抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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ライム先輩との冬

愛し子だけの大切な話

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 アーロンは自室で、アレックスとキースに挟まれてベッドに腰掛けていた。正面にはちゃっかりアーロンの椅子に座った、三番目の兄のケビン。
 火の国語入門の講義が終わると、急に寄って来たアレックスとキースに両側から腕を組まれて挟まれるに自室に連れて来られたのだ。アーロンも、三人の後からついて来たイアンも何が何だか分かっていない。そしてアーロンの部屋に着くと、「これから愛し子同士の大切な話がある」とイアンは入れて貰えなかったのだった。
 部屋に入ると、何故か既にケビンが居て、しかもアーロンが隠していたケビンから受け取った火の国の文箱を見つけ出していた。

 「アーロンちゃんは素直で助かるよ。何処に隠したのかすぐ分かる」
  「ああ、また、人の部屋の物を勝手に!」

 思わず声を上げると、まあまあと両脇二人から宥められてしまった。

 「先生、先に用意してくれてたんだよ、有難いじゃん?」
 「見本無いよりあった方がいいと思うよ?」

 アーロンは、はあと溜息ついてから、

 「だいたい、愛し子同士の大切な話ってなんですか? 僕、夕食迄の間に少しでも勉強しておきたいんだけど、アレックス様だってそうでしょ? もうすぐ試験なのに。キース先輩は三年生だからもう必要ないのかもしれないけど……。それに外では話せない事って言われて結局僕の部屋まで来ちゃって、兄上が、その文箱を出した所を見るとやな予感しかしない」

 とケビンを見て、次にアレックスを見たが、アレックスは曖昧に微笑むだけだ。
 仕方ないので、アーロンはキースの方を向いた。

 「キース先輩は何で居るんですか? いつも金曜日は急いで出掛けて行きますよね?」

 アーロンの疑問にキースは片目を瞑って見せると、

 「えー、そんなのアーロンちゃんの為に時間を作ったに決まってるじゃーん! 現役愛し子からお話聞きたいでしょ?」

 と押し付けがましい事を言って来たが、うきうきしているのが丸分かりで、絶対に楽しんでいる!とアーロンは軽く睨み付けた。すると反対側からアレックスが身を乗り出す様にして、

 「キース先輩、今晩は主様が仕事でアパルトメントに来るのが遅くなるから、それ迄夜一人で待ってるの怖いって行かなかっただけだよ」

 と教えてくれる。

 「ちょ! 何でアレちゃん言っちゃうの?」

 とキースが慌てたが、そんな事だろうと思っていたアーロンは、

 「そうですか。ふーん」

 と冷たい目で頷いた。キースはぎゅっとアーロンの細腕にしがみ付き、

 「アーロンちゃんが冷たい。悲しい~」

 と泣き真似をする。このしがみつきが地味に痛い。
 アーロンは力持ちだが、それでも痛い。キースという人は加減を知らない人だ。おまけにガッツリ体重をかけて来るので重い。反対側のアレックスが羽の様に軽く、何処か柔らかでふんわりといい匂いをさせているのとは対照的だ。
 正直、この人の主様になろうって思う人が居るなんて信じられない、どんな人なんだろう、見てみたいけど、キース先輩と近しくなり過ぎても碌な事が無さそうのでこのまま会わずに居た方が良い様なとアーロンは思ってしまう。

 「それに、アレックス様も何で? 愛し子にならないんじゃ?」

 と、アーロンが今度はアレックスに水を向けると、アレックスはふんふーんと鼻で歌うようにしながら白く細い指を振った。

 「絶対じゃないの。いい人が居たらって思ってるの。それに僕なら、アーロン様の苦手分野について助言出来ると思うの」
 「苦手分野?」
 
 アーロンは首を傾げた。

 「うん、アーロン様は可愛いって言われたら嬉しい?」
 「いいえ」
 「でしょー。でも、僕は嬉しいの! どうやったら可愛いって言われるかいつも考えて行動してるの。だからアーロン様にライム様に可愛いって思われる秘訣を教えてあげられると思うんだ」
 「可愛い……」
 
 するとキースが二人の会話に割って入って来た。

 「でもさあ、ライム様はアーロンちゃんの飾り気の無さがお気に召してると思うんだよね。アレちゃんみたいなあざといのはお気に召さないのでは?」
 「酷いよ!」

 キースの無遠慮な指摘にアレックスが目をうるうるさせて、アーロンに更に身を寄せる。アーロンは思わず、慰めるようにアレックスのそのふわふわな茶色い頭を撫でた。

 「あ! ほら! それだよそれ! 早速、アーロンちゃん、引っ掛かってるじゃーん!」

 とそれを見たキースが口を尖らせる。
 アーロンがアレックスの柔らかな髪の毛の感触を楽しみながら、

 「え、でもアレックス様って普段からこうですよ? わざとやってるとかじゃなくて、こういう性格なのでは?」

 とキースに応えると、アレックスが嬉しそうにぱんと手を合わせた。薄桃色に頬を染めて嬉しそうにしているアレックスの大きな瞳はきらきらしていて吸い込まれそうになる。

 「ね! 僕、アーロン様に可愛いを教えてあげられるでしょ?」

 更に可憐に小首を傾けたのを見て、アーロンはどきどきしてしまった。

 (確かに可愛い、可愛いけど! え、否定しないって事は作ってるの?)

 僕には出来そうもない、とアーロンは思った。

 「て、訳で、人選に間違いはねえぞ! アーロンちゃんの初体験を成功させて、ライムのが、じゃない、息子をアーロンちゃんに、よりメロメロにさせよう作戦始まりだぜ!」

 ケビンが我が意を得たりという様に、会話に入って来た。アーロンはその内容を聞いて、「な!」と真っ赤になった。慌てて両隣を見ると、二人とも満足げにうんうんとケビンの言葉に頷いている。

 「え、僕の部屋でしか話せないって、そういう事?」

 アーロンは赤い顔でケビンを睨み付けた。相手がケビン一人だったらアーロンがちゃんと聞かないで逃げ出すと見込んで、二人を引き入れたのだ。間違いない。

 
 
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