蒼月の死者

yuta

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荒くれ者の集う町

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 俺、グルーは平凡な家庭で生まれ育った。生活はキツかった。その中でも親と幸せに暮らしていたはずだった。しかし、人さらいどもにさらわれた結果、俺は荒くれ者が集う町「アフティシア」で売りに出された。
 平民で何もできない少年にわざわざ金を払って誰も手を出すはずがなく、俺は捨てられた。幸い、「アフティシア」は物価も安く、生きるだけならば困らない。そのため、貧乏になった奴らがここを訪れる。もちろん、ここは山奥にある街なので、領主が介入してくることもなく、ほぼ無法地帯となっていた。ここで俺は死ぬのかと思っていた。
 そんな俺を救ってくれたのが、師匠だ。師匠の名前は今でもよく知らない。この町の中でも慕われており、そんな彼を俺は尊敬していた。
 やがて俺が16歳になった頃、俺は働きに出た。師匠に恩返しをしないでこの街を出ようとは思わなかったからだ。荒くれどもの連中の中でも運がよく、俺は力仕事を紹介する、隣町の労働ギルドに登録することができた。
 そこから3年、俺は怪我をしていた。前回の依頼での依頼主が悪かった。そいつは役人の息子で金遣いは良く、容貌も美しかった。   しかし嫌われていた。性格が「アフティシア」にいる連中となんら変わらないからだ。そいつに俺は目をつけられた。一緒に依頼を受けたサバッド達は止めようとしてくれたが、役人の息子なのでそう注意することはできなかった。そして金を持ってどっかへ行ってしまった。息子が、
「依頼はなんとかするからどっか行け」
と呟いたのが聞こえた。俺は「アフティシア」の中では筋力的には強いが、武術的な意味では弱い。(タフだし)そのため、倒して自分との格の差を思い知らせて気持ちが良くなりたかったのだろう。
 そして息子は最悪な報告の仕方をしてくれた。
「嘘だろ?なんで俺がギルドを辞めなければならないんだ!これからは他の連中よりも多く働ける。しかも俺にしかできない仕事がある筈だ!」
しかしギルドの受付はそう甘くない。
「ここ数週間来ていないと思ったら受け始めたことは問題にはなっていません。しかし、お役人様から、『息子がグルーのせいで怪我をした』と聞いております。真偽は定かではありませんが、お役人様からの伝言があったのです。間違いはないでしょう。」
 こうして俺は無職になった。師匠に返すお金も貯めたいのでどこかに勤めなければならないのだが、荒くれ者を受け入れてくれるところはそうそうない。
その後、仕方なく、友人の伝手を頼って宿屋で住み込みで働いていた。賃金はほぼ衣食住で消えていき、一体いつになったら返せるかすらも怪しい。まあ、看板娘のリジーちゃんが可愛いからなんとかやれてる。今日も客に「デレデレするな。態度が悪い」って怒鳴られたけど。

 その晩
 俺は頭を冷やそうと外に散歩に出かけていた。午後の10時を回っているので店は閉まっている。空いていたとしても質の悪い娼館だ。しかし、今日は数年に一度の、蒼い月だ。この日はとても明るく、電灯の半分ぐらいの明るさを俺らに届けてくれる。「ふぅ」ベンチに座っていたところ、ローブを被った奴が近寄ってきた。
「お前は誰だ?」
そうして聞いてみるとローブを開いて話し始めた。
「私は猫妖精族ケットシーのミーと申します。最近は霊界が人が多すぎてパンクしそうなんです。だから死ぬ直前の人にもう一回新しい人生を与えようという結論に至ったわけです。まあ蒼月の日とその次の日にしか転生は行われないんですけどねー。」
「は?俺はまだ生きているぞ?まさかドッキリか?しっかしそんな猫耳と尻尾と作り話と、よく嬢ちゃんが考えられたもんだ。」
「嘘じゃないです。このまま死を経験してから転生しますか?別にそれでもいいですけれども。」
「いいぞ。嬢ちゃんの作り話に付き合ってやる」
「ではさようなら。」
そうして自称猫妖精族ケットシーの嬢ちゃんは去っていった。

