抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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授業

夕食の事

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 注文した物が来て食べ始める。確かに、ライム先輩以外の三人の分は大盛りだ。
 イチロウの頼んだサラダプレート、茹で卵とマッシュルームと馬鈴薯のマヨネーズ和えは下半分位が葉っぱだった。イチロウは嬉しそうにもりもりと食べているが、アーロンは自分だったら途中で飽きそうと思ってしまう。
 
 「ところで、夕食はどうするのかい? 一緒に食べるなら手配をしておくが」

 ライム先輩が聞くのに、イチロウがフォークを置いた。

 「その件なのですが、今晩は男爵家の寮で一年生の歓迎会が行われるそうです」
 「ほう、男爵家の寮ではその様な事を行っているのだね」
 「はい。自分達火の国の人間も誘って頂きました」
 「なるほど、では今晩は問題なさそうだね」
 「はい」

 タイスケは鯖のフライとライスを交互にぱくぱくと食べているが、アーロンは食の進みが鈍くなる。自分の事でライム先輩とイチロウ達を煩わせてしまっている。

 「明日以降だが、取り敢えず昼食はまた私に三人で付き合って欲しいな」

 ライム先輩が碧い瞳を優しげにイチロウ、タイスケの瞳に合わせ、最後にアーロンの所で止める。

 「ね?」

 嫌な訳が無い。無いけれど、それで良いのかという考えがアーロンの頭から離れ無い。

 「少し考える時間が欲しいです」

 つい思ったままを口に出してしまう。それは、昼食の事だけじゃなくてライム先輩が言っていた愛し子の事もだ。

 「うん、気持ちは分かるけど、食べて。私も食べながら話そう。昼休みは有限だから」

 手の止まっているアーロンと、真面目な話をする為にフォークを置いていたイチロウを促し、ライム先輩も食べ始める。ライム先輩は姿勢も美しいし、ナイフとフォークを握る指や爪の先まで隙が無い。

 「アーロン様は考える迄も無いっす」

 食べるのに夢中になっていたタイスケが急に会話に入って来る。

 「難しく考え過ぎっす」

 言い方が少し突き放す様にきつい。うじうじと悩んで見えるアーロンに苛ついているのかもしれない。でもタイスケは当事者じゃ無いから、急に見た目を騒がれて、自分の意思関係無しに周囲に取り合いされて戸惑っているアーロンの気持ちなんて分からないと思う。

 「ライム先輩に助けて頂けなかったら、アーロン様一人であいつらと食事ですよ。朝も昼も夜も。ずっと連れ回されるっす、多分」
 
 それは嫌だ。嫌だけれど、だからってライム先輩や、火の国の二人、男爵家の一年生達に頼って良いのか。

 「それだけじゃ無いっす。クラスもおんなじだから、ずっと一緒に居る様に強要されますよ。おいら達とは別行動っす。あいつら、おいら達の事嫌ってるから。寮で夜寝る時位っすかね、離れられるの。下手したら、あいつらの寮に移れって言われるんじゃ無いっすか?」
 「それは……」

 幾ら何でも言い過ぎだと思う。特に最後のは。
 だがライム先輩もタイスケに同意見の様だ。

 「そういう事も過去にはあったそうだよ。爵位の高い生徒が、低い生徒を無理矢理自室に住まわせる事が。使用人の様な事をさせていたそうで、問題になってね。今では学院もそういう問題には積極的に介入する様になっているけれど、だからと言って安心は出来無い。双方合意の上だと言われてしまったら学院も強くは出られないからね」
 「あ」

 (そっか、だからキース先輩なら子爵家の子息達が男爵家の寮にやって来た事を学院に抗議する、ってルーク先輩は言ってたのか)

 あの男爵家の寮は、学院内で爵位が一番低い男爵家の子息達にとっては安息の地なのだ。だから守らなければならない。爵位が上の生徒に、自分達の庭の様な顔で踏み込まれる訳にはいかないのだ。

 「そんな顔しないでくれ給え」

 ライム先輩が困った様に、アーロンの頬に手を伸ばす。ひんやりした手に触れられて、はっとアーロンは目が覚める様な思いがした。

 「全てがそういう生徒ばかりでは無いのだよ、本当に信頼や友情があって爵位関係無く交流している生徒もいる。将来、主従として働く約束をしている生徒もいる。ただね、彼等は違うだろう、君もそう思っているから彼らの誘いに嫌悪感を感じているのではないのかい?」
 「そうですね」

 あの子爵家の生徒達は好きになれない。ずっと彼等と一緒に居るのは嫌だ。でもだからと言って皆に助けて貰うのは如何なのか……とやっぱり元の場所へ考えが戻ってしまうアーロンだった。
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