に人身御供にされることは決まっていたものの、さすがに憐れに思ったのか、魔術師団の面々すら、文通自体は見逃してくれていたのだ。
だが、彼女はある日を境に全くエドガーからの手紙が届かなくなったのに気付いた。
魔術の勉強をしながら、アンジェリカはユールに尋ねた。
「ねえユール。騎士団の鍛錬の場はどちらかしら?」
「姫様? いきなり騎士団に出かけては、騎士団の皆様がびっくりしてしまうのでは」
「でもユール。エドガーから手紙が来ないのよ。もしかすると遠征で怪我をしたのかもしれない。お見舞いに行かないといけないわ」
「それは早合点というものでございます、姫様。それに姫様はあと一年で獅子皇国に嫁ぐのです。もう……いい思い出ということで、そのままお別れしたほうが」
「でも。エドガーからしてみればいきなり婚約者を取り上げられてしまったのよ? 私だっていきなり婚約を破談にしろと言われて悲しかったんだから。ねえ、ユール」
今思うと、ユールは大方の事情を知っていたから、アンジェリカに傷付いて欲しくない一心でなんとか引き留めたかったのだろうが、当時のアンジェリカは愚かでこれっぽっちも寄り添ってくれた人に想いを寄せ返すことができなかった。
だからこそ、根負けしたユールに教えられ、城内の敷地から堂々と騎士団の鍛錬場に出かけ、見てしまったのである。
エドガーが見知らぬ女騎士と寄り添い合ってキスをしているのを。
「でも、私でいいのエドガー? あなた姫様と婚約してたんでしょう?」
「……姫様は美しかったし、降嫁してきたら幸せにする気はあったよ。いきなり蛮族の国に送られるってのはあんまりだって、俺だって最初は思ってた。でもなあ……」
エドガーはなんとも困った顔で、女騎士と話をしていた。
「送られてくる手紙が、だんだん臭くなってくるんだよ」
「臭くなるって? たしかに魔術師団って薬草を大量に取り扱っているけど」
「そんなんじゃないよ。なんていうんだろう……こう。騎士団の鍛錬後の匂いみたいになってくるんだ。なんかこう、殺気立ったにおい。フェロモン」
「……まさかと思うけどエドガー、姫様のこと」
「彼女とずっといたけど、彼女いつも花の匂いがしてたのに、今や騎士団みたいな殺気立ったにおいしかしなくって、本当に彼女は性別が変わってしまったんだと思ったら……もう近付けないよ」
それは年頃の少女の恋が崩れるには、あまりにたやすいものだった。
アンジェリカは今まで、誰からもアルファだと言われたことはなかった。彼女自身がぼんやりしていた上に、魔術師団では年がら年中薬草の匂いがしていたのだから。
だが、殺気を知っている人は気付いてしまう。アルファから放たれたフェロモンは、人に圧力を与えるにおいだと。
もう、可憐な少女とは見られないと。
そのショックで、アンジェリカはアルファのフェロモンが顕現したときのように、高熱を出して寝込んでしまった。そして彼女は、全ての元凶を会ったこともない獅子皇国の婚約者に向けてしまったのだ。
彼はなにひとつ悪いことをしていない。そんなことはわかっていた。でも。
自分を辱めた。殺してやる。本当に自分はアルファになんてなりたくなかった。
怒りも憎悪も、全て会ったこともない新たな婚約者に向けていたのだった。
「なんだ、虫の真似事か? ミノムシの真似をするにはまだ季節が早いと思うが」
「……誰がミノムシですか」
ユリウスの言葉に、アンジェリカの嫌な汗が止まらない。この匂いがいいと、全身が叫んでいるのだ。だがそれをアンジェリカ本人が必死で拒絶している。
自分からなにもかもを奪い取った男。自分をアルファからオメガに貶めた男。庭を少し整備したくらいなんだ。釣った魚に餌をやらない男じゃなかっただけだ。少し親切にしてみせたところで、自分が昨晩蹂躙された憎悪が消えると思うな。
