35 / 142
授業
必殺技
しおりを挟む
声を掛けて来たのは見知らぬ生徒達だった。背が高く、制服を着崩している。首元のボタンは一つ二つ開いていて、ネクタイはしていないし、ブレザーの前も閉じていない。だらしが無い感じがする集団だ。背が高いので恐らく上級生だろう。あまり関わり合いになりたくは無いが、無視したら難癖をつけられそうだ。
何故キースと一緒に行かなかったのかと後悔してしまう。
「今日は。先輩ですか?」
「うわ、声も可愛い」
挨拶したからか、急にぐっと距離を詰めて来られ、囲まれてしまう。「今日は」だけで良かったか、「先輩ですか?」なんて聞いたせいで愛想良くとられ、向こうから話し掛け易くしてしまった、失敗した嫌だなと思うが、頑張って七割位の笑顔を維持するよう心掛ける。
「そう、先輩だよー」
「俺ら三年生」
自分の顔を指差して小さな子に教えでもする様に答える仕草は馬鹿にされているみたいだし、にやにやとした笑い方も下卑ていて苦手だ。アーロンを見下ろしてその頭の上で彼等だけに分かる会話を始めるのも感じが悪い。
「こりゃあ、デクスターが騒ぐのも分かるわ」
「ああ、お前の生意気な弟か?」
「うん、同じクラスみたいでさ」
デクスター? あの苦手な子爵家の集団で一番乱暴な生徒だ、キース言うところのジーサンの身内らしい。そう言われれば顔の作りは似ている様な気がする、兄は弟より大分痩せているが。
「あいつより先に俺がものにしてやろうかな」
と舌なめずりするのが気持ち悪い。
「あいつむかつくんだよ、三男の癖に、親父に自分が後継でも良くないか、とか言い出してさ。Cクラスの癖に」
「そう言うお前は万年Eクラスじゃ無いか」
「そうだけどさあ、三男の癖に嫡男の俺を追い落とす気なら、よっぽど頭が良いとかじゃなきゃ無理だろ。Aクラスとかさあ。俺だって本気出せばCクラスには簡単に戻れる訳よ、だからCクラスで威張るのはお門違いってもんだ。大体、俺等みたいな嫡男に学院の成績なんて関係ないよな、領地経営なんてさあ自分の領地のやり方さえ覚えれば良いんだから卒業後で十分」
「まあ確かに。どうせ領地は後継のもんだし。家に帰ってまた親父から教わるのに、学院で勉強する意味なんて無いよな」
「そもそも俺はさあ、現状維持、親父がやった事をそのままの形でやって行くつもりな訳。なのにデブスターの奴、これからの領地経営はもっと上を目指して行くべき変わらなきゃ駄目だとか言い出して」
「大方、最近一緒に居る、ジーミル家とジーチン家の餓鬼の影響だろ。あいつら魔石のせいで良い気になってるから」
「ほんと迷惑なんだよなあ。金魚の糞のくせに気ばかり大きくなりやがって、あ、横幅もか」
はっはっは、だからデブスターか、上手い事言うじゃん、と随分と楽しそうに盛り上がっているので、このままアーロンの存在を忘れてくれないかと、少しずつ少しずつ後ろに下がってみる。会話に夢中でアーロンへの興味が薄れて包囲網が緩くなっている様だから。
しかしそうは問屋が下さなかった。
「おおっと、かわい子ちゃん、何処へ行く気かな?」
「逃がさないぜ」
「先輩達と遊ぼうよ」
あっという間にまた囲まれてしまう。今度はさっきよりぎゅっと包囲網も小さく狭くなっていて、もう逃げ出すのは無理そうだ。此処はやっぱりあれの出番だろうか、ブレザーの下に着込んであるし、彼らが自分達の会話に夢中になっていた時に準備はしてある。
ただ何方へ逃げるか決めて置かなければ。方向的にはキースが向かった方へ逃げるのが安全だろう。けれどキース達に合流したとして、この集団に勝てるのかは疑問だ。キースは男爵家だから同じ三年生でもデクスターの兄に爵位で負ける。もし力技で来られたらタイスケがいるが、上級生の集団は六人程、一人で対応できるのか。どう見てもイアンは喧嘩には向かなそうだし、キースもほっそりしていたから怪しい。イチロウは不明。せめてイチロウの家の爵位が伯爵位相当だとしてくれていればと思うが、デクスターの兄であるなら火の国の二人の身分関係無しに見下しそうだ。どうしよう。
考え込んでいたら、手首を掴まれ、肩に腕を回された。これはもう、やるしか無い。アーロンは兎に角走って逃げようと決め、必殺技の装置を稼働させた。
「うわ、なんかびりってした」
上級生が肩から手を離した所で、走ろうとするが、手首は握られている。だがそのままアーロンは走る。何故ならアーロンの手首がするっと抜け、ついでにぱっちんとアーロンの手首を握っていた上級生の手にばねが当たって挟まれたからだ。
「いってえ!」
「痛っ!」
「何だこれ、手が抜けたぞ!」
「うわああ」
今の内、とアーロンは走る。駆けっこなら負けない自信がある。取り敢えずこいつ等を振り切って、人がいる場所へ行こうと走り出した。
何故キースと一緒に行かなかったのかと後悔してしまう。
「今日は。先輩ですか?」
「うわ、声も可愛い」
挨拶したからか、急にぐっと距離を詰めて来られ、囲まれてしまう。「今日は」だけで良かったか、「先輩ですか?」なんて聞いたせいで愛想良くとられ、向こうから話し掛け易くしてしまった、失敗した嫌だなと思うが、頑張って七割位の笑顔を維持するよう心掛ける。