次の日の朝
「なーんだ。やっぱり作り話じゃねえか。誰かが襲撃に来るかもと用心しておいたが心配ねえじゃねえか。」
そうしてリビングに降りて自分の準備をし始める。すると、ドアに誰かがノックしている。仕方ない、追い払ってくるか。ドアを開けながら言い放つ。
「はいはいどちら様ですかぁ。」
腹部が赤黒い。一体何が起きている?相手の顔を見るとそいつは昨日泊まっていった客のキャベジだった。そしてキャベジが話し始める。
「お前のことが俺はずっとずぅーと嫌いだった。俺はお前の態度が悪く、腹が立った。その上、看板娘のリジーちゃんとも一緒にいる始末だ。俺はずっとリジーちゃんと結ばれる筈だったのにぃぃぃ」
なんだそんなバカな話...。


そして、俺は今すげぇ神々しいところにいた。
「ここ、どこだ?」
「だーから言ったでしょう?人間ヒューマンのお兄さん。」
「この状況から察するに、俺は死んで、嬢ちゃんに誘拐されたってことか。」
「誘拐じゃないけどそのとおり。なかなか物分かりはいいですね。ここは黄泉。死と生の狭間です。そのためあなたには事前に説明した通り、転生してもらいます。もちろん、あなたが売られたところからね。」
「なんでそっからなんだ。最初の赤ん坊からやり直させろよ。」
「干渉が赤ん坊からだと大きい上、あなたが読んでる本のような俺TUEEE展開なんて神は望んでないので。」
確かに読んではいた。なぜ分かるか怖い。俺が危惧していたこともあるというのか..?
「じゃあ特典でもないのかよー」
「はいはい、戯言は言わずに早くいきますよー。成人男性にもなってTUEE展開を望んでいて恥ずかしくないんですか?」
「お茶目に少し言っただけで結構言われるんだが。」
「ま、行きますよー。」

何だこの感覚は、分かりやすく言うと自分に血が戻ってきてる?いや、体力が増えている気がする!うっ、クラクラしてきた。
(目を閉じてくださーい)
なんか言っているがよく聞こえない。

謎の音がする。なんだろう。
「カンッカン。さあこの小僧を買うやついるか?100ゴールド1万円からだ。」
これは糞商人の声!
俺は結局ここでは売られないことが多い。失敗しても問題はない筈だ。しかし歯向かってしまえば処分されるかもしれない。そうすると復活できるか怪しい。ならば、
「俺を買えば傭兵として活躍できるようになる!そうすればどんな奴でもケンカで負けることや金を取られることもねぇ!」
「ほう。では誰が活躍できるようになると保障するのだ?お前は結局人攫いに攫われているではないか。」
ジジイの声がどこからともなくする。痛いところをつかれた。
「うっ。じゃあお前が買えばいいじゃねえかぁ?」
「なぜお前を助ける義理がある?お前は売れ残ってでも生きられるだろう?」
完全に確信した。この声は師匠だ。ここで食い下がって心象を良くなくするのはよくないぞ。どうする?
「俺は経済力がねえ!だが金を稼ぐ力、経済力はある!この観客の中で一番になれると言おう!これで約束を破ったら俺をどんなとこに入れても構わねえ!」
「ふむ。それでお前はいいというのだな。では150ゴールド1万5千円で買おう。」
どこからともなく声がする。
「じゃ、じゃあ俺が200ゴールド2万円で買う!」
「お、俺は230ゴールド2万3千円で買う!」
「ならば250ゴールド2万5千円で買おう。一ヶ月の給料だぞ?これ以上出せるのか?」
「この初老の爺さんでいいかー?」糞商人の声が響く

1分後
「なら決定だ。お前ら手ぇ出すんじゃねーぞぉ?こっちには領主がついているんだからな。」
糞商人が言う。

そのさらに10分後
「では即金で払ってもらう!」
「ほれ。」
「取引成立や!ありがとさん!」
師匠と糞商人のやり取りだった。
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