抱かれてみたい

小桃沢ももみ

文字の大きさ
51 / 142
愛し子

お開き

しおりを挟む
 アーロンはラムステーキと、スコッチエッグと、ミートローフを平らげた後、牛肉と豆の煮込みを手に取った。そろそろお腹も膨れてきたので、これが終わったら葡萄でも食べようかなと目を付けている所だ。

 「よお、アーロンよく食べるな」
 「リバー先生」

 リバーはあちこちを回って生徒達と満遍なく話している。やる気が無さそうに見えたが、案外ちゃんとした教師らしい。

 「せんせ、先生も食べて!」

 そこへ、ミートローフののった皿を持ってキースが突撃して来た。

 「おお、悪いな」

 リバーは皿を受け取ると、「肉だけかあ、サラダも食いたいな」と言ってキースを取りに行かせた。

 「全く、あいつは気が利くんだか利かないんだか」

 と苦笑するリバーに、

 「先生、お飲み物もどうぞ」

 アップルサイダーのジョッキを持って来たのは、伯爵家の婿になると答えたアレックスだ。アレックスはふわふわの茶色い髪をした少年で、可愛らしい顔立ちをしている。同じクラスではないので、アーロンはまだ話した事がない。話し掛けようとしたら、誰かに呼ばれて戻って行った。その時にばいばいと小さく手を振るので思わず振り返してしまった。仕草が可愛い。自分にああいう愛らしさは無いので、彼の方が周りに守られるべき存在に相応しいのではと思ってしまう。
 キースはサラダを取りに行った先で仲の良い生徒を見つけたようで戻って来ない。相変わらずの自由さだ。
 折角横に来てくれたから、アーロンはリバーと会話する事にした。

 「もう、あの続きしないんですかねー」
 「やりたいのか?」
 「やりたくは無いですけど」

 キースが怒り出して歓談になった後は、皆自由に樽からアップルサイダーを汲み出して飲んでいる。ルークが言っていた、『一年生は宿題の答えが合っていないと飲めない』という条件は無視されている訳だが、当のルークは気にしていないようだ。結局また寮長やイチロウ達と熱心に話し込んでいるので気が付いていないのかもしれない。
 アーロンの宿題は、何でルークが皆に宿題を出す羽目になったのかという事だった。色々考えたけれど、今答えるなら『キースのせい』だ。キースが銀妖精と騎士がなんちゃらと言っていたから、彼が楽しみたかっだけなのだろう。だけどそれをキースを悪者にしないで上手に言葉に出来る自信が無い。別に思ったまま言ってもキースは怒らなそうだが、やらないでくれた方がありがたい。

 「まあ、俺としては全員同じ寮にする案も良いとは思う。この雰囲気を他の寮の奴等にも味合わせてやりたい」

 リバーは優しい顔で騒ぐ生徒達を眺めている。

 「他の寮ってこんな風に集まって食事したりはしないんですか?」
 「ああ。派閥があるんで寮全体で何かやる事はないな。仮にもしやったとしても、食堂で個室を貸し切って正統派の食事会だな」
 「そうなんですか」
 「学院生活は三年間だけだから、馬鹿やって仲間とわいわい過ごす喜びを教えてやりたいんだがな。まあ、追い追いだな。追い追いって言っても、ずうっと先の追い追いだが、此処も昔からこういう雰囲気だった訳じゃないし、いつかは奴等も変わるかもしれない」

 (リバー先生って、爵位は何処の出何だろう? ここの寮監をしているって事は、男爵家なのかな? でも、懐中時計を持っていたよね。あれって、確か物凄くお高いはず……)

 アーロンは談話室にライム先輩が来た時にリバーが懐中時計を出して時間を確かめていたのと、昨日秘密の花園で王太子が懐中時計を持っていた事を思い出していた。

 「そう言えば、ライムの息子の件はどうすんだ?」

 (ライムの息子って言えちゃう身分なのかな?)

 「まだ考え中です」
 「そうか、まあ悩むなら兄貴に相談しろ」
 「兄ですか?」

 (兄ってどの兄……、いっぱい居るんだけど)

 「お前が愛し子に抵抗があるっていうのは兄貴から聞いている。どうしても嫌なら無理に受け入れる必要は無い。だがな、断ったらどうなるかも考えておけ。今日の事は程度が軽い方だ。もっと酷い目に遭う可能性もあったんだからな」
 「はい」
 「傷付いた生徒にこんな事を言うのは碌でも無い教師だと思うかもしれんが、この学院で色々見て来た大人の意見だと思ってくれ」
 「はい」

 (真剣に考えよう、取り敢えず明日は先輩と二人きりで食事をしてみる。もし二人っきりが気まずかったら、そもそも愛し子なんて無理な訳だし。逆に楽しかったらその先を……、うっ、あんまり考えたく無いけど……考えてみてもいいし。それに先輩だって、今はまだ僕の事見た目しか知らない。二人っきりになって話したら、思ったのと違うやっぱり止めるってなるかもしれないし。後、魔道具の件も聞いてみよう。うん、色々考えるより取り敢えず聞いてみてそれから考えよう。もしも魔道具の勉強する時間なんて無駄だとか言われたら断れば良いんだし)

 ルークやキースのした事はアーロンの為になったのかというと、そうでも無いのかもしれない。でも向き合うきっかけにはなった。自分は家族構成や外見で周りから愛し子狙いだと見られている、という事をアーロンはしっかり理解出来るようになったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...