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一年生の冬休み
図書館
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「ところでアーロン様はこの後のご予定は?」
「何処か行かれるならご一緒しますよー!」
「え」
二人に聞かれてアーロンは考えた。真っ直ぐ寮に帰るつもりだった。何をするかと聞かれてまず思い浮かんだのは、自分の部屋に戻ってごろごろしたい。魔道具の本を読んだり、何か仕掛けを作るのも良いかもしれないなあという事だ。
疲れている気もするが結構元気だ。頭の芯がまだ沸騰している様な高揚感がある、部屋に戻ってごろごろするのは勿体無い気がした。行きたい所を思い付いた。
「二人がいいなら、僕、図書館に行きたいんだけど、構わない?」
今のアーロンには読みたい分野があった。今迄興味も無かったけれど。
ただジョンとセドリックとは時々話すけれどこうやって三人で行動する事は無い。だから、二人が本好きか、図書館に興味があるのかも知らない。もし嫌でもタイスケみたいにぶうぶう文句を言う性格では無いと思っているが、興味が無いのに付き合わせたら悪い。もし二人が嫌そうなら行くのを止めようかなと思いながら尋ねた。
「図書館! それは一人で行かせたらいけないと言われたとこ!」
「まさか、アーロン様僕達に会わなかったら一人で行くつもりでした!?」
「え? ううん。聞かれたから思い付いただけで、二人に会わなかったら真っ直ぐ寮に帰るつもりだったよ」
「ならいいですけど」
「うん」
腕を組んでわざと偉そうな顔をする二人に苦笑する。二人はイアン程では無いがアーロンよりはずっと背が高いので、見下ろされる格好になる。まあアーロンは一年生の中で一番ちびなので誰もがアーロンを見下ろす事になるのだが。
「えっと、じゃあ図書館行ってもいい?」
「はい!」
「嫌と言われても付いて来ますよー!」
アーロンは二人に言われて、うっかりしていたがよく考えてみれば不用心だったと気が付いた。
寮へ帰るには何通りかの道筋があるが、アーロンは人通りの多い大通り経由で帰るつもりだった。馬車寄せのある正門から銀杏並木を真っ直ぐ歩いて行くと、学院の大通りに突き当たる。学院の北と南を真っ直ぐに繋いでいるその道は大通りと呼ばれているだけあって、学院の主な建物がその通りに面しているので、生徒の減った冬休み中であってもそれなりに人通りがあるので安心だ。
だが、大通りの終点、端っこ迄歩くとそうもいかない。特にアーロンが帰る南側は、寮が男爵家の寮しか無い事もあって端へ行く程、人通りがぐっと減るのだ。それに入らなくてもどうしたって図書館の近くを通る事になる。図書館は大通りの南側終点に位置するからだ。図書館というのは不思議な場所だ。中に入れば驚く程人は居るのに、外には全く人気が無い。こんな生徒の少ない時期に一人でその周辺を歩くのは迂闊だった。
(あの上級生は退学になったし、子爵家の三人も自領へ帰っているけれど、先輩も居ないんだもんね。僕が自分で気を付けないといけないんだった)
アーロンはまざまざとあの時の事を思い出した。ただただ逃げるのに夢中だった。上級生達に捕まるつもりは無かったし、何かされたら一矢報いる位の強気が自分にはあった。けれどライム先輩と一夜を共にしてみた後だと彼等が匂わせていた行為がどういう事か、あの時の本能的な追われる恐怖と嫌悪だけでなく、もっとはっきり肉体の感触迄想像出来てしまう。アーロンはぶるっと震えた。
(ああ。嫌だ嫌だ。あの人達とは二度と会いたくない。ああいう目にも二度と会いたくない)
「アーロン様むつかしい顔してどうしたんですか?」
「うんうん。もしや図書館って小難しい分厚い本をお求めに?」
アーロンが考え込んでいると、二人に上から覗き込まれた。
「え? そんな顔してた?」
「うんうん」
