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入学式
火の国の留学生達
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教室に入ると、入口のすぐ側にイチロウが座り、その後ろにタイスケが席を取った。
アーロンはどちらの隣に座るか少し迷ってからイチロウの隣に座る事にする。申し訳なくてタイスケの方に会釈しながら座ると、にこにこしながら親指を上げて見せたので選択は間違っていなかったようだ。ただ、タイスケの仕草に他の生徒がぎょっとした様な顔をしたので、後でこっそり嗜めた方が良いかもとアーロンは思った。
段々と席が埋まっていくが、何となくだが、イチロウ達の周りを避けているような気がする。それでも最後には席が足りなくなったので埋まったけれど。
(変なの)
アーロンはちょっと嫌な気持ちになった。
初日なので授業は無い。担任と副担任の教師から挨拶があって、講義選択のプリントを渡される。今週中に決めて提出する様にと言い渡され、解散となった。
午後の予定は無いので、アーロンは二人を食堂へ誘って、その後は自室の整理でもしようかと考える。ただ、火の国の二人は前後で顔を寄せ合って何やら内緒話をしているので、もしかしたら予定があるのかも知れない、そうだったら一人で食堂で食べるのは味気ないので売店で何か買って部屋で食べようとアーロンは決める。
「あの……」
話中に声をかけるのは躊躇われたが暫く待っても二人の内緒話は終わらず、教室内に残っている生徒達が段々減っていくのに焦ったアーロンは恐る恐る二人に声を掛けた。
「あー! 美人さんすみません! すっかり放置してしまって」
「いいえ」
にかっとタイスケが笑うのに釣られてアーロンも微笑んでしまう。
「いやー、ほんとに美人さんだな。おいらの国でもアーロン様みたいな美人は滅多にお目にかかれない。お知り合いになれておいら、ほんとラッキー、運命感じちゃう!」
アーロンは馴染みのあるタイスケの話し方にやっぱり、もしかしてと考える。ただその話を他の生徒が居る場所でして良いのかは迷う。
(でも、気にする程の事でも無いかな? 僕が勝手に大事に思っちゃっているだけかしら?)
アーロンは悩ましく思った。しかし二人はアーロンが考え込んでいるのを別の理由だと思ったようだ。
「こら、お前は本当にお調子者だな。アーロン様が困っているじゃないか」
「えええ? だって師匠は褒め言葉は惜しむなっていっつも言ってたから」
「だが、ぐいぐい行くのも引かれるとも教わっただろう?」
(やっぱり)
「あの、もしお二人にこの後お時間があるのなら、一緒に昼食を、と思ったのですが」
「えっ! やっぱり運命じゃん! ね! 若、おいら達とアーロン様おんなし事考えてた!」
タイスケがキラキラと目を輝かせるのに、イチロウがその肩をこらと軽くどつく。アーロンは二人のやり取りが面白くて、くすくすと笑ってしまった。
「いやー、美人さんの笑顔は天下一品だな」
とタイスケがふざけてアーロンを拝むのに、
「ちょっとお前は黙っててくれないか。話が進まない」
とイチロウが呆れたように止める。それがまるで愉快な見せ物でも観ている様で楽しい。
だが、まだ教室に残っている数名が、イチロウ達とアーロンのやり取りを探るようにしながら固まってこそこそと話をしている。それがあまり良い感じがしない。
「自分達もアーロン様をお誘いしようかと話していたんですよ。そうと決まれば早速行きましょう」
イチロウが立ち上がるのにアーロンも続く。多分イチロウも教室の雰囲気に気付いているのだろう。タイスケも分かっていて明るい調子を崩さない。アーロンも気が付いていない振りをする。こういう時、入り口の側の席は便利だ。さっと出て行ける。呼び止められたらどうしようとも思ったが、何も言われないのを良い事にアーロン達は知らぬ体で教室を出る。
