蒼月の死者

yuta

文字の大きさ
3 / 3

死者の意味

しおりを挟む
まさかこんな代償があるとは思ってもいなかった。


師匠に買われた次の日、俺は街へパンとハムを買いに出掛けていた。その時に体に焼けるような痛みが走った。一体なんなんだろう。兎に角、買い物を済ませて家に帰って自分の体をよく見てみると、自分の胸の一部が爛れているのだ。これには思わず、
「なんで代償はあるんだよぉ!」
と声が出てしまった。あっちが勝手に新しい人生を歩ませてきたのに、こっちに代償があって、あっちに代償がないのはおかしい。そう思ってしまった。

 その上、それは日を経るごとに爛れた肌の部分は大きくなっていた。やがて、自分の上半身に爛れた跡がついてその後の進行が止まった。しかし、自分の手にすら爛れた跡が残っており、師匠が慌てて包帯を巻いてくれた。そうしたら自分の肌であるところが肌と思えないほどにドロドロになっていた。その代わり、少し進行が止まった。次のパターンに分けられるとわかった。

①進行は傷を受けた時に次の朝に爛れた跡として出てくる。その代わりに傷は完璧に塞がる。
②包帯を巻くと、それまでの傷を巻いた箇所が肩代わりをしてくれる。
③あまりこの力を使いすぎると、不死者アンデットのようになってしまうこと。

 この三つが条件だと思う。最後の一つは、教会でしてもらった結果だ。正直、これが本当かどうかはよくわからない。なぜなら、教会にいたあいつが糞商人とも、役人の息子とも繋がっている、どう考えても黒なやつだったからだ。その上、あいつは自分が値段を決められることを利用して、俺らに法外な値段に加えて適当なをしたからだ。前の人生では何回でも金を払ってをしていた。あいつが熟練だとしても、10秒ほどしか費やしていないことや、普通の値段に比べて200ゴールド2万円も高いのはおかしい。まあこれが本当ならば、俺は結構傷に気をつけなければならない。そう心に留めた。


3年後(13歳)
俺は師匠と一緒に訓練を欠かさなかった。師匠がいつも1時間ほど素振りをさせて体力をつけさせる以外にも色々あったが、今となってはこの訓練も余裕が増えてきた。
「それでは今日も朝風呂に行ってくるから。」
そう師匠が呟いて街中の大衆浴場へ行ってしまった。あれは1時間素振りをしろという合図だ。まあ、そこまで大変ではなくなったから、少し部屋の中で水を飲んでから素振りを始めよう。

1時間後
「ちゃんとやっていたな?」
「大丈夫ですって。」
「買った奴隷の小僧など、三年経っても信用ならんからな。ちゃんと見極めなければならん。」
「それ言い始めて3年以上経ってるんですけど。」
「知らん。信用とは、疑いの上に成り立つものだ。」
「まーたそれですか。どっかの誰かさんが言い出したんだか。まあ、とりあえず手合わせをお願いしますよ。」
「ほいよ。」
そして手合わせが始まった。師匠は色々な剣の流派の免許皆伝を受けているらしく、動きや剣の動かし方などが、毎回組み合わせが変わり、今でも受け流すことが精一杯だ。その上、あっちは疲労もない。どう考えても疲労が溜まっている状態で格上の相手に挑んで勝てるわけがない。それでもよく耐えているのは、これまでにボコボコにされたからだろう。


2時間後
「ありがとうございました!」
そうして今日の訓練は終了した。今回の手合わせでは6回も急所首や心臓に木刀を突きつけられて、寸止めされてしまった。まあでも今日はいい方だ。最初の頃は数えきれないほど打ち込まれていたからな。そう考えると、両手で数えられるのは自分としても嬉しい限りだ。だんだん強くなっていることも実感している。しかも前に考えた条件の上に、自分が汗を100ml出すと10㎠分、肌の爛れた部分が消えていくことも分かった。これは師匠には伝えていない。追放されるかもしれないからな       小声で言うけど
銭湯に入っていくと、俺の顔見知りがいた。ドリグだ。こいつは元々アフティシアの生まれで、売られた俺に同情して色々良くしてくれたり、俺の稽古にも付き合ってくれている。一つだけ気に入らない点があるとすれば、こいつが彼女を持っていることだ。前世の看板娘と付き合っていることがなぁ!そう。こいつは前世に良くしてもらった友人の一人だ。
「お、グルーじゃん。3日ぶり~」
「ドリグも久しぶり。正直、最近お前がやっている宿屋で見かけなかったからどっかの不死者アンデットに殺されていると思ったよ。」
こいつは俺の事情を知ってくれている。そのため他の奴らのように、俺を変な目で見てくることもない。安心できるやつだ。
不死者アンデットはヨボヨボになったお前じゃないのかよ~」
「まあまあ、そんなマジレスするなよ?」
「そういえばさ、お前に話したいことがあるんだよ。」
「なんだ?」
「お前に、労働ギルドからの指名依頼が来ている。」
「は?俺は労働ギルドなんかに入っていないし、なんでお前から話が来ているんだよ。」
「まあ俺、ギルド認定員の資格取ったし。」
「だから最近遊びに来なかったのか。」
そうだとしても早すぎる。やっぱこいつはここで処すべきかもしれない。才能があれば俺だって金稼いで師匠のところから離れられるっていうのに。
「じゃあ依頼内容は風呂を上がった後に話そう。」
そうしてドリグは出て行った。
「はぁ。どうするべきかねぇ。」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

入れ替わり夫婦

廣瀬純七
ファンタジー
モニターで送られてきた性別交換クリームで入れ替わった新婚夫婦の話

処理中です...