「こういう顔」
とジョンがセドリックのほっぺたをぎゅっと両側から挟み込んで潰す様にした。それをジョンは顔を近づけてよく見てから、「あ、違うな」と今度は眉間に皺を寄せる様に指でぎゅっと挟む。それに合わせてセドリックが険しい顔つきをして見せる。
「え、えええ? 僕そんな顔してたかなあ?」
「はい!」
「もしや僕等には難解な本は理解出来ないとお考えで遠慮されているのではと」
「安心して下さい、ちゃんと理解出来ますよ」
「セドリックが!」
「題名だけ!」
「ええええ?」
くすくすとアーロンは笑ってしまう。
「えっと、そうじゃなくてね、僕、小説を読みたいんだ」
「小説! それはどんなのですか?」
「二人は小説好きなの?」
歩きながら尋ねると、ジョンが答えた。
「セドリックは好きですよ。冒険物。な?」
「うん。鍛え抜かれた筋肉が出て来る話が好きです!」
「ぶれないな」
ははははと楽しそうに笑うジョンにアーロンは尋ねた。
「ジョン様は? どんなのが好き?」
「え。えーと」
赤くなって右と左の人差し指をつんつんと当て俯くジョンの肩をセドリックががっと組む。
「こいつは、恋愛小説が好きです!」
「あ! 言うなあああああ」
言った後に、セドリックの口を塞いでもう遅い。ジョンが止めるにも関わらずセドリックは楽しそうに暴露していく。
「男女の恋愛物も好きだけど、男同士のも最近お気に入りだよね! 特にライム様とアーロン様が愛子の関係を結ばれてから」
「あぅ」
ジョンは恥ずかしそうにアーロンをちらっと見ると、頭を抱えて「穴があったら入りたいいいい」と悶えている。けれどアーロンにはそのセドリックの暴露が僥倖だった。
「あ! そうなんだ。実は僕が読みたいのも、男同士の恋愛小説なんだけど……」
多分セドリックの暴露がなかったらアーロンもはっきり口には出来なかったろう。図書館でもうまく誤魔化して探すつもりだった。アーロンの言葉にジョンはばっと顔を上げると目をきらきらさせた。
「ほんとですか!? だったら図書館よりもっといい所があります!」
「何処か行かれるならご一緒しますよー!」
「え」
二人に聞かれてアーロンは考えた。真っ直ぐ寮に帰るつもりだった。何をするかと聞かれてまず思い浮かんだのは、自分の部屋に戻ってごろごろしたい。魔道具の本を読んだり、何か仕掛けを作るのも良いかもしれないなあという事だ。
疲れている気もするが結構元気だ。頭の芯がまだ沸騰している様な高揚感がある、部屋に戻ってごろごろするのは勿体無い気がした。行きたい所を思い付いた。
「二人がいいなら、僕、図書館に行きたいんだけど、構わない?」
今のアーロンには読みたい分野があった。今迄興味も無かったけれど。
ただジョンとセドリックとは時々話すけれどこうやって三人で行動する事は無い。だから、二人が本好きか、図書館に興味があるのかも知らない。もし嫌でもタイスケみたいにぶうぶう文句を言う性格では無いと思っているが、興味が無いのに付き合わせたら悪い。もし二人が嫌そうなら行くのを止めようかなと思いながら尋ねた。
「図書館! それは一人で行かせたらいけないと言われたとこ!」
「まさか、アーロン様僕達に会わなかったら一人で行くつもりでした!?」
「え? ううん。聞かれたから思い付いただけで、二人に会わなかったら真っ直ぐ寮に帰るつもりだったよ」
「ならいいですけど」
「うん」
腕を組んでわざと偉そうな顔をする二人に苦笑する。二人はイアン程では無いがアーロンよりはずっと背が高いので、見下ろされる格好になる。まあアーロンは一年生の中で一番ちびなので誰もがアーロンを見下ろす事になるのだが。
「えっと、じゃあ図書館行ってもいい?」
「はい!」
「嫌と言われても付いて来ますよー!」
アーロンは二人に言われて、うっかりしていたがよく考えてみれば不用心だったと気が付いた。
