抱かれてみたい

小桃沢ももみ

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ライム先輩との冬

ケビンの伝えたい事

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 「アーロン様大丈夫?」

 どんどんと部屋の扉を叩く音と、心配したイアンの声が外からした。それ以外の生徒の声もする。

 「ちっ、野次馬が居そうだな」

 とケビンは乱暴に椅子から立つと、ずかずかと歩いていって、勢い良く扉を開けた。そこには「うわ」とアーロン達と目があって気まずそうにする男爵家一年生の生徒達。

 「お前等、とっとと食堂に行け。夕食の時間だろ?」
 「でも、アーロン様も」

 追い払うケビンにイアンが言い募るが、きっぱり言い切られた。

 「こいつ等の夕食の心配は無用。リバーに手配を頼んで貰うから、下で食う」

 そして自分の耳に付けている耳飾りを弄ると、リバーと通話し出した。それが終わると、

 「ここから先は防音の魔道具使うからもう盗み聞きはできねえぞ!」

 と扉を閉めてしまった。更に耳飾りを弄っているケビンにキースが話し掛ける。

 「先生のそれ、リバー先生からの贈り物? お揃いだよね?」
 「え、ああ、まあな。性能が良いから着けてやってる」

 言い方は悪いが、満更でも無い顔をしている所を見ると、リバーとの関係は上手くいっているのだろう。ケビンは戻って来るとどんと椅子に腰を下ろし、「で?」とアーロンを見た。

 「見た所、アーロンちゃんは一回も此の箱の中身、試して無い様だけどだいじょぶなのか?」

 にやにやとしている兄が憎たらしい。

 「何でそんな事、兄上に心配されなくちゃならないの……」

 真っ赤な顔のまま、不貞腐れてアーロンは言い返したが、つんつんとケビンにおでこを指で突っつかれてしまう。

 「あのなあ、これでも兄として心配してるんだぞ! そりゃあ初めてだし、アーロンちゃんはマグロで良いんだろうけど、万が一ライムの息子がとんだ変態さんだった時どうする? うちの可愛いアーロンちゃんに間違った知識を正しいもんとして教え込まれたりしたら?」
 「ライム先輩はそんな人じゃ無いもん」
 
 言い返すとまたおでこをつんつんされ、

 「ばっかだなあ、どんなに普段が真面目だって、お綺麗な顔してたって、男なんて一皮剥けばどエロい事しか考えてねえっての!」

 と言われてしまう。アーロンは、「ライム先輩だって初めてだって言ってたもん」と言い返したかったが、それは流石に先輩の個人情報を晒す事になってしまうので言うのを我慢した。代わりに別の事を言う。

 「兄上が、実家に居る時に、聞きたくも無いのに勝手に沢山、色々話して来たから、大体の事は分かってるもん」

 アーロンの返事に両側の二人が興奮した様に「ひゃあ」と声を上げる。

 「ん? まあ、色々話したけどよ、アーロンちゃん恥ずかしがってあんまちゃんと聞いてなかったじゃん? ちゃんと分かってるのかなあ、ってお兄たまは心配でさあ。だから、流れ言ってみ?」
 「は?」

 とアーロンは両側の二人を見た。此の二人の前で?と混乱していると、キースとアレックスが期待する様にこちらを覗き込んでより密着して来る。

 「あ、待って! 先生、まぐろって何ですか?」

 急にアレックスが手を挙げて、ケビンに質問した。

 「お? マグロってのは魚の名前で、そいつがまあでっけえ魚なんだけど、まな板の上で捌かれる時は、こうどーんと転がったまんまだから、火の国では、ヤってる最中にされるがまんまで、自分からは何もしねえ奴の事を言うんだ」

 とケビンが両腕を広げて魚の大きさを伝える様にしながら話す。それを聞いて、アレックスは「ふうん」とアーロンを見てから、頷いた。

 「そうだねえ。積極的なアーロン様も見てみたいけど、やっぱり初めての時は初心な感じで、今みたいに真っ赤になって、いつも元気なアーロン様が、こうやってすっごく恥ずかしそうにしてるのが、ライム様は可愛いって思われそうだもんね!」
 「だろ? やっぱ、アレックスはアーロンの事良く分かってんな!」