彼女が必死に言い募るが、意外なことにユリウスは布団の中で固まって顔を出さないアンジェリカの横に座るだけで、無理矢理布団を剥ぎ取るような真似をしなかった。
「意外だな、貴様は」
「……なにがですか」
「てっきり貴様は、白狼王国からの命令で、俺の元に輿入れしたのだと思っていたが。その割に矛盾した行動が多い」
「……どこがですか。あなたと結婚したいと思ったことはありません」
「別に結婚したいと思っていないのは把握していた。だからこそ、最初に俺をアルファからオメガに貶めた上で、この国を少しずつ乗っ取るつもりだったのだろう?」
「……やはり気付いていて、この後宮を空にしていたのですか」
「違うが?」
あまりにもあっさりと言うのに、さすがにアンジェリカはおかしいと気付く。
「……何故あなたは、この結婚が政略結婚だと理解した上で、結婚したのですか。忌々しい白狼王国がやっと白旗を上げたから嬉しかったのですか? それとも姫を捕虜にするより愛妾にするほうが蹂躙しがいがあると思ったのですか?」
「いったいどこから得た知識だそれは。いくらなんでも、物事を悪く考え過ぎだ」
ユリウスは心底呆れたように、布団の上からアンジェリカに手を伸ばした。軽く撫でる感覚に、アンジェリカは反応に困る。
(懐柔しようとしているの……?)
「後宮に他の妃やメイドを入れなかったのは俺の意思だ。白狼王国は一夫一妻と聞く。いくら政略結婚とはいえど、慣れない我が国に連れてくるのだ。そもそも俺は後宮はあまりに広い上に邪魔だからな。俺が玉座を譲り受けたら、そのまま解体するつもりだ」
「嘘……」
「本当だとも。戦争が続いたのだ。戦争が長引けば、子をたくさん成したほうが、有事の際に困らないだろうが、俺はそもそもアルファだ。アルファは妻をひとりしか娶らない。そもそもその話を貴様の国では聞かなかったのか?」
「……聞いてない。だって、オメガはアルファの子を産むための道具だと……」
「貴様の国の倫理観は本当にどうなっているんだ。そもそも、このアルファやオメガの番制度を最初に制定した国は白狼王国だろうに」
アンジェリカは、ユリウスの言葉にどう返せばいいのかがわからず、だんだんと声が震えてくる。
「わからないわ。本当になんにも」
「そうなのか?」
「私、アルファのフェロモンが顕現されてから、ずっと魔術師団に預けられていたから、一般の知識に偏りがあるのかもしれない」
「なるほど。魔術師は覚えるものがたくさんあると聞く。それこそ一流の魔術師の頭の中には図書館数館ほどの知識が蓄えられていると。つまりは、それが原因で一般知識を得る暇もなかったのだな」
「そのときに……婚約者とも無理矢理別れさせられた……」
そうひと言、言葉を振り絞った途端、今まで我慢していたものが崩れ落ちた。アンジェリカは布団の中で肩を震わせはじめる。
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アンジェリカは元々は白狼王国の三女だった。弟はふたりいるし、姉もふたりいる、ちょうど真ん中。
長姉は弟が国を継げるようになるまで、婿を取って国を守る気満々だったし、次姉は公爵に嫁ぐために花嫁修業に明け暮れていた。
みそっかすだったアンジェリカは、そのうち降嫁するのだろうと、護衛騎士の家系であるエドガーとの婚約が決まっていた。彼女は当時は引っ込み思案な少女だったため、姉ふたりと比べても外交に向いているとも思えず、政略結婚の駒にはいささか心元ないため、陰謀とは縁遠い婚約をまとめたのは、普通に親の愛から来るものだった。
だが、彼女が初潮が来てからしばらく、いきなり高熱で倒れて、魔術師に診てもらって判明したのである。
「姫様はアルファでございます」
その途端に周りの彼女を見る目が一変したのを、アンジェリカはよく覚えていた。
