抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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ライム先輩と

キースへの返事

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 「えー、アーロン様行かないんすか?」

 昼食後の講義は美術だ。今日は静物のデッサンで皆で林檎を描いている。

 「うん、ライム先輩が来月連れて行ってくれるって言うからそれ迄待つ事にした」
 「そうなんすか。じゃあ、若、おいら達も止めときましょうか?」
 「そうだな」
 「え、そうなの?」
 「だって、アーロン様が行かないなら、おいら達、キース先輩の逢引きについて行く様なもんじゃないすか」

 タイスケの言葉にイチロウが頷く。

 「そうかな? じゃあ来月僕とライム先輩と一緒に行く? 先輩はそれでもどうかって仰ってたよ」
 「行きます!」

 タイスケのあまりに早い返事に、アーロンは、何故キースについて行くのは嫌で、自分とライム先輩について来るのは平気なのか疑問に思った。顔に出ていたのだろう、

 「だって、アーロン様達と違って、キース先輩達ってすっごいべたべたいちゃいちゃしそうじゃないっすか」

 とタイスケが嫌そうな顔をする。

 「ああ、どうだろうね?」

 (確かにキース先輩の普段の様子から考えたら、久しぶりに会ったらずっとべったりくっついてそう。それに対してお相手の方どういう態度をとるのかは知らないけど、キース先輩が甘えそうなのは想像が付く……)

 「でも、人前では大ぴらにはくっつかないんじゃない?」

 アーロンの家は貧乏だから父にも長兄にも愛し子は居ないし、他の兄達は愛し子にはならなかった。唯一六番目の兄が母より年上の未亡人の愛人になったけれど家を出たきり会ってないから普段どうしているのかは知らない。六の兄とは事情が違うかもしれないが所詮愛人なのだから、そんなに大ぴらにはしないんじゃないだろうか。学院の中なら兎も角、街中には人目もある。
 すると何度も林檎の輪郭を消しては描き消しては描きしているイアンにタイスケが聞いた。

 「イアン様、その辺どうなんすか?」
 「家による」
 「そうなんすか?」

 イアンは、木炭で汚れた手を嫌そうに見て、画用紙の端で拭った。

 「あ」

 見ていた全員がそれに声を上げる。

 「だってハンカチで拭いたら汚れる」
 「じゃあパンで拭えば」
 「パンもう無い」
 「だからって作品で拭うのは……」

 イアンはもう嫌になったように、木炭をイーゼルに置いた。

 「一般的には愛し子を秘書として採用するの多い。家によっては隠す。でも堂々としてる家もある。キース先輩がどうかは知らない」

 と言った後で、はっとしてアーロンを見ると気まずそうな顔をして、少し小さな声になって、

 「ライム様も知らない」

 と言った。アーロンが、

 「大丈夫。気にしてないよ」

 と言うとイアンはほっとしたような顔になる。その横でイチロウが自分のパンを半分にして、イアンに渡した。イアンは礼を言って手を拭く。イチロウは更に自分の残りを半分にして画用紙の端の汚れを消すようにイアンに促した。

 「でも、そうなるとキース先輩に断りに行かないっとっす」
 「あ、そうだよねー」
 「キース先輩はいつ出られるのでしょう?」

 金曜日のキースは夕食は食べずに出掛けてしまう。

 「キース先輩は一般教養しか取っていないから……」
 「きっと講義終わったら直ぐ出て行くっす」
 「だよね」
 「でも四時間目同好会かも?」
 「うーん」

 四人は考え込んだ。

 「じゃあ、おいら男爵家の寮迄一走りするっす。多分この中で一番足の速いのおいらっす」
 「そうだな。では自分とアーロン様は三年生の教室に行ってみましょうか? 級友にお聞きすればキース先輩のご予定が分かるやも」
 「そうだね」
 「ついてく」
 「えー、でもイアン様は関係無いから、イチロウ様と二人で大丈夫だよ」
 「ついてく」
 「え、そう?」

 アーロンがイチロウを見ると、頷いたので講義が終わり次第二手に分かれる事になった。

 
 
 
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