歩きながらイチロウが少し声を落として話を続ける。
「それと、昼食は軽く済ませて、夕飯は自分達の部屋で取りませんか? 火の国の料理をご馳走しますよ。本当はさっきその話もしたかったのですが、あの場は空気が悪かったので」
やはりイチロウはクラスメイト達の様子に気が付いていた。
「是非」
「でしたら、早速食堂に向かいましょう。くれぐれも軽めに。火の国の料理は量が多いんですよ」
「軽くでもおいら達は多分アーロン様の普通並に食べるけどね」
背後から、タイスケが会話に入って来る。
「こら、話が進まなくなるから黙ってろと言っただろ」
「へいへい」
アーロンは主従の気安い様子にさっき感じた嫌な緊張感が解ける様な気がした。
「寮への行き帰りはタイスケを付けます」
「え、そんな気を遣わなくても大丈夫です」
「美人さん、変な遠慮したら駄目だよ。お付きの人、いる訳じゃ無いでしょ?」
「うん、まあ、そうなんだけど」
(そこまでしなくちゃ駄目なんだろうか? 確かにさっきの教室の雰囲気は良くなかったけど)
「あ、おいらの腕前心配してる? おいら、こう見えても結構強いよ」
並んで歩くイチロウとアーロンの間に、後ろからタイスケの太い腕がにょきっと生えて来た。握り拳に力を入れて二の腕の膨らみを見せて来る。
確かにタイスケはぽっちゃりしているが、そう言うからにはイチロウの護衛も兼ねているのだろう。
「えっと、それではお言葉に甘えて、よろしくお願いします?」
「うん。お願いされた」
タイスケが偉そうな顔で頷くのにくすくすと笑ってしまう。教室に残っていた生徒達程ではないが、廊下で行き合う生徒の中にもイチロウとタイスケを見て、嫌そうな顔をする者や顔に出さなくてもさりげなく距離を取る生徒がいて、アーロンはなるべくそういう生徒を見ないように気づかない様にしながら、イチロウ達との会話に集中し楽しんでいる様子を崩さないように心がけた。
アーロンはどちらの隣に座るか少し迷ってからイチロウの隣に座る事にする。申し訳なくてタイスケの方に会釈しながら座ると、にこにこしながら親指を上げて見せたので選択は間違っていなかったようだ。ただ、タイスケの仕草に他の生徒がぎょっとした様な顔をしたので、後でこっそり嗜めた方が良いかもとアーロンは思った。
段々と席が埋まっていくが、何となくだが、イチロウ達の周りを避けているような気がする。それでも最後には席が足りなくなったので埋まったけれど。
(変なの)
アーロンはちょっと嫌な気持ちになった。
初日なので授業は無い。担任と副担任の教師から挨拶があって、講義選択のプリントを渡される。今週中に決めて提出する様にと言い渡され、解散となった。
午後の予定は無いので、アーロンは二人を食堂へ誘って、その後は自室の整理でもしようかと考える。ただ、火の国の二人は前後で顔を寄せ合って何やら内緒話をしているので、もしかしたら予定があるのかも知れない、そうだったら一人で食堂で食べるのは味気ないので売店で何か買って部屋で食べようとアーロンは決める。
「あの……」
話中に声をかけるのは躊躇われたが暫く待っても二人の内緒話は終わらず、教室内に残っている生徒達が段々減っていくのに焦ったアーロンは恐る恐る二人に声を掛けた。
「あー! 美人さんすみません! すっかり放置してしまって」
「いいえ」
にかっとタイスケが笑うのに釣られてアーロンも微笑んでしまう。
「いやー、ほんとに美人さんだな。おいらの国でもアーロン様みたいな美人は滅多にお目にかかれない。お知り合いになれておいら、ほんとラッキー、運命感じちゃう!」
アーロンは馴染みのあるタイスケの話し方にやっぱり、もしかしてと考える。ただその話を他の生徒が居る場所でして良いのかは迷う。
(でも、気にする程の事でも無いかな? 僕が勝手に大事に思っちゃっているだけかしら?)
