抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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ライム先輩との冬

髪色変えの魔道具と木曜日の予約

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 「ところでお二人ともおいら達を見て何か気がついた事はないっすか?」

 とタイスケが得意げに、アーロンとイアンに聞いて来たので二人は首を傾げた。
 特に変わりは無いようだ。風邪を引いて休んでいたからタイスケが少し痩せた、とかかもしれないが丸っこい体型に然して変わりは無い。それにおいら達、と火の国の二人の事を言っているから、タイスケだけの変化では無い筈だ。

 「うーん」

 とアーロンは近寄ったり離れたりしてみる。

 「そう言われてみれば、何か違う気がする。……けど、分からない」

 イアンは頷き、「降参!」と直ぐに音を上げた。
 アーロンはそんなに直ぐには諦めたく無かったので、首を左右に曲げて横から見てみたり、タイスケの後ろに回ってみたりした。同じ事をイチロウにもやってみる。それから、イチロウを赤らめさせる程に近付いて顔をじいっと見つめてから、タイスケにも同じように近付くと、「あっ!」と声を上げた。

 「すっごいどきどきしたっす」
 「うむ」
 「睫毛がめっちゃ長かったっす」
 「そうだな」

 二人はぱっとアーロンから離れるとくっついてひそひそ話していたが、アーロンは大興奮だ。

 「分かった! 髪色の魔道具が来たんでしょ! 眉毛と睫毛の色が違う」
 「正解っす!」
 「見せて見せて」

 アーロンが強請るとタイスケが袖口を手繰って銀色の腕輪を見せてくれた。あの魔道具屋で見た無骨なのとは違って、幅はそこそこあるが薄くなり、綺麗な意匠が全面に彫られた美しい腕輪となっていた。これならただの装飾品としても遜色ない仕上がりである。イチロウのも見せて貰うと、そちらは金色だった。

 「重い?」
 「いや、あの時のより全然軽いっす」

 と両腕を振り回すタイスケとアーロンが盛り上がっていると、イアンが近付いて来て、上からタイスケとイチロウの旋毛を見下ろして見比べると、納得したように頷いた。

 「?」
 「髪の毛、根元黒くなって来てた」
 「ああ、そっかー」
 「火の国語入門で、火の国の人は髪の色黒いと習った」
 「そうだねー」

 とアーロンが頷く。火の国の二人は自分達の脳天を抑えた。

 「成る程、イアン様はお背が高いから」
 「うう。上から見て気付かれていたとは盲点だったっす」

 アーロンが一番ちびで、火の国の二人はそれより少し大きい位。のっぽのイアンは三人より頭一つ分位大きい。

 「まあいいじゃない、今日貰ったの?」
 「熊公と一緒にさっき受け取ったっす」
 「そっかあ、良かったねー」
 「はい。その、高価な物なので直ぐに身に付ける事に致しました」
 「うん、それで良いと思いよー」
 
 二人も満足そうなので、良かったとアーロンは嬉しくなった。



          ☆


 
 今日の昼食は、アーロンはタルタルチキンカツ、ライム先輩はマグロテールのローストだ。イチロウもきっとチキンカツにしただろうなと思いながら、アーロンはライム先輩に報告する。

 「火の国の二人の魔道具届きました! あと、フォアグラも美味しかったです! ありがとうございました!」
 「そうかい。良かった」
 「はい。二人もとっても喜んでました。魔道具の仕上がりも素晴らしくて」

 とアーロンは思い出してうっとりしてしまう。
 本当に素晴らしかった。高い物らしいから触らなかったけれど、じっくり見せて貰った。不思議な事に魔石は一つも見当たらなかった。全面に彫られている意匠は魔法陣だと思うのだが、イチロウとタイスケによると火の国の動物や植物も彫られているそうだ。イチロウのには鷲が、タイスケのには猿がいて、それが二人の家の守り神と同じだと喜んでいた。

 「喜んで貰えて、私も嬉しいよ。あの店主は腕は間違いない。フォアグラも王家に納品する物よりは劣るがそれなりの物を用意させたからね。アーロン君達なら沢山食べるだろうと大きい物にしたし」

 とライム先輩は片目を瞑って見せた。

 「はい。確かにとっても大きかったです」

 今日もライム先輩はかっこいい。金髪が太陽の光に照らされてきらきらと光り輝いているし、碧い目は優しげにアーロンを見つめている。片目を瞑って見せるのもとっても絵になっていた。

 「ところで、木曜日の夕食だが、何を食べたいか決まったかい?」
 「あ、そうでした」

 アーロンはちょっともじもじしてしまう。両手の人差し指を合わせながら、上目遣いでライム先輩を見上げた。

 「その、僕、この間のお肉のシュークルトがとても美味しかったのでまた食べたいです」

 あの味が忘れられないのだが、ライム先輩にとっては故郷の味だ。前回はアーロン達に故郷の料理を紹介したいという意図があったけれど、食べ飽きているかも知れない。また同じ料理というのは嫌だろうとアーロンには言い出し難かったのだ。
 だが、ライム先輩は快く頷いてくれた。

 「それは嬉しいが、前と同じ店で構わないのかい?」

 同じ店でもアーロンにも否やは無い。

 「はい。それは大丈夫です! でも、先輩はそれでも宜しいのでしょうか?」

 あんまりにもあっさり受け入れてくれると、返って心配になってしまう。

 「勿論。君が食べたい物をと言ったのは私だし、我が領地の味を気に入ってくれたのなら喜ばしい限りだよ」
 「良かったです」
 「うん。前菜もこの間と同じが良いかい?」
 「あ、いえ、それは変えて頂いて構わないです」
 「そう。では、違う物を用意させよう。我が領は海鮮も美味しいのだよ。楽しみにしておいてくれ給え」
 「はい!」
 
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