彼女には当時、なんの取り柄もなかった。元々王家の姫たちは見目こそ優れているものの、長姉のような威厳もなければ、次姉のようなファムファタールのような色香もない。それがアルファということで、彼女が魔術師団に預けられた途端に、王家の人々からは遠巻きにされてしまったのである。
それでも、アンジェリカは引き離されてしまったエドガーを忘れることができず、彼女はずっと手紙を送り続けていた。彼女は獅子皇国に人身御供にされることは決まっていたものの、さすがに憐れに思ったのか、魔術師団の面々すら、文通自体は見逃してくれていたのだ。
だが、彼女はある日を境に全くエドガーからの手紙が届かなくなったのに気付いた。
魔術の勉強をしながら、アンジェリカはユールに尋ねた。
「ねえユール。騎士団の鍛錬の場はどちらかしら?」
「姫様? いきなり騎士団に出かけては、騎士団の皆様がびっくりしてしまうのでは」
「でもユール。エドガーから手紙が来ないのよ。もしかすると遠征で怪我をしたのかもしれない。お見舞いに行かないといけないわ」
「それは早合点というものでございます、姫様。それに姫様はあと一年で獅子皇国に嫁ぐのです。もう……いい思い出ということで、そのままお別れしたほうが」
「でも。エドガーからしてみればいきなり婚約者を取り上げられてしまったのよ? 私だっていきなり婚約を破談にしろと言われて悲しかったんだから。ねえ、ユール」
今思うと、ユールは大方の事情を知っていたから、アンジェリカに傷付いて欲しくない一心でなんとか引き留めたかったのだろうが、当時のアンジェリカは愚かでこれっぽっちも寄り添ってくれた人に想いを寄せ返すことができなかった。
だからこそ、根負けしたユールに教えられ、城内の敷地から堂々と騎士団の鍛錬場に出かけ、見てしまったのである。
エドガーが見知らぬ女騎士と寄り添い合ってキスをしているのを。
「でも、私でいいのエドガー? あなた姫様と婚約してたんでしょう?」
「……姫様は美しかったし、降嫁してきたら幸せにする気はあったよ。いきなり蛮族の国に送られるってのはあんまりだって、俺だって最初は思ってた。でもなあ……」
エドガーはなんとも困った顔で、女騎士と話をしていた。
「送られてくる手紙が、だんだん臭くなってくるんだよ」
「臭くなるって? たしかに魔術師団って薬草を大量に取り扱っているけど」
「そんなんじゃないよ。なんていうんだろう……こう。騎士団の鍛錬後の匂いみたいになってくるんだ。なんかこう、殺気立ったにおい。フェロモン」
「……まさかと思うけどエドガー、姫様のこと」
「彼女とずっといたけど、彼女いつも花の匂いがしてたのに、今や騎士団みたいな殺気立ったにおいしかしなくって、本当に彼女は性別が変わってしまったんだと思ったら……もう近付けないよ」
それは年頃の少女の恋が崩れるには、あまりにたやすいものだった。
アンジェリカは今まで、誰からもアルファだと言われたことはなかった。彼女自身がぼんやりしていた上に、魔術師団では年がら年中薬草の匂いがしていたのだから。
だが、殺気を知っている人は気付いてしまう。アルファから放たれたフェロモンは、人に圧力を与えるにおいだと。
もう、可憐な少女とは見られないと。
そのショックで、アンジェリカはアルファのフェロモンが顕現したときのように、高熱を出して寝込んでしまった。そして彼女は、全ての元凶を会ったこともない獅子皇国の婚約者に向けてしまったのだ。
彼はなにひとつ悪いことをしていない。そんなことはわかっていた。でも。
自分を辱めた。殺してやる。本当に自分はアルファになんてなりたくなかった。
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