抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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授業

迷子

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 最初は順調だったのだ。
 キースはまず、便所を案内してくれた。Aクラスの前だけでなく、Eクラスの前にもあった。

 「お手洗いは二箇所あるけど、多分あっちは王太子殿下目当てで使う生徒が多いかも。まあ殿下があそこを使われるかは分かんないけど、少しでも接点持ちたかったら殿下の教室に近い方を使うよね」

 Aクラスの前の便所に行ったと話したら、Eクラスの前の方へ案内してくれた。

 「Eクラスに危険人物がいる場合は近寄らない方が良いんだけど、多分今年はCクラスのジーサン達が一番危険」
 「うわ、そうなんすね」
 「だから、彼等が使わない方を利用するのが良いと思う」
 「了解っす」
 「あ、アーロンちゃんは個室を使ってね! 先輩との約束だよ」
 「はい」

 何故アーロンだけに言うのか不満ではあるが、兄からも言われているので、素直に頷く。

 「じゃあ、校舎から出て説明しようか」

 しっかりとキースに手を握られ、アーロンとタイスケが引っ張られて行くのに、残り二人がついて来る。このまま真っ直ぐ行けば男爵家の寮だが、今日は左に曲がる。左へ行く道は太く大きな道になっていた。その太い道を歩きながらキースが説明する。

 「えっと、ここが魔獣学科。君達従魔に興味無いみたいだから、あんまり関係無いかな。あ、アーロンちゃんはちょっと関係あるかも。魔獣から取れる魔石とか、素材についても研究してるので。それらが魔道具の素材になったりするからね」
 
 太い道の左手に魔獣学科の校舎があった。中には入らず、建物の外側から説明を聞く。貴族学院の構内はかなり広いのに地図は無く、一度で覚えられるか不安だ。

 「後ろは温室。薬草も育てているので、関係あるのはイアン君かな」

 ガラスの温室がある。

 「このまま真っ直ぐ行くと北門。今日は出ないんで、門の前で右に曲がります。まあ歩いてると分かると思うんだけど、この太い道、大通りって僕達は呼んでるんだけど、大通り沿いに主な施設が全部ある。そして、我等が男爵家の寮は大通りから見事に外れているのだ」

 確かにいつも、寮から校舎や食堂に行く時に使っている道は細く、夜は薄暗くて裏通りと言った印象だった。

 「男爵家の寮へ道は近道だけど、夜遅くなる時は遠回りでもこっちの大通りを使った方がいいよ。夜道は危ないからね! で、あそこが修練場、一般教養の剣術の講義で使う。ぷにちゃん二号は選択教科でも使う。で、あれは知ってると思うけど、講堂。入学式あそこでやったよね?」

 講堂の時計台と鐘楼は、大きくて立派なのでアーロンの部屋からも時間が分かるので便利だ。

 「食堂、は分かるよね。いつもこっちから来てないでしょ? 斜めに来た方が校舎から近いもんね。で、あっちが医学科で、こっちが魔道具学科。イアン君とアーロンちゃんは場所を覚えてね。で、この左の銀杏並木を抜けたら正門」

 少し黄色くなって来た銀杏の木々のずっと向こうに見える大きな門は、入学式の朝に三番目の兄ケビンとアーロンが別れた場所だ。
 正門には向かわずにそのまま大通りを真っ直ぐ行く。

 「あそこが薬学科、イアン君はあそこも興味があるなら関係あるね。医学科の人でも薬学とる人ととらない人がいるから。で、売店。イアン君はお昼此処迄買いに来たんだよね? 遠いのに、凄いね」

 確かに食堂からはちょっと離れている。売店がこんな所にあるとはアーロンは知らなかった。てっきり食堂の近くにあると思っていた。イアンは、もしかしたらルークに聞いて施設の場所も分かっているのかもしれない。

 「あっちが文学科と語学科、アーロンちゃんとぷにちゃん一号、イアン君も関係あるね。で、あそこは経済学科、ぷにちゃん一号は関係あります。で、ここで左に曲がると南門。南門の横が事務局ね。こっちが図書館」
 「うわあ、広いっすねえ」
 「うん。まあ最初の内は迷うだろうから、早めに移動した方が良いね」
 「確かに」
 「あ、アーロンちゃん、こっちに旧図書館があるんだけど」

 と、キースがタイスケから手を離し、アーロンだけをぐいぐい引っ張る。

 「魔道具関係はこっちの方が詳しいんだってー」
 「え、そうなんですか!」
 「うん、あとね、魔道具の博物館もあってね」
 
 それは是非見てみたいと、アーロンは喜んでついて行った。勿論残りの三人もついて来てると思って。
 しかし、旧図書館の前に着いたら、キースと二人っきりだった。

 「あれ、先輩、イチロウ様達来てない……」
 「え! あ、本当だ。逸れちゃったのかな? ちょっとアーロンちゃん此処で待っててくれる? 僕一走りして見て来るから」
 「はい」

 キースはたたたっと元来た道を走って行った。どこで逸れたのだろう。てっきり三人も一緒だと思ったのに、魔道具と聞いて、すっかり夢中になってしまっていた。反省していると、不意に知らない集団に声を掛けられた。

 「あれ、一年生のかわい子ちゃんじゃん」
 
 

 

 

 
 

 

 

 


 
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