 アレックスとケビンが盛り上がっているのに、アーロンは顔を上げていられなくなる。膝に顔を埋めてしまいたい。しかしアレックスはキースも巻き込んで更に苦手な話題を続けていく。

 「ねえ、キース先輩の初めての時はどうだったの?」
 「え、僕? うーんとね!って、だめだめ! 話さないよ!」
 「えー」
 「アレちゃんもアーロンちゃんも、初体験を済ませたら一緒に恋話しよ。今はだめ、僕だけが話すのって不公平だよ!」
 「え、そういうもの?」
 「そうです!」
 「えー、え~。ねえ、アーロン様もキース先輩の初体験の話、聞きたいよね?」

 とアレックスがアーロンの腕を強請る様に揺すってくるが、アーロンはもう消えてしまいたい。

 「だめだめ、絶対だめ!」

 とキースが声を張り上げる。アーロンは、ああこのまま終わってくれないかな、と期待したが、そうは問屋が許さなかった。

 「おお、確かにそうだな。アレックスもあんまりしつこくキースに聞くのはマナー違反だぞ。キースが話したいってんならじゃんじゃん聞いてもいいが、そうで無いなら止めとけ」
 「はーい」
 「で、話を戻すが、大体は分かってるアーロンちゃんは、なんか、不安な事とか、経験者に聞いておきたい事はねえのか? 恥ずかしいのかも知んねえけど、結構貴重な時間だぞ、今」

 ケビンの言葉に、両側の二人が「そうだよー」「アーロン様大丈夫?」と揺すって来るが、アーロンは話したく無い。暫く、ケビンはアーロンの返事を待っていたが、諦めた様だ。

 「うーん。だめそうだな。こうなったら、アーロンちゃん、意地でも口を開かなくなるからな」
 「えー、そうなのー?」
 「アーロン様ー」
 
 確かにアーロンはもう顔を上げるつもりは無かった。此の恥ずかしい時間を何とかこのままやり過ごしたい一心だった。

 「分かったから、そのまんまで良いから、これから大事な事を言うから、耳の穴かっぽじって良く聞いとけよ」

 ケビンが言うのに、アレックスが手を挙げて、「大丈夫! 僕が代わりにちゃんと聞いときます!」と言うのに、キースが「はい!僕も、僕も! 二人の先輩だからね」と応える。

「おお、アーロンちゃんは、良い友達と先輩を持ったな」

 ケビンが嬉しそうにアーロンの頭をわしゃわしゃと撫でると、話し出した。

 「もし嫌な事を強要されたら、ちゃんと嫌だって言うんだぞ! 我慢すんなよ。変な事されても何がおかしいのか、分かんねえんじゃねえかと思って、此の時間を作ったんだけどな、アーロンちゃんは話したくねえみたいなんで、何処迄分かってんのか確認するのは止めとく。もしどうしても止めてくれなかったら、本気で暴れてもいいからな! 賠償金の事は心配すんな!」

 ケビンの手がアーロンの肩に掛かる。本気と言うからには、力任せに暴れてもいいという意味だろう。

 (そんな大金なんて持ってない癖に、兄上ったら)

 「仕事だからって変態プレイを我慢する必要なんて全然ねえからな、そう言うのがアーロンちゃんのお好みなら話は別だが、いや、もしそうなら兄は色々アドバイス出来るが。えへん」
 
 下を向いたままのアーロンが銀の髪の隙間から、睨んでいるのに気が付いたケビンは慌てて咳払いすると真面目な顔を作った。

 「まあ、俺の言いたい事はだな、セックスってのはいいもんだって事だ。俺は大好きだから、アーロンちゃんにも大好きになって貰いたいって」
 「もー! 兄上!」

 アーロンは聞いていられなくなって、兄の口を手で押さえた。
 
 

 
 
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