抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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授業

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 子爵家の生徒達はまた鐘が鳴るのと同時に教室に戻って来た。もうここ迄鐘が鳴ると同時に入って来るのなら、その前迄廊下に居て鐘が鳴ったから入って来ているでは?と思えてしまう。だったら中で鐘を待てば良いのにとアーロンは思った。まあ、彼等とあまり接触したくないから、好きなだけ廊下に居てくれて構わないが。
 続いて、担任や副担任、補佐の生徒達も入って来た。

 「やっほー、皆元気?」

 キース先輩も戻って来た。

 「お昼何食べた?」

 とイアンの背中にべったり貼り付く。イアンは嫌そうにキースの手を剥がそうとしているが、よりぎゅうっとくっつかれて諦めたようだ。そして、ねえ、ねえとしつこく聞かれて「パン」と答えた。

 「パンって、定食頼まずにパンだけ?」
 「売店のパン」
 「え、売店で買って食べたの?」
 「はい」
 「えー、売店で買うとお金かかるじゃん、食堂ならただだよ」
 「あんなに沢山食べられない」
 「うえ、そうなの?」

 キースはイアンの返答に驚いた顔だ。気持ちは分からないでもない。キースは痩せているが背が高い、朝食の様子を見ていなかったらアーロンも意外に思っただろう。

 「じゃあ他の皆も? って君達はライム様と食べたのか」
 「そうっす」
 「どう? どう?」
 「鯖のフライを食べたっす」
 「いや、フライじゃなくてさあ。僕だって、食堂の献立は知ってるし」
 「ええ、じゃあなんでイアン様に聞いたんすか」
 「何?」
 「いや、なんでもないっす」

 と逃げるタイスケを追う様に、今度はキースはタイスケに貼り付いた。タイスケは重いと文句を言ったので、キースに頬を突っつかれている。

 「じゃあ、ぷにちゃん一号、どうだった?」

 キースにじいっと見つめられたイチロウが、

 「あ、自分の事ですか?」

 と聞くのに、うんうんとキースが頷くので、そうですねとイチロウは思い出す様に空を見上げてから、

 「幸せな時間でした。美しい方々を見ながら、美味しい物を食べられて」

 とにっこりした。

 「若は綺麗な人や物が大好きなんです。後マヨネーズ。マヨラー?っていうらしいですよ」

 師匠から聞いたんすけど、とキースに頬を突っつかれてぶすくれながらタイスケが付け加える。
 それを聞いてアーロンにはタイスケがサラダプレートを頼んだ謎が判明した。

 「ふうん、ぷにちゃん一号はマヨネーズが好きなのか。そりゃあこの体型になるね」

 今度はイチロウの頬を突っつき出す。さすがにイチロウに貼り付いたりはしないのは人を選んでやっているのだろうか。

 「と、そろそろ僕等も移動しよっか」

 キースは教室を見回し、殆どの班が出て行ったのを確認してタイスケから離れた。

 「それと、ぷにちゃん二号の運動系同好会なんだけどさ、あのジーサン達と一緒が良い?」
 「ジーサンって何すか」
 「子爵家のでかい顔してる三人組だよ。みんな家名がジで始まるから僕が付けた!」
 「おおう。なんか微妙だけど本人にばれ難い様な気もする良い名付けっすね」
 「でしょ? で、どうなの?」
 「一緒じゃない方がいいと思うっす」
 「だよねー。僕もそう思って、担任の先生にどこ回ったか聞いて来たんだよー」
 「おう。意外と仕事出来る人っすね、キース先輩」
 「でしょう!」

 タイスケはかなり失礼な物言いをしていると思うのだが、キースは気にしていないし寧ろ褒められて嬉しそうだ。

 「あそこの家、あんまりいい噂聞かないしね。だからジーサン達がどこ入ったか聞いてから、皆決めた方がいいかなと思ってさあ。だから二時間目あんまり回らなかったんだよー。決して怠けてたとか、自分の同好会に誘いたかったとかじゃないからね! で、ジーサンなんだけど、運動系軒並み回ってるみたいで、ジーチン以外は割と太めじゃん? だから運動興味ないと思ってたんだけど、三人とも体動かすの好きらしい。それでぷにちゃん二号はもうちょっと待った方がいいかもー。まあそれを言っちゃったら、ぷにちゃん二号もちょっと太めなんだけども」

 何だかごちゃごちゃ言っているが、要はタイスケはまだ同好会を決めない方が良いとの事だった。

 「そうなんすか、分かりました」
 「うん、分かったら案内するね!」
 「あざっす!」
 「うん、じゃあ行こうか」

 と、キースはタイスケの手を取った。そしてアーロンの手も。アーロンには話し掛けたり、貼り付いたりして来なかったので見逃されていると思ったが、違った。また疲れる時間が始まるのか、とアーロンはちょっとうんざりだ。そしてキース先輩の手はやっぱりかさついていた。
 

 
 
 
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