寮へ帰るには何通りかの道筋があるが、アーロンは人通りの多い大通り経由で帰るつもりだった。馬車寄せのある正門から銀杏並木を真っ直ぐ歩いて行くと、学院の大通りに突き当たる。学院の北と南を真っ直ぐに繋いでいるその道は大通りと呼ばれているだけあって、学院の主な建物がその通りに面しているので、生徒の減った冬休み中であってもそれなりに人通りがあるので安心だ。
だが、大通りの終点、端っこ迄歩くとそうもいかない。特にアーロンが帰る南側は、寮が男爵家の寮しか無い事もあって端へ行く程、人通りがぐっと減るのだ。それに入らなくてもどうしたって図書館の近くを通る事になる。図書館は大通りの南側終点に位置するからだ。図書館というのは不思議な場所だ。中に入れば驚く程人は居るのに、外には全く人気が無い。こんな生徒の少ない時期に一人でその周辺を歩くのは迂闊だった。
(あの上級生は退学になったし、子爵家の三人も自領へ帰っているけれど、先輩も居ないんだもんね。僕が自分で気を付けないといけないんだった)
アーロンはまざまざとあの時の事を思い出した。ただただ逃げるのに夢中だった。上級生達に捕まるつもりは無かったし、何かされたら一矢報いる位の強気が自分にはあった。けれどライム先輩と一夜を共にしてみた後だと彼等が匂わせていた行為がどういう事か、あの時の本能的な追われる恐怖と嫌悪だけでなく、もっとはっきり肉体の感触迄想像出来てしまう。アーロンはぶるっと震えた。
(ああ。嫌だ嫌だ。あの人達とは二度と会いたくない。ああいう目にも二度と会いたくない)
「アーロン様むつかしい顔してどうしたんですか?」
「うんうん。もしや図書館って小難しい分厚い本をお求めに?」
アーロンが考え込んでいると、二人に上から覗き込まれた。
「え? そんな顔してた?」
「うんうん」
「こういう顔」
とジョンがセドリックのほっぺたをぎゅっと両側から挟み込んで潰す様にした。それをジョンは顔を近づけてよく見てから、「あ、違うな」と今度は眉間に皺を寄せる様に指でぎゅっと挟む。それに合わせてセドリックが険しい顔つきをして見せる。
「え、えええ? 僕そんな顔してたかなあ?」
「はい!」
「もしや僕等には難解な本は理解出来ないとお考えで遠慮されているのではと」
「安心して下さい、ちゃんと理解出来ますよ」
「セドリックが!」
「題名だけ!」
「ええええ?」
くすくすとアーロンは笑ってしまう。
「えっと、そうじゃなくてね、僕、小説を読みたいんだ」
「小説! それはどんなのですか?」
「二人は小説好きなの?」
歩きながら尋ねると、ジョンが答えた。
「セドリックは好きですよ。冒険物。な?」
「うん。鍛え抜かれた筋肉が出て来る話が好きです!」
「ぶれないな」
ははははと楽しそうに笑うジョンにアーロンは尋ねた。
「ジョン様は? どんなのが好き?」
「え。えーと」
赤くなって右と左の人差し指をつんつんと当て俯くジョンの肩をセドリックががっと組む。
「こいつは、恋愛小説が好きです!」
「あ! 言うなあああああ」
言った後に、セドリックの口を塞いでもう遅い。ジョンが止めるにも関わらずセドリックは楽しそうに暴露していく。
「男女の恋愛物も好きだけど、男同士のも最近お気に入りだよね! 特にライム様とアーロン様が愛子の関係を結ばれてから」
「あぅ」
ジョンは恥ずかしそうにアーロンをちらっと見ると、頭を抱えて「穴があったら入りたいいいい」と悶えている。けれどアーロンにはそのセドリックの暴露が僥倖だった。
「あ! そうなんだ。実は僕が読みたいのも、男同士の恋愛小説なんだけど……」
多分セドリックの暴露がなかったらアーロンもはっきり口には出来なかったろう。図書館でもうまく誤魔化して探すつもりだった。アーロンの言葉にジョンはばっと顔を上げると目をきらきらさせた。
「ほんとですか!? だったら図書館よりもっといい所があります!」
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