抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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ライム先輩と

火の国語入門

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 三年生のBクラスを目指す。真ん中がアーロンで左右がイチロウとイアンだ。
 アーロンを襲おうとした生徒達は一週間の謹慎となった。家には知らされていない。相手側から「先にアーロンが攻撃して来たから反撃したのだ」という主張があったが、証拠が出なかったしどう見てもアーロンの方が小柄で弱者な上に、元々問題の多い生徒達だったので学院側が強く出たのだ。ライム先輩からの抗議も後を押したと聞く。彼等が来週迄は教室に来ないと分かっているからこそ、三年生の教室迄上がって来られたのだ。
 三人でぎゅうぎゅうにくっつく様にして歩く。三年生はやはり身体が大きい、一年生とは明らかに違って大人とそう変わらない体格の生徒が多く不安になる。
 
 「あれ? 銀妖精ちゃん。ライム様の教室は隣だよ」
 「すみません。キース先輩はいらっしゃいますでしょうか?」

 Bクラスから出て来た生徒にアーロンが尋ねた。男爵家の先輩ではない知らない顔だ。

 「キースに会いに来たのか、奴なら次の講義に行ったけど」
 「何の講義かご存知ですか?」

 Bクラスの先輩と話していると、聞き慣れた優しい声がした。

 「アーロン君どうしたのかい?」

 ライム先輩だ。誰かが知らせたらしく、Aクラスの教室から出て来てくれた。

 「あ、先輩」

 思わず笑みを浮かべると、「可愛い~」と三年生達から声が上がる。

 「お昼にご相談した件で、キース先輩にお断りしに来たんです」
 「ああ、そうだったのか。私から代わりに伝えておけば良かったね」
 「いいえ、僕が誘われたのに先輩のお手を煩わせるなんて」

 自然とイチロウとイアンは少し下がって、ライム先輩がアーロンの隣に立つ。

 「バートか。キース君は何の講義に行ったんだ?」

 アーロンに話し掛けて来た生徒はライム先輩の知り合いのようだ。先輩が代わりに聞いてくれる。

 「火の国語入門って言ってたけど」
 「え!」

 アーロンは驚いてイアンを振り向く。二人とも今日の四時間目の火の国語入門の講義を取っているが、今日も休講だった筈だ。

 「休講じゃないんでしょうか?」
 「いや、そこの掲示板に今朝、掲示が出てたぞ」

 指をさされてアーロンとイアンが掲示板を見る。キースに学院の案内をされた時に、一年生の掲示板の場所を教えて貰った。一年生の教室の並びの真ん中辺り、丁度Cクラスの前にあるのだが、三年生も同じ所にある。

 「えええ」

 二人でずんずんと寄って行くと、確かにお知らせが貼ってあった。

 「どうしよう、見逃してた」

 イアンと顔を見合わせていると、ライム先輩が寄って来た。

 「アーロン君達もとっているのかい?」
 「はい。そうなんです。行かなくちゃ」
 「場所は分かるかい?」

 アーロンがイアンを見上げると、

 「図書館の裏」

 と答えた。
 図書館、それはアーロンにとって鬼門だ。何故なら先週上級生に襲われそうになった場所だから。その為、あれ以来図書館に行っていない。図書館の本に興味を示していたイチロウ達も合わせてくれて図書館に行くのを我慢してくれていた。

 「送ろう」

 とライム先輩が申し出てくれるが、アーロンは断った。

 「先輩、この後ご予定があるのでは?」
 「馬術同好会の時間だが、遅れて行くよ。おい、バート頼めるか?」
 「かしこまりー」

 ひらひらとバートが手を振って応えた。



          ☆



 早足で歩きながらアーロンがライム先輩に尋ねた。

 「先輩馬術同好会に入ってたんですね」
 「ああ。馬術が好きだと言うよりも馬の為でね。領地から連れて来た馬を運動させる為に入ったのだよ」
 「そうなんですね」

 イアンとイチロウは後ろからついて来ている。二人は静かだ。タイスケが居ないからアーロンとライム先輩の会話に割り込んで来る声は無い。
 イチロウは火の国語入門はとっていないが、タイスケと同好会の会室、キースに連れて行かれたキャベツの部屋で待ち合わせたので、そこに行くついでだ。ライム先輩もこの後同好会の会室に行くので、アーロンとイアンを送った後、イチロウを連れて行ってくれると言う。
 最初イチロウは断った。距離にしたら、三年生の教室から真っ直ぐ同好会の会室に言った方が近いからだ。だが、イチロウに独り歩きをさせるのを不安に思ったアーロンがライム先輩に送られてくれるように頼んだ。火の国の二人は、偏見を持つ生徒から狙われ易い。今の所実害は無いしイチロウも武術の心得はあるようだが、ライム先輩と一緒に行動すれば無駄な争いを避けられる。
 
 「それにしても、同じ学年の方とは大分砕けた話し方をされいて驚きました」

 くすくすとアーロンが笑うと、ライム先輩は恥ずかしそうにした。

 「バートだからだよ。彼とは同じクラスだった事もあるのでね。それに彼はいつもあの様な調子だから」
 「同じ伯爵家の方なのですか?」
 「いや、子爵家だ」
 「子爵家」

 アーロンは余り子爵家の生徒には良い印象を持っていなかった。今迄出会った子爵家の生徒が皆高圧的で感じが悪かったからだ。

 「子爵家にも色々居るからね。彼は飄々として話し易い人物だよ」
 「そうなのですね」
 


         ☆



 ライム先輩に文学科の校舎迄送って貰って、別れる。鐘が鳴り出すのに慌ててイアンと教室に入ると、見知った顔がいくつかあった。小さく手を振っているのは、キースとアレックスだ。そして教壇にもう一人。

 「よう、アーロン遅刻だぞ」

 にやりとこちらを見ていたのは、アーロンの三番目の兄ケビンだった。

 
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