アーロンは悩ましく思った。しかし二人はアーロンが考え込んでいるのを別の理由だと思ったようだ。
「こら、お前は本当にお調子者だな。アーロン様が困っているじゃないか」
「えええ? だって師匠は褒め言葉は惜しむなっていっつも言ってたから」
「だが、ぐいぐい行くのも引かれるとも教わっただろう?」
(やっぱり)
「あの、もしお二人にこの後お時間があるのなら、一緒に昼食を、と思ったのですが」
「えっ! やっぱり運命じゃん! ね! 若、おいら達とアーロン様おんなし事考えてた!」
タイスケがキラキラと目を輝かせるのに、イチロウがその肩をこらと軽くどつく。アーロンは二人のやり取りが面白くて、くすくすと笑ってしまった。
「いやー、美人さんの笑顔は天下一品だな」
とタイスケがふざけてアーロンを拝むのに、
「ちょっとお前は黙っててくれないか。話が進まない」
とイチロウが呆れたように止める。それがまるで愉快な見せ物でも観ている様で楽しい。
だが、まだ教室に残っている数名が、イチロウ達とアーロンのやり取りを探るようにしながら固まってこそこそと話をしている。それがあまり良い感じがしない。
「自分達もアーロン様をお誘いしようかと話していたんですよ。そうと決まれば早速行きましょう」
イチロウが立ち上がるのにアーロンも続く。多分イチロウも教室の雰囲気に気付いているのだろう。タイスケも分かっていて明るい調子を崩さない。アーロンも気が付いていない振りをする。こういう時、入り口の側の席は便利だ。さっと出て行ける。呼び止められたらどうしようとも思ったが、何も言われないのを良い事にアーロン達は知らぬ体で教室を出る。
歩きながらイチロウが少し声を落として話を続ける。
「それと、昼食は軽く済ませて、夕飯は自分達の部屋で取りませんか? 火の国の料理をご馳走しますよ。本当はさっきその話もしたかったのですが、あの場は空気が悪かったので」
やはりイチロウはクラスメイト達の様子に気が付いていた。
「是非」
「でしたら、早速食堂に向かいましょう。くれぐれも軽めに。火の国の料理は量が多いんですよ」
「軽くでもおいら達は多分アーロン様の普通並に食べるけどね」
背後から、タイスケが会話に入って来る。
「こら、話が進まなくなるから黙ってろと言っただろ」
「へいへい」
アーロンは主従の気安い様子にさっき感じた嫌な緊張感が解ける様な気がした。
「寮への行き帰りはタイスケを付けます」
「え、そんな気を遣わなくても大丈夫です」
「美人さん、変な遠慮したら駄目だよ。お付きの人、いる訳じゃ無いでしょ?」
「うん、まあ、そうなんだけど」
(そこまでしなくちゃ駄目なんだろうか? 確かにさっきの教室の雰囲気は良くなかったけど)
「あ、おいらの腕前心配してる? おいら、こう見えても結構強いよ」
並んで歩くイチロウとアーロンの間に、後ろからタイスケの太い腕がにょきっと生えて来た。握り拳に力を入れて二の腕の膨らみを見せて来る。
確かにタイスケはぽっちゃりしているが、そう言うからにはイチロウの護衛も兼ねているのだろう。
「えっと、それではお言葉に甘えて、よろしくお願いします?」
「うん。お願いされた」
タイスケが偉そうな顔で頷くのにくすくすと笑ってしまう。教室に残っていた生徒達程ではないが、廊下で行き合う生徒の中にもイチロウとタイスケを見て、嫌そうな顔をする者や顔に出さなくてもさりげなく距離を取る生徒がいて、アーロンはなるべくそういう生徒を見ないように気づかない様にしながら、イチロウ達との会話に集中し楽しんでいる様子を崩さないように心がけた。
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