抱かれてみたい

小桃沢ももみ

文字の大きさ
52 / 142
ライム先輩と

一週間後

しおりを挟む
 入学して一週間経った。ライム先輩とアーロンが二人で昼食をとるようになってから、徐々に廊下の生徒は減って行き、今では殆ど居なくなった。
 イアンが言うには、今廊下にいる生徒は王太子かアレックス狙いらしい。
 王太子狙いの生徒は元々多い、そもそも王太子と同じ学年になるのを狙ってどの家も子供を作ったのだ。だからこそ、ここ数年の貴族学院の生徒数が多くなっているのだ。が、王太子の方もそれは分かっているので、廊下で張っている様な生徒は通行の邪魔だと相手にしていない。
 そして男爵家の寮の歓迎会で「伯爵家の婿になる」と答えたふわふわした茶色い髪のアレックスは、一年生の中ではアーロンに次ぐ人気だそうだ。
 三男だし可愛らしい見た目なので、愛し子狙いと周りからは見られているが、頑張って就職活動する気は無いそうだ。これは本人から聞いた。家からは「王太子殿下と親しくなれなかったら無理に相手は探さなくて良いから、家に帰って来なさい」と言われているので縁がなければそれで良いと笑っていた。三男でも末っ子だし、家も裕福だとイアンから聞いたのでアーロンとは身の上が違うのだろう。

 今、アーロンは朝食はイアンと寮長と火の国の二人に加えて男爵家の一年生、昼食はライム先輩と二人で、夕食は男爵家の一年生に加えキースやルーク等の男爵家の上級生といった顔触れで食べている。その時に何度かアレックスと一緒になる機会があって話すようになったのだった。
 アレックスはDクラスだが、アーロンのクラスの子爵家の連中の様に横柄な態度をとる生徒はいない為クラス仲が良く、級友と行動している事が多い。ただアーロンを見かけると、手を振って来たり、「アーロン様みっけ」と抱き付いて来たりする。話すようになったと言っても、抱き付かれる程仲良くなったとは思えなかったので、最初は驚いたがアレックスにはそれを許してしまうような愛嬌があってアーロンはすっかり慣れてしまった。

 「うふふ、アーロン様今日も良い匂い」

 と突然後ろからふわっと抱き締められてくんくんと首元を嗅がれた後ばいばいと手を振りながら走って行く。何度もされて慣れて来たアーロンは特に反応もせずにされるままである。が、良い匂いというのは気になっていて、

 「僕、何か匂うのかな?」

 と周りに聞いてみた。アーロンは特に香水を付けたりはしていない。

 「柑橘系の匂い」とイアン。
 「ラベンダーの香りがします」とは寮長。
 「ミルクの匂いがするっす」とはタイスケ。 

 「ミ、ミルク?」

 柑橘系とラベンダーは分かる。兄から貰った化粧水と、箪笥に入れているハーブの香りだ。だけどミルクは分からない。くんくんと自分を嗅いでみる。まさか乳臭いって事だろうか、暗に親離れ出来てないってタイスケに皮肉られているのかと不安になっていると後ろからのし掛かられた。

 「アーロンちゃんってなんか赤ちゃんみたいな匂いがするんだよねー」

 キースだ。同じ抱きついて来るのでも、アレックスのとは全然違う。アレックスはふわっとくっついて来るのに、キースは全体重をかけて来るから重い。体も前のめりになって潰された様になりちょっと苦しい。

 「赤ちゃんの匂いって、乳臭いって事ですよね……」
 「いや、そういう本物の匂いじゃなくって、僕もまあそんなに赤ちゃんに会った事って無いんだけど、何かこう可愛らしい幼い子供の匂いって言うか」
 「やっぱり、お乳の匂いじゃないですか」
 「いやそうじゃなくってね」

 アーロンは不貞腐れた。

 「うーん、何だろう? 清らかな香り?」
 「ええ?」

 (もしかして未経験っていう意味なの? そりゃあ愛し子のキース先輩からしたらそうかもしれないけど……、タイスケ様だって人の事は言えないんじゃ? え、もしかして言えちゃうの?)

 びっくりしてちらちらとタイスケを見てしまう。

 「なんすか?」
 「え、ううん。何でもないよ」

 (イアン様と、寮長だって違うよね。イチロウ様も勿論違うよね?)

 他の面々の顔も見てしまう。

 「何?」
 「何か?」
 「何でしょう?」
 「ううん、何でもないよ」

 何故か一人、顔を赤くしてしまうアーロンだった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...