「そう、先輩だよー」
「俺ら三年生」
自分の顔を指差して小さな子に教えでもする様に答える仕草は馬鹿にされているみたいだし、にやにやとした笑い方も下卑ていて苦手だ。アーロンを見下ろしてその頭の上で彼等だけに分かる会話を始めるのも感じが悪い。
「こりゃあ、デクスターが騒ぐのも分かるわ」
「ああ、お前の生意気な弟か?」
「うん、同じクラスみたいでさ」
デクスター? あの苦手な子爵家の集団で一番乱暴な生徒だ、キース言うところのジーサンの身内らしい。そう言われれば顔の作りは似ている様な気がする、兄は弟より大分痩せているが。
「あいつより先に俺がものにしてやろうかな」
と舌なめずりするのが気持ち悪い。
「あいつむかつくんだよ、三男の癖に、親父に自分が後継でも良くないか、とか言い出してさ。Cクラスの癖に」
「そう言うお前は万年Eクラスじゃ無いか」
「そうだけどさあ、三男の癖に嫡男の俺を追い落とす気なら、よっぽど頭が良いとかじゃなきゃ無理だろ。Aクラスとかさあ。俺だって本気出せばCクラスには簡単に戻れる訳よ、だからCクラスで威張るのはお門違いってもんだ。大体、俺等みたいな嫡男に学院の成績なんて関係ないよな、領地経営なんてさあ自分の領地のやり方さえ覚えれば良いんだから卒業後で十分」
「まあ確かに。どうせ領地は後継のもんだし。家に帰ってまた親父から教わるのに、学院で勉強する意味なんて無いよな」
「そもそも俺はさあ、現状維持、親父がやった事をそのままの形でやって行くつもりな訳。なのにデブスターの奴、これからの領地経営はもっと上を目指して行くべき変わらなきゃ駄目だとか言い出して」
「大方、最近一緒に居る、ジーミル家とジーチン家の餓鬼の影響だろ。あいつら魔石のせいで良い気になってるから」
「ほんと迷惑なんだよなあ。金魚の糞のくせに気ばかり大きくなりやがって、あ、横幅もか」
はっはっは、だからデブスターか、上手い事言うじゃん、と随分と楽しそうに盛り上がっているので、このままアーロンの存在を忘れてくれないかと、少しずつ少しずつ後ろに下がってみる。会話に夢中でアーロンへの興味が薄れて包囲網が緩くなっている様だから。
しかしそうは問屋が下さなかった。
「おおっと、かわい子ちゃん、何処へ行く気かな?」
「逃がさないぜ」
「先輩達と遊ぼうよ」
あっという間にまた囲まれてしまう。今度はさっきよりぎゅっと包囲網も小さく狭くなっていて、もう逃げ出すのは無理そうだ。此処はやっぱりあれの出番だろうか、ブレザーの下に着込んであるし、彼らが自分達の会話に夢中になっていた時に準備はしてある。
ただ何方へ逃げるか決めて置かなければ。方向的にはキースが向かった方へ逃げるのが安全だろう。けれどキース達に合流したとして、この集団に勝てるのかは疑問だ。キースは男爵家だから同じ三年生でもデクスターの兄に爵位で負ける。もし力技で来られたらタイスケがいるが、上級生の集団は六人程、一人で対応できるのか。どう見てもイアンは喧嘩には向かなそうだし、キースもほっそりしていたから怪しい。イチロウは不明。せめてイチロウの家の爵位が伯爵位相当だとしてくれていればと思うが、デクスターの兄であるなら火の国の二人の身分関係無しに見下しそうだ。どうしよう。
考え込んでいたら、手首を掴まれ、肩に腕を回された。これはもう、やるしか無い。アーロンは兎に角走って逃げようと決め、必殺技の装置を稼働させた。
「うわ、なんかびりってした」
上級生が肩から手を離した所で、走ろうとするが、手首は握られている。だがそのままアーロンは走る。何故ならアーロンの手首がするっと抜け、ついでにぱっちんとアーロンの手首を握っていた上級生の手にばねが当たって挟まれたからだ。
「いってえ!」
「痛っ!」
「何だこれ、手が抜けたぞ!」
「うわああ」
今の内、とアーロンは走る。駆けっこなら負けない自信がある。取り敢えずこいつ等を振り切って、人がいる場所へ行こうと走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…
月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた…
転生したと気づいてそう思った。
今世は周りの人も優しく友達もできた。
それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。
前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。
前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。
しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。
俺はこの幸せをなくならせたくない。
そう思